掌編小説「扉」丨#風まかせ文芸部
「また開けっ放しじゃん。」
同棲を始めて半年と少し。
私には困っていることがある。
そう。ことごとく開いているのだ。
おそらく彼の通ったであろう箇所にある、扉のひとつひとつが。見事に。
まるで開いてる扉を辿れば彼を見つけることが出来るゲームに無理やり参加でもさせられているみたいな、そんな気分になる。
それぐらい、彼の開けた扉を辿ればひとつの道ができるようだった。
彼には以前からキチンと閉めるように注意してはいる。
ただ、最近私の仕事が忙しく、少しイライラして注意してしまうことも増えてきた自覚もあって、今は半ば諦めているのに近かった。
その度に悄気ている彼の顔をみるのもなんだか可哀想だったし。
その彼は今、素知らぬ顔で浴室へ行った。
以前私が夜勤明けの日、彼が気を利かせて洗濯物を干していてくれたことがある。
ただ柔軟剤を入れ忘れるといった、彼らしいと言えば彼らしい結果だったのだけれど。
それでも彼が変わろうとしてくれているのが伝わってきて胸が温まったのを覚えている。
「まじ?いつも気が抜けててごめん。」
と申し訳なさそうに頭を掻きながら話す彼をみて、
ああ、愛しいってこういう感覚なんだと思ってしまった。そう、思ってしまったのだ。
結局、彼には申し訳ないと思いながらも洗濯物は洗い直して貰った。
ただお願いをしたその時に、
「困ってたら言ってね、俺気づかないこと多いから。」
と正直に向き合ってくれる姿勢をみせてくれたことは、当時いっぱいいっぱいだった私を救ってくれた。
そう。私たちのリズムで、回ればいいんだ。
世界は忙しく回っている。
今でも、私が忙しそうにしている時は、
困ってないかどうか気にしてくれている気がする。
私も頼ろうとしつつ、まだ頼れてない部分も多いけど、少しずつ手を取り合っていきたい。
そうやって、あなたがいつでも心の扉を開いてくれているおかげで、私の心にも温かい陽だまりができているんだよ。
そうやって心の中で、呟きながら。
「また開けっ放しじゃん!」
こちらの企画に参加させて頂いています。
詩も綴っています。
お題に感謝です。
よろしくお願い致します。
