#43「タンザナイト 12月の誕生石」に思うこと
青と紫が微妙に混ざり合ったような、妖艶な宝石「タンザナイト」。
2021年から正式に日本の「12月の誕生石」の一つに加えられましたが、一部ではもっと前から12月の誕生石として認知されていた宝石だと思います。
まさに、オリオン座が煌めく冬の澄み渡った夜空を彷彿とさせるような、宇宙空間までをも想像させる美しい青色。そこに添えられる宝石としての輝きも含めて、「12月の誕生石」にぴったりの宝石だと思います。
しかし、皆さんはタンザナイトの「本来の姿」をご存知でしょうか?
ちょっと言い方に語弊がありますが、「タンザナイト」とはある鉱物の宝石としての変種名で、この姿で当たり前に産出するものではありません。
元々の鉱物名は「ゾイサイト」。
なんだか「タンザナイト」という呼び名が見慣れていると、ちょっとイメージとかけ離れた強そうな名前に感じますが、灰色~褐色~緑色をした不透明~亜透明の岩石っぽい見た目の宝石です。
ちょっと組成も複雑で、見た目も変種によって全く印象が違うのが面白い宝石。
他の変種はまた違う宝石名を持っているのでここで語るのはやめておきますが、この「ゾイサイト」という鉱物種の中で「青~紫色の透明の変種」が「タンザナイト」と呼ばれます。
<参考:ゾイサイトの変種>
○不透明な緑色の地盤に、ルビーの赤い結晶が点在しているゾイサイト
→ルビー・イン・ゾイサイト(ミネラル・ショーなどで人気)
○「マンガン(Mn)」を不純物として含むことで、不透明なパステルピンクの外見を持つゾイサイト
→チューライト
さて、今回はこのゾイサイトの中でも青色透明の変種「タンザナイト」について思ったことを綴っていきたいのですが、皆さんはこの宝石名の由来って、何かご存知ですか?
そう!
この青色の透明の変種が発見された土地がアフリカの「タンザニア(Tanzania)」なので、そこから命名されました。そしてこの特別感のある素敵な名前を付けたのはアメリカのティファニー社。もしこの名前が与えられていなかったら(例えば、そのままブルー・ゾイサイトとか)、もしかするとここまでの人気は出なかったかもしれないと言われています。
それは、日本から遠く離れた、魅惑的な異国の名前。
そしてタンザ"ナイト"という名前から想像される、満天の星空に覆われた、多くの生命が息づく大地の密やかな夜・・・。そこには人間が立ち入ることはできなく、自然のまま自由に生き物たちが潜んでいて・・・なんて、まるで画家ルソーの描く絵画の世界のような光景を思い描いたりしてしまいます。
私は、この「タンザナイト」の名前の真相を知るまではそういうイメージで空想していましたし、今でもやっぱり最初に抱いたその美しいイメージは変わっていません。
でも、このタンザナイトの"ナイト”って、英語の"夜”を意味する"night”ではないのです。
宝石名を見ていると、他にもやたらと「ナイト」「アイト」って続く名前が多いと気づくと思います。
これの語原は、「ite=鉱物を表す接尾語」だそうです。
だいぶ昔に何かの本で読んだのだと記憶していますが、とてもびっくりしたのを覚えています。
それまでは、「タンザナイト=和訳:タンザニアの夜」だと思っていて、「なんてロマンチックな名前なんだろう」と思っていたから(アラビア風のイメージ(笑))。
タンザナイトの正確な綴りは、「Tanzanite="タンザニアの石"という意味」です。(Tanzanightではない)
折角なので、同じように「ite」が付いている宝石名を挙げてみます。
○クンツァイト(Kunzite)→命名者のクンツ博士にちなむ。
○ツァボライト(Tsavorite)→最初に発見された、ケニアの"ツァボ公園”にちなむ。これもティファニー社の命名。
○スミソナイト(Smithsonite)→鉱物学者スミソン教授にちなむ。
○モルガナイト(Morganite)→宝石コレクターのモルガンさんにちなむ。
・・・などなど、本当に、場所名や人物名の語尾に"ナイト""アイト"と付く宝石名はキリがありません。
宝石の変種名は、その鉱物の中で突出して美しかったり希少性が高かったりした場合に、発見された土地名、鉱山名、発見者名から付けられるということが分かると思います。
この事実を知ったとき、私は結構、衝撃を受けました。
タンザナイトの美しい深みのある紫青色を目にする度に、おそらく決してその土地を踏む機会はないであろう南の大陸の、美しい夜空に思いを馳せていたから・・・。
まあ、無知で恥ずかしい限りですが(笑)
このタンザナイトという宝石はとても優秀で、
○比較的大きい結晶で採掘される。
○透明度が高い。
○色相が安定している。
○劈開(へきかい)がない→衝撃にそこまで弱くない。
ということが言えます。
「色相が安定している」というのは「多色性(見る方向によって色が違って見える)」の宝石に使うのは間違っているかもしれませんが、宝石をカットするカッターさんの「石取りの方向(原石をカットする向き)」に間違いがなければ、上面から見たときに色ムラなど無く、とても美しい深い青色を楽しむことができます。
そしてこの美しい紫味を帯びた青色の原因は、微量に含まれる「バナジウム(V)」。しかし、市場に出ているほとんどのタンザナイトは"加熱処理をして色を調整したもの”だと言われています。
これは以前も書いたことがあるのですが、処理自体が「不可逆性」のものであり、ルビーやサファイアに行う加熱処理と同様、地球の内部で宝石として成長する際に足りなかった熱を、人間の技術でちょっと手助けするようなもの。使用していても元の色に戻ってしまうことはないので、基本的には価値に影響しない、容認された処理になります。(無処理のものはもちろん高価になりますが、ほとんど出会えません)
市場で売られているタンザナイトのなかには、透明で美しい若草色のもので「グリーン・タンザナイト」というものも見かけます。しかし、個人的にはタンザナイトはやっぱり「紫青色もしくは青紫色」の変種に限って使って欲しい名前です。たとえば、日本で最も信頼のおける鑑別機関「中央宝石研究所」では、青紫色のゾイサイトは「タンザナイト」で宝石名が出ますが、透明な若草色のゾイサイトは「グリーン・ゾイサイト」として宝石名が記載されます。
この透明で若草色のゾイサイトも青紫色系のタンザナイトに引けを取らない美しさなので、できれば誤解を招かないために、どなたか学者さんが素敵な呼び名を付けてくれるといいのですが・・・。
何はともあれ、タンザナイトが12月の誕生石に選ばれたことはとてもピッタリだと感じます。
この神秘的な青紫・紫青色の輝きを目にすると、一気に澄み渡った夜空の下に誘われる。タンザニアはサバンナ気候の国ですが、今の私は、オーロラが揺らめく南極の夜空を、その輝きに見ます。
これから迎える、寒いけれど心温まる日本の冬。
是非、あなたの暖かなセーターの胸元に、もしくは柔らかな手袋に包まれた大切な人の指に、美しい青紫色の輝きはいかがでしょうか・・・?
<タンザナイトの特徴>
・硬度: 6(水晶の7より低いが通常の使用に問題なし)
・劈開(へきかい):なし。日常生活に使用可。
・洗剤やアルコール、温泉などにも強いので、日常使い可。
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