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年に1度だけ会える船乗りの叔父


船乗りだった叔父の家は、

地球をギュッとまとめたような
特殊なおうちで

幼い頃の私にとっては
叔父の家に行く事が世界旅行でした。


玄関では、まず、
シロクマの敷物が出迎えてくれます。

剥製とかではなく、キュートな
絵柄の、毛足の長いウールのマットです。

その頃の私の人生で最も毛足の長い
マットだったので、

まずはそのマットに指を押し込みます(笑)
第二関節くらいまで埋まります。

そして壁を見上げると、

大きな世界地図が貼ってあり、
叔父の現在地にピンが刺してあります。


実際に叔父に会えるのは年に1度くらい。

普段は、その世界地図のどこか…
ピンの刺してあるあたりに居ます。

大体は海の上。

時々、どこかの国の港町。

度々、叔父は私にエアメールを
送ってくれました。

どこかの国の絵葉書だったり、
赤と青の線の入った薄い封筒だったり。

見知らぬ国の絵葉書を眺めに眺めて
それから宝箱にしまいます。


返事を書いたら、叔父の家へ持っていって
叔母に渡す。

そしたら叔母は、次に叔父が立ち寄る港の
私書箱へ、私の手紙を送ってくれます。


リビングには、昭和の時代によくある
茶色の飾り棚があって、

中にはピラニアの剥製。

世界各地の民族人形や、
外国語の書かれた紅茶の木箱。

世界中の民芸品がびっしりと
並んでいました。

ひとまず、ピラニアの歯を触って、
お人形を眺めたら、

叔母とご飯を食べます。

それから、大人たちが話している間、
私は1人で玄関へ行き、本棚を開けて
好きに読んで良いと言われていた
ドーーンと数十冊のシリーズ

「世界のむかしばなし」を読みます。


年に1度か2度、
叔父が日本へ帰ってきた時には、

珍しい外国の食べ物を
食べさせてもらえます。

定番のお気に入りは、
ジュースのような濃厚な美味しさの
オレンジ。

それから、チョコレート。

後に「ハーシーズのキスチョコ」だと
知りましたが、私にとっては
年に1度食べられる、どこか外国から
持ち帰られた特別なチョコレートでした。


幼少期に、

もらった外国の絵葉書の景色を
眺めて…

棚の民芸品を眺めて…

どこかで、こんな人達が
暮らしているんだと想像してみたり。

それから、字が読めるようになって
「世界のむかしばなし」で文化を知り…

すごく貴重な経験をさせてもらった。

チャンスはいくらでもあったのに、
恥ずかしかったり、
タイミングがなかったり。

結局、お礼を伝えないまま、
叔父は他界してしまいました。

時代は代わり、

いろんな国にも行ったけれど

あの世界地図と、
あの時想像した世界は、

かなり大きな、私の原点のようなものです。
そして、多分、
妖精旅行社の原点でもあります。


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