待っていても、人は来ない。AI時代に「認知」が集客の前提条件になった理由
〜自社EC集客の実践手順:WEB広告・SEO・既存資産の活用〜
2026年6月19日、GMO天神オフィスで開催された「makeshop day meet up in FUKUOKA 2026 第3回」に登壇しました。
私が担当したSession 1「集客・実践編」の内容を、参加できなかった方にも届くようにnoteにまとめます。
はじめに:前回(第2回)の振り返り
第2回では、自社EC集客の「枠組み」をお伝えしました。
自社ECの残酷な真実:楽天・Amazonと違い、自社ECは「砂漠のど真ん中に建てた一軒家」。待っていても誰も来ない。自ら道を作る必要がある。
狩猟型と農耕型:Web広告(狩猟)は即効性があるが依存すると利益を圧迫する。SEO・SNS(農耕)は時間がかかるが資産になる。両輪を回すのが最強。
穴の空いたバケツ:集客×接客は掛け算。どんなに人を集めても、サイトが使いにくければ誰も買わない。
今回はこの枠組みをもとに、「では具体的に何をどうやるか」というHowに踏み込みます。
今回の主張:AI時代、集客の前に「認知」が必要になった
本題に入る前に、まず社会の変化を見てほしい。
ここ数年で、ECの集客環境を根本から変えた3つの地殻変動が起きています。
地殻変動①:スマホ検索の限界
若年層を中心に、情報収集の行動が変わりました。
「Googleで調べる」から「TikTok・Instagram・AIで調べる」へ。
検索行動そのものが分散・変質しています。Googleだけを見ていれば集客できた時代は終わりつつあります。
地殻変動②:AIが情報の門番になった
ChatGPT・Gemini・Perplexityが「情報を要約して回答する」時代になりました。
ここが最も重要です。AIは、知っているブランドしか推薦しない。
誰かがChatGPTに「○○でおすすめの商品は?」と聞いたとき、AIの回答に上がるのは「AIが学習データの中で知っているブランド」だけです。認知されていないブランドは、AIの世界では存在しないも同然なのです。
地殻変動③:広告費の高騰と飽和
Web広告への参入企業が急増し、CPAは10年前比で数倍に上昇しています。広告だけで勝てる時代は終わりつつあります。
この3つの変化が重なった結果、集客モデルそのものが変わりました。
旧モデル集客 → 接客 → 追客
新モデル(AI時代)認知 → 集客 → 接客 → 追客
「認知」が集客の前提条件として独立した工程になったのです。
認知とは何か
ここでいう「認知」は2つの意味を持ちます。
人間の記憶に刷り込まれること
AIの学習データに存在すること
人とAI、両方に知られてこそ、現代の「認知」です。
Part 2:農耕施策——SEO / コンテンツ × 既存資産の活用
認知と集客を同時に育てる手段として、まず「農耕施策」を解説します。
なぜ今コンテンツが最強なのか
SEO記事・コンテンツには、今の時代ならではの強みがあります。
それは「人間の検索とAIの学習データ、両方に効く二重投資」であることです。
検索流入(SEO):Googleの検索結果に上位表示され、顕在層・潜在層を問わず継続的に集客できる
AI学習データ:書いたコンテンツがAIに読み込まれ、AI OverviewやChatGPTの回答に引用・反映される
資産として蓄積:広告と違い、費用が止まっても記事は残る。複利的に効果が増す
広告は止めたら集客も止まります。でもコンテンツは書き続けるほど積み上がり、時間が経つほど強くなります。
何を書けばいいか
よくある失敗が「指名ゼロの状態で指名キーワードを狙う」ことです。
まだ誰も自社ブランドを知らない段階で「ブランド名 通販」で上位表示しようとしても、そもそも誰も検索していません。
狙うべきは、お客様の悩みから逆算したキーワードです。
「悩みワード」から攻める:「○○ 失敗した」「EC 集客 できない」など
「比較ワード」「○○とは」系:「自社EC モール 違い」など
検索する人は、答えを探している人です。その悩みに正面から答える記事を書くことで、まだ自社を知らない潜在層に届けられます。
書き方の原則 3つ
誰の・どんな悩みに答えるかを先に決める(テーマより先に読者を決める)
1記事1テーマ、結論ファースト(最後まで読まれなくても価値が伝わる構成に)
更新し続ける(農業と同じ。一度植えて終わりにしない)
事例①:ダニ捕りロボ(有限会社ティシビィジャパン)——WEB情報ゼロの商品を認知から作った
「SEOとコンテンツで認知を作る」と言っても、ピンとこない方も多いと思います。具体的な事例で説明します。
センドがご支援している「ダニ捕りロボ」で有名な有限会社ティシビィジャパン様との取り組みです。
当時の状況:
「ダニ対策商品」に関するWEB上の情報がほぼゼロの時代
自社EC経由の新規顧客獲得がほぼゼロ
シリーズ累計2,600万個の潜在力を持つ商品なのに、認知されていない
センドの打ち手:
まずLTVからCPAを逆算し、初回購入で赤字になっても将来の利益を見越して先行投資できる設計を作りました。
次に、「ダニ 退治 方法」「ダニ 対策」など、誰もまだコンテンツを作っていない悩みワードを先行取得しました。アフィリエイトメディアにも丁寧に商品価値を伝え、第三者の記事・口コミで認知を拡散。
この流れが、SEOとコンテンツで認知を作る本質です。
①悩みワードを先取り(誰も書いていない領域を先行取得)
↓
②アフィリエイトで拡散(第三者メディアで認知を広げる)
↓
③指名検索が育つ(「ダニ捕りロボ」というブランド検索が増え、広告効率も上がる)成果: 初年度から新規顧客獲得を大幅拡大。7年後も継続成長中。
学び:誰も書いていない領域を先行取得する。SEOとコンテンツは「先手必勝」が本質。
事例②:もつ鍋おおやま(株式会社LAV)——既存資産を認知の起点に変えた
SEOを使わなくても、認知から設計できる事例があります。
もつ鍋おおやまは、年間90万人が来店する人気店。しかし通販での売上は伸び悩んでいました。
センドが着目したのは「年間90万人来店という既存の認知資産」でした。ゼロから認知を作るのではなく、すでに「おおやまを知っている人」を通販に転換する戦略を設計。CRMも構築し、リピート購入の仕組みも整えました。
成果: 約2年で売上450%達成。通販事業部は15名超のチームに成長。
統合の学び:認知(店舗資産)→ 集客(通販転換)→ 接客(CRM)。この一気通貫設計が450%の源泉。
認知はゼロから作る必要はありません。すでに持っている資産を集客の入口に変える発想が重要です。
Part 3:狩猟施策——WEB広告の正しい立ち上げ方
農耕で認知と資産を育てながら、顕在層を効率的に獲得するのが広告の役割です。
ただし、広告には正しい順番があります。
認知という種が蒔かれた後に、広告の弓を引け。
広告立ち上げの正しい順番
① 指名検索広告——最初に必ず押さえる砦
自社のブランド名・商品名で検索したユーザーに表示する検索連動型広告です。
なぜ最初にやるべきか。それは「競合に自社名を奪われるリスク」があるからです。
あなたが指名広告を出していない間に、競合が「あなたのブランド名」で広告を出して、あなたのお客様を横取りしているかもしれません。
指名検索広告はクリック単価が最も安く、コンバージョン率が全広告中で最高です。まずここから固めることが鉄則です。
② 競合比較広告——比較検討層を横取りする
競合他社の名前で検索している人に、自社の広告を表示する手法です。
「競合A 通販」と検索している人はすでに検討モードに入っています。そこに「自社ブランドも見てください」と表示することで、費用対効果の高い新規獲得ができます。
③ リターゲティング——一度来た人を逃さない
一度サイトを訪問した人に、別のサイトやSNSを見ているときに再度広告を表示する手法です。
「さっき見てた商品がどこでも出てくる!」——あの仕組みです。
すでに自社を知っている人への再接触なので、クリック単価が安く、購入を迷っている層の背中を押せます。
④ ディスプレイ・SNS広告——認知が育ってから使う拡張手段
InstagramやTikTokのフィード広告、Googleディスプレイ広告(GDN)などです。
ただし、これは認知が育ってから使うべき手段です。
認知ゼロのブランドがここから始めると、CPAが高騰します。まず①〜③で基盤を作ってから拡張するのが正解です。
広告で最も重要なこと:LTVからの逆算
広告を始める前に必ずやることがあります。
LTV(顧客生涯価値)から許容CPAを逆算することです。
初回購入だけで収支を合わせようとすると、広告費は極端に削られます。でも顧客が1〜2年継続購入してくれる商品なら、初回でマイナスになっても将来の利益が回収してくれます。
「安く獲る」ではなく「許容できる範囲で獲る」——この発想の転換が、広告運用の根本です。
事例③:天藤製薬(ボラソフト / BORRA)——全体CPOで判断せよ
広告運用でよくある失敗が「効率の良い施策だけ残して、他を止める」ことです。
天藤製薬様は、KPIが未整備で施策の優先順位がつかず、単体メディア依存に陥っていました。
センドが再設計したのは「全体最適の考え方」です。
個別施策のCPAで判断するのではなく、「全体CPOが目標内か」で判断する。認知を広げる役割の広告は一見CPAが高く見えますが、それを止めると最終的に事業全体が縮小します。
成果: 初クールで売上前年比2倍・過去最高達成。定期CPO約22%減、翌クールは更に15%減。
学び:上手くいっている施策だけ残して他を止めると、全体獲得数が縮小する。全体CPOで判断せよ。
事例④:熊本大同青果(とっぺん市場)——「季節のせい」で思考を止めるな
「みかんが売れないのは季節が終わったから」——この思考で止まっていたのが当初の課題でした。
センドが掘り下げた本質課題は別にありました。
季節変動で売れない → なぜ?
↓
広告の機械学習が育つ前に掲載終了してしまう → だから?
↓
予約販売を導入して掲載期間を延長する → 解決成果: 取り組み初年度から前年比約2倍の売上。
学び:表面の課題(季節変動)で止まらず「なぜか」を掘り下げると、本質的な打ち手が見える。
まとめ:今日帰ったらやること3つ
今回の内容を踏まえ、明日から動けるアクションを3つに絞ります。
① Google Analytics を開く 直近1ヶ月の「自然検索(Organic Search)」の数を確認してください。広告に頼らず、お客様が自らあなたを探して見つけた数。それが今のブランド力です。
② 悩みキーワードを5つ書き出す 「お客様がGoogleに入れる言葉」を5つ書き出してみてください。それがコンテンツの種です。
③ LTVと許容CPAを計算する 広告を出す前に必ずやること。数字なき広告は、札束を燃やすのと同じです。
おわりに
今回のセッションで一番伝えたかったことを、一言でまとめます。
「AIに選ばれ、人に検索され、広告で刈り取る。この順番を間違えないこと。」
認知なき集客は、砂漠に水を撒くようなものです。まず認知を作り、そこに集客の道を引き、広告で刈り取る。この順番が、AI時代のEC集客の正解です。
ご質問・ご相談はセンド株式会社まで、お気軽にどうぞ。

センド株式会社 取締役 佐山 文隆 makeshop day meet up in FUKUOKA 2026 第3回 Session 1「集客・実践編」登壇内容より
