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第1章/第4話 太志、誠に”低グレード車”を薦める。

白熊家の武家制度(特殊な上下関係)は大人になっても続いていた。

少年だった誠もいまや大人になり、妻と子供2人を養う一家の大黒柱である。
そして、太志にも家族がいて、お互い家長として子育てと仕事に忙殺される日々だ。
ただ、お互い大人になってもやはり距離がある。太志が開催する大好きなBBQパーティーには、私の一家は絶対に呼ばれることはない。私も正直なところ、せっかくの休日に太志の顔を見ることが懸念されるので、この程度の距離感でちょうどいいのである。

さっそく本題に入らせていただく。
私はつい最近、自家用車の乗り換えを検討した時期があり、ディーラーのHPや某有名中古車販売サイトを眺めてはいい車はないか探す日々が続いていた。そんな時、ある日太志に母から頼まれた用事があって電話をかけることにした。

プルルップルルッ
誠『あ、太志兄さん、お久しぶりです。〇〇の件なんだけど、、』
はじめは太志の声色を伺うことにした。昔からのクセである。
(お?比較的今日は久しぶりだからか、機嫌のいい声だ!)私は嬉しくなり、車のことを尋ねることにした。太志は某大手ディーラーのサラリーマンなのである。

誠『実は、車の買い替えを検討しているのですが、何か最近燃費がよくてかっこいい車ってありますか?』

太志『んなもんあるわけねぇだろ。んまぁ、あるかもしれない。一応探してみて連絡するわ。』
誠『えっ本当に?ありがとう!』
太志『まぁ、お前が今乗っている車は走行性能も悪いし燃費も悪いしダサいしな(笑)
誠『えっ、あ、そうかなー。ぁはは、よろしくお願いします。』(いつも一言余計なんだよ!)

後日…
太志から電話が来た。来ないと思っていたからびっくりしながら電話をとった。

誠『もしもし〜お疲れ様です』
太志『おう、この間の件なんだが、いい車を見つけたぞ!
誠『えっ?ありがとう!』
太志『お前にはこれぐらいの車が丁度いいぞ。価格も安くて、燃費もいまの2.5倍だ!
誠『えっ?そんなに条件がいいなんて!車名はなんですか?』
太志『◯◯だよ。(某メーカーのOEM車※他の自動車メーカーが生産した車に、自社のブランド名をつけて販売している車のこと、誠としては乗りたくなかった車No.1だったのだ)』
誠『あっあぁ〜〜(心の声:よりによって、それは絶対買いたくないヤツだ!…)』

太志『どうだ、いいだろう!お前には丁度いいレベルだ、お前はこれにしておけ!いや、これしかないぞ!
なぜか蔑みながらゴリ押ししてくる太志。
誠『あ、うん、、僕だけでは決めれないし、妻にも相談したいし、ちょっと考えてみることにします。ありがとう』
電話を切ると、なぜ太志に相談してしまったのか激しく後悔した。話を一旦持ち帰り、妻に話してみることにした。

誠『今日ね、すっごくいい車見つけてきたよ。』
妻『えっ?なんていう車なのー?最近ずっと探してても誠くんの条件に合う車が見つからなかったからよかったじゃない♪』

誠『う、うん。そうだね。それでね、燃費もよくてね、走りもきっと良くて、価格も予算よりもかなり安くすみそうなんだぁ。
妻『そうなんだね!でも誠くんあまり嬉しそうじゃないんじゃない?車名はなぁに?』

誠『う、うん。まぁかなりいい車だよ〜』
妻『どうしたのよー、勿体ぶらないで早く教えてよ〜
私は重い口を開いた。
誠『はぁ。◯◯っていう車だよ…プッ』
言いながら吹き出してしまった私。
うん?一瞬、妻の反応が固まる。
妻『ププ』
妻『えっ⁈誠くん言ってたじゃない?俺は絶対これだけは乗らない!って(苦笑)。なんでよりによってこの車を選んだわけ?

誠『う、うん。太志がお前はこれが似合っているし、このレベルが丁度いいからこれにしろって半ば強引に勧めてくるもんだからさぁ
妻『はぁ?えぇ、何なのよそれ〜!さすがに高い買い物なのだから嫌なのものは買わないほうがいいわよ〜!』(妻には、白熊家の三男妻になったせいで気苦労ばかりさせている)

後日談。
さすがに絶対に買いたくなかったので、どうにか誤魔化して購入は避けることができた。

なぜ、太志は執拗にあの車を勧めてきたのか。
それは、太志自身もある理由があり、仕方なく勧めてきたOEMの車に乗っているのだ。太志も正直ダサいと思っているようで、改造しまくっている。(余計にダサいと私は思っている)
私が太志おすすめの車を買えば、おそろいになってしまう。さらに最悪だ。
太志からすると、自分よりもさらにグレードの低い車に弟を乗せて優越感に浸りたいのである。
しかも、当時の私は太志のOEM車の本家の車に乗っていたため、当時から悔しくて憎たらしく、車の話をするたびに私の車を低評価していた。
弟の誠に自分よりも良い車に乗られるのが、プライド的に許せなくて嫌なわけなのだ。
乗る車でもいちいち上下関係を示そうとしてくる。

プライドの高い太志が何故OEM車に乗っているかというと、父から安くで譲ってもらったため、出費も少なくかなりのお買い得だったのだ。当時太志は、結婚式を挙げたばかり、家を購入したばかりだったため、プライドを捨ててでも節約したかったのである。
車の譲渡など、私や次兄には、父から何の話もなかった。白熊家ではいつも長兄が優先されるのだった。

少年時代からなにも変わらぬ白熊一家だったのだった。

-第4話完-
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