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第1章/第6話 長兄太志、禁煙活動。貴方も辞める気になったかい?

前回に引き続き、太志と煙草にまつわる話し

太志は煙草をこよなく愛している。いつだって父の様に煙草を吸い続けている。あっという間にいっぱいになる灰皿。ベビースモーカーである。
まるでこの2人は、浦安鉄筋家族に登場してくる父親の大沢木大鉄並みである。

そんな太志でも2度禁煙生活を送る時があった。
1度目は、今から10年前の正月の頃だった。
正月に親戚一同の新年会が始まった。私と次兄の正樹は喫煙所に行き、いつもの様に煙草を吹かしながら久しぶりの再会で話しに花を咲かせていた。するとそこへ太志がドシドシと近づいてきて、私達を見下ろすように絡んできた。
太志『おっと、まだ、お前たちはそんな物を吸っているのか?』
誠、正樹『えっ??』太志兄さんは煙草を辞めたんですか?と2人とも驚き隠せず問いただした。
太志『おう、そんなものは辞めてから3ヶ月くらい経ったかな。はぁ〜あ、臭くてシャーナイわ。今までそんな体に毒の上に煙たい物を体に『吸ってー吐いてー』なんてしていたなんて信じられねーな!』と、いつもより太志は声が大きくなって偉そうに話した。

私と正樹は顔を見合わせた。
誠『いやぁ、太志兄さんはすごいなぁ』とりあえず話しを合わせる手法だ。
正樹『いやぁ、あんなに愛煙家だったのに信じられないなぁ』と素直な正樹。

5ヶ月後、ゴールデンウィークがやってきた。
珍しく兄弟だけで飲み会を開催するとあって、居酒屋に意気揚々と三兄弟は集まった。

誠『太志兄さんまだ禁煙しているんですか?凄いですね!』
太志『おう、当たり前だ。ここまでくるために禁煙外来も受診したしな!』太志は鼻高く自慢をする。

その夜は遅くまで呑み続け、私は酔い潰れてしまったので先に切り上げた。
私が帰った後、太志は正樹から煙草をもらい、狂ったように吸いまくっていたらしい。
三男の誠(私)には、どうしてもバレたくなかったのだ。誠がいる時は禁断症状をグッと堪え我慢していたのだ。あんなににも偉そうに語っていたのに呆気なく1度目の禁煙は失敗に終わった。

2度目の禁煙は、太志が5年前に結婚した時だった。
煙草嫌いの奥様と結婚したので、必ず禁煙をする。と約束をしたらしい。
結婚式でも10年後の自分への内容に禁煙していると書いてあった。私は心の中でまた言っているぞと失笑したものだ。
そして、またもや禁煙外来に通ったようだ。
太志にその年の暮れに女の子が誕生した。
出産祝いをと思い妻と2人で産婦人科へ向かった。
すると太志らしき人物が産婦人科の外にいるではないか。あれおかしい、病室で待っていると聞いていたのだが。
いやもっとおかしい事が起こっているぞ。
こっちに手を振ってここだぞと合図するその右手には煙草がお供しているではないか!
子ども誕生の翌日に、面白いほどプハーーッと美味しそうに煙草を吹かす太志であった。
唖然とした。当たり前の様に外で喫煙を済ませてから、私たちを病室へと案内した。『おう、こっちだぞ。』
あの時の威張った禁煙宣言はなんだったのだろう。
太志の後ろをついていきながら思った。
しばらく歩くと。部屋に到着した。『ここの部屋だぞ。』
私達夫婦は、病室で手を泡ハンドソープでキレイに洗って赤ちゃんを抱っこさせてもらった。かわいらしい女の子だった。
それをみた太志も吸った手を水でサッと洗って、どしんと、椅子に座った。
煙草の匂いが病室にふわっと漂う。
喫煙者ならアルアルだと思うのだが、煙草を吸った後、他人に臭いと言われてはじめて煙草の匂いが服や髪についていることに気がつくぐらい、自分がどんなに煙草匂いが染み付いているのかわからないのだ。
なんとも、シーン。と居心地が悪いので、私達夫婦は早々に退散することにした。滞在時間5分である。
これはあくまでも憶測なのだが、奥様は太志の煙草の匂いに気づいたのである。だからこんなに夫婦関係がギクシャクしたのであろう。

見送りに来た産院のドアの前で太志に聞いてみた。
誠『あれ、太志兄さんは煙草を辞めたのでは?』
他人の事にあまり関心がないが、この時ばかりは気になって質問した。
太志『うるせぇよ。仕事のストレスには敵わんのだよ!結婚してからは、酒に煙草に嫁から制限されてストレスがかなり溜まってるんだ。煙草吸ってること嫁には言うなよ。』
心苦しくそうに、言い訳し必死に正当化しようとする太志だったのだ。
2回目の禁煙も大失敗だ。この際、今まで太志にいじめられた経験から言わせてもらう。ざまあみろ。(もちろん心の中である。)

しかし、私も禁煙の辛さは痛いほどわかるのだ。
私も禁煙に何度か挑戦し今も継続中である。
一度飲めば煙草が嫌になる薬などないのだろうか、と思う。
ちなみに正樹は1年ほど禁煙に成功している。私も頑張って継続していきたい。

父と太志は変わらぬ愛煙者なのであった。

-第6話 完-
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