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【フォトレジスト連載 第2回】ポジ型とネガ型は何が違う?反応原理・用途・長所を徹底比較

フォトレジストについて調べ始めると、必ず登場するのが「ポジ型」と「ネガ型」という分類です。


最も簡単に説明すると、違いは次のとおりです。


ポジ型:光が当たった部分が現像でなくなる ネガ型:光が当たった部分が現像後も残る


しかし、実際の半導体製造では、これだけでは十分な説明になりません。


「何が溶けるのか」「なぜ溶けるのか」「どの現像液を使うのか」「露光後に分子がどう変化するのか」によって、解像度、欠陥、膜厚、剥離性、量産歩留まりが変わるからです。


今回は、ポジ型とネガ型の違いを、分子反応から用途まで掘り下げます。


ポジ型・ネガ型は「画像の極性」を表す言葉


ポジ型とネガ型は、材料の優劣を意味する言葉ではありません。


露光した部分と、露光していない部分のどちらを現像後に残すかという、パターンの極性を表します。


基本的なリソグラフィ工程は共通しています。


  1. ウェハ上にフォトレジストを塗布する

  2. 加熱して溶剤を減らす

  3. フォトマスクを通して露光する

  4. 必要に応じて露光後ベークを行う

  5. 現像液により不要な部分を除去する

  6. 残ったレジストをマスクとしてエッチングなどを行う


ポジ型では、露光した部分の溶解速度が上がります。


ネガ型では、露光した部分が架橋・硬化するなどして、現像液に溶けにくくなります。


つまり両者の本質は、光によってレジスト膜内に溶解性の差を作ることです。




ポジ型レジストの仕組み


ポジ型レジストでは、光が当たった部分が現像液に溶けやすくなります。


現像後には露光部分が除去され、未露光部分がウェハ上に残ります。


従来型ポジレジスト:ノボラック・DNQ系


g線やi線で使われてきた代表的なポジ型材料が、ノボラック樹脂とDNQ(ジアゾナフトキノン)系感光剤を組み合わせたレジストです。


未露光状態のDNQは、ノボラック樹脂がアルカリ現像液へ溶解するのを抑える「溶解阻害剤」として働きます。


紫外線を照射するとDNQが光反応を起こし、最終的にアルカリ現像液へ溶けやすい化学種へ変化します。その結果、露光部分だけが選択的に除去されます。


流れを単純化すると、次のようになります。


未露光部 DNQがノボラックの溶解を抑える ↓ 現像後も残る


露光部 DNQが光反応して溶解阻害効果を失う ↓ アルカリ現像液に溶ける


化学増幅型ポジレジスト


KrF、ArF、EUVなどの先端リソグラフィでは、化学増幅型レジストが重要になります。


化学増幅型ポジレジストには、主に次の成分が含まれます。


  • 酸で保護されたポリマー

  • 光酸発生剤(PAG)

  • 溶剤

  • 酸拡散を制御するクエンチャー

  • 各種添加剤


露光によって光酸発生剤から酸が生成されます。


その後の露光後ベークでは、生成した酸が触媒としてポリマーの保護基を外す「脱保護反応」を連鎖的に進めます。


脱保護された部分は極性が変化し、一般的にはアルカリ現像液へ溶けやすくなります。


IBMが1980年に考案した化学増幅の概念は、一つの光反応から発生した酸を触媒として、多数の化学反応を起こすことで感度を高めるものです。その後、KrF、ArF、EUVへと受け継がれました。


ポジ型の長所


ポジ型は、微細な開口部や密集パターンを形成する前工程で重要な位置を占めています。


主な長所は次のとおりです。


  • 露光した部分を直接除去できる

  • 微細な開口パターンを形成しやすい

  • アルカリ現像を利用できる材料系が多い

  • 長年の量産実績とプロセスデータがある

  • KrF、ArF、EUVまで幅広い露光方式に対応する


一方、化学増幅型では、露光後ベーク中の酸拡散が大きすぎるとパターン境界がぼやけます。感度を高めるために反応を広げることと、微細な形状を維持することの両立が難しい点が課題です。




ネガ型レジストの仕組み


ネガ型レジストでは、光が当たった部分が現像液に溶けにくくなります。


現像後には未露光部分が除去され、露光部分が残ります。


代表的な反応は、次のようなものです。


  • 分子同士の架橋

  • 重合反応

  • エポキシ基の開環反応

  • 極性変化による溶解性低下

  • 現像液に対する耐性の増加


代表例:SU-8


ネガ型レジストを代表する材料の一つがSU-8です。


SU-8はエポキシ系の化学増幅型ネガレジストで、露光によって発生した酸が、露光後ベーク時にエポキシ基の架橋反応を促進します。


露光部分は三次元的な架橋構造となり、現像液へ溶けにくくなります。一方、未露光部分は十分に架橋していないため、現像工程で除去されます。


SU-8は厚い膜や高アスペクト比構造を形成でき、MEMS、マイクロ流路、センサー、光学部品などに利用されています。また、硬化後の安定性が高いため、レジストを最終構造物として残す用途にも適しています。


半導体パッケージでも使われるネガ型


ネガ型はMEMSだけの材料ではありません。


半導体パッケージでは、バンプ、マイクロバンプ、再配線層などを形成するために厚膜レジストが使われます。


前工程の微細配線だけを見ているとポジ型が目立ちますが、パッケージ、MEMS、センサー、マイクロ流体デバイスまで含めると、ネガ型は独自の重要市場を持っています。




「ネガ型レジスト」と「ネガトーン現像」は同じではない


ここは特に混同されやすい部分です。


ネガ像を作る方法には、大きく二つあります。


1.材料そのものがネガ型


露光部分が架橋・硬化するレジストです。


SU-8などが代表例です。


2.ポジ型化学増幅レジストをネガトーン現像する


材料の基本反応はポジ型でも、現像液を変更することでネガ像を形成する技術があります。


これをネガトーン現像、NTD(Negative Tone Development)と呼びます。


一般的なポジ型現像では、露光して脱保護された極性の高い部分をアルカリ現像液で除去します。


NTDでは、未露光で保護基が残った比較的低極性の部分を有機溶剤系現像液で除去し、露光部分を残します。


つまり、同じ露光反応を利用しながら、どちらを溶かす現像液を選ぶかによって像の極性を反転させる方法です。


「ネガ像だから架橋型レジスト」とは限らないのです。




ポジ型とネガ型の比較

項目ポジ型ネガ型 露光部分現像で除去される現像後に残る 代表的反応脱保護、溶解阻害解除架橋、重合、硬化 未露光部分残る除去される 代表的材料ノボラック・DNQ、化学増幅型ポジレジストSU-8、厚膜ネガレジスト 得意分野微細開口、前工程、先端リソグラフィ厚膜、高アスペクト比、MEMS、パッケージ 主な課題酸拡散、LER、感度との両立過剰架橋、残渣、剥離の難しさ 最終用途一時的な加工マスクが中心加工マスクまたは永久構造物

この比較はあくまで代表例です。


実際の性能は、露光方式、レジスト組成、膜厚、下地、現像液、ベーク条件によって大きく変わります。




ネガ型はポジ型より解像度が低いのか


「ポジ型は高解像度、ネガ型は低解像度」という説明を見かけることがありますが、これは単純化しすぎています。


架橋型ネガレジストでは、光の回折、酸の拡散、架橋反応の広がりによって、露光領域より反応範囲が広がることがあります。そのため、微細な間隔が埋まったり、隣接するパターンが接続したりする可能性があります。


しかし、これはネガ型全体が低解像度という意味ではありません。


重要なのは、「ポジかネガか」だけではなく、次の組み合わせです。


  • レジストの分子設計

  • マスクの極性

  • 露光像のコントラスト

  • 現像液

  • ベーク条件

  • 下層膜

  • 形成したいパターン形状




なぜネガ型レジストは剥がしにくいのか


ネガ型レジストの長所である架橋構造は、同時に短所にもなります。


分子同士が強固に結合すると、薬液、熱、プラズマに対する耐性が高くなります。


これは、めっき、エッチング、MEMS構造物として使用する場合には有利です。


一方、工程終了後に除去したい場合には、強い薬液やプラズマ処理が必要になることがあります。


つまり、


剥がれにくいことが必要な工程では長所となり、剥がしたい工程では短所となる


ということです。




実際には何を基準に選ぶのか


ポジ型とネガ型の選定では、少なくとも次の条件を確認する必要があります。


形成する形状


細いラインを残したいのか、細い溝や穴を開けたいのかで、有利な像の極性が変わります。


必要な膜厚


数十nmから数µmの薄膜と、数十~数百µmの厚膜では、必要な材料設計が異なります。


後工程への耐性


ドライエッチング、湿式エッチング、めっき、イオン注入など、後工程によって必要な耐薬品性や耐熱性が変わります。


剥離するか残すか


レジストを加工後に除去するのか、MEMSや絶縁構造物として残すのかは、材料選定を大きく左右します。


使用する露光波長


g線、i線、KrF、ArF、EUVでは、光の吸収や反応機構が異なるため、同じレジストをそのまま使用することはできません。




まとめ


ポジ型とネガ型の違いは、単に「露光した部分が消えるか残るか」だけではありません。


その背後には、次のような材料技術があります。


  • 光による分子構造の変化

  • 光酸の発生

  • 脱保護反応

  • 架橋・重合

  • 現像液との相互作用

  • 酸や分子の拡散制御

  • 膜厚と機械的強度の設計


ポジ型は、微細な半導体回路を形成するための重要な材料です。


ネガ型は、厚膜、高アスペクト比、パッケージ、MEMSなど、ポジ型では対応しにくい領域を支えています。


さらに現在では、ポジ型材料をネガトーン現像する技術も存在します。


したがって、正しい理解は次のようになります。


ポジ型とネガ型は競合する二者択一の材料ではない。形成したいパターンと工程に応じて使い分ける、異なる化学的手段である。


次回は、g線、i線、KrF、ArF、EUVへと進んできた露光波長の歴史と、波長が変わるたびにフォトレジストが作り直されてきた理由を解説します。


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