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宗谷地方の群発地震、その正体は?─流体説と巨大地震の可能性

2026年1月12日から、北海道・宗谷地方で群発地震が続いています。
実はこの地域では、2012年7月〜10月にも同様の群発地震が発生しており、その発生メカニズムについては、すでに複数の研究論文で詳しく議論されています。

今回はそれらの過去の研究成果をもとに、

  • 今回の群発地震はなぜ起きているのか

  • 巨大地震の前兆なのか

について解説します。


まず結論から申し上げますと、

  • 今回の群発地震には「地下の流体」が関係している可能性がある

  • 今回の地震自体は巨大地震の前兆とは考えにくい

  • ただし、北海道北部全体としては、将来M7.5以上の地震が起きてもおかしくない状態にある可能性がある

なぜそう言えるのか、以下の順で説明します。

  1. 過去の研究で何が分かっているのか

  2. 今回の地震の特徴

  3. 巨大地震につながる可能性はあるのか


1.過去の研究から分かっていること

2012年の宗谷地方の群発地震

北海道大学・一柳さんらの研究によると、
2012年7月15〜18日にM4クラスの地震が複数回発生し、その後10月頃まで地震活動が徐々に弱まりながら継続しました。

詳しく震源を解析すると、

  • 地震の発生深さが時間とともに浅くなる

  • 活動域が特定の断層周辺に集中している

といった特徴が確認されました。


同時期に起きていた「スロースリップ」

同じ時期、北海道大学・大園先生らは、
GNSS(GPS)データからスロースリップ(ゆっくりした断層滑り)が起きていたことを報告しています。

一柳さんらの論文では、

  • スロースリップが群発地震を引き起こした可能性

  • 群発地震がスロースリップを引き起こした可能性

の両方が示唆されています。


地下に存在する「流体」の役割

さらに、名古屋大学・市原先生らの研究では、
地下の電気の通りにくさ(電気比抵抗)を調べることで、

  • スロースリップの発生域付近に蛇紋岩(地質図から同定)

  • その地下に塩水などの流体が存在

  • スロースリップ発生域上部の堆積岩がフタ(キャップ)となって流体を閉じ込めている

可能性が示されました。

このような流体は、断層を滑りやすくし、
スロースリップや群発地震を引き起こす要因になり得ます。

以上の研究から、
2012年の群発地震は「流体」と「スロースリップ」が関係していた可能性が高いと考えられます。


2.今回の群発地震はどうか?

現時点では、国土地理院から「スロースリップを観測した」
という公式な報告は出ていません。

そのため、今回の群発地震がスロースリップによって直接引き起こされた可能性は低いと考えられます。

しかし、

  • 今回の地震は蛇紋岩と堆積岩の境界付近で発生している

  • 過去に流体の存在が指摘されている場所に近い

ことから、

地下に閉じ込められていた流体が移動し、
断層の摩擦を下げた結果、群発地震が起きている

というメカニズムは十分に考えられます。


3.巨大地震につながるのか?

今回の群発地震は、最大でもM5クラスであるため、
これ自体を「巨大地震の前兆」と見るのは難しいでしょう。

ただし、別の観点から注意すべき研究があります。

北海道北部の「ひずみ蓄積」

北海道大学・伊藤さんらの研究では、
GNSS(GPS)データを用いて、

  • 北海道北部にアムールプレートとオホーツクプレートの境界

  • オホーツクプレートがアムールプレートに対して西向きに、年間約15 mmの速度で収束している

ことが示されました。

さらに重要なのは、
この地域では数百年間、M7クラス以上の地震が記録されていない
という点です。

仮に、年間15 mmのずれが約300年間解放されずに蓄積した

とすると、15 mm × 300年 ≒ 約4.5 m

となり、これはM7.5を超える地震に相当するすべり量です。


何が言えるのか?

以上をまとめると、

  • 今回の群発地震は、巨大地震の前兆とは考えにくい

  • しかし一方で、北海道北部全体としては、大きな地震が起きてもおかしくない条件がそろっている

というのが、過去の研究から導かれる結論です。

実際に地震調査委員会では、
北海道北部に位置する サロベツ断層帯 において、
モーメントマグニチュード7.6程度の地震が、
今後30年以内に発生する確率を4%
と評価しています。

これは日本の内陸断層としては、比較的高い値にあたります。


まとめ

  • 今回の宗谷地方の群発地震は地下の流体が関与している可能性がある

  • 群発地震そのものは巨大地震の直接的な前兆ではない

  • ただし、北海道北部は長期的に見ると大きなひずみを溜めている地域であり、 将来の巨大地震のポテンシャルは無視できない

冷静に状況を理解し、
「今すぐ危険」でも「完全に安全」でもない
という視点を持つことが重要です。


本記事の内容の動画


参考文献

北海道大学一柳さんら
「2012 年に発生した北海道北部中川町付近の群発地震活動」

北海道大学伊藤さんら
「Estimation of convergence boundary location and velocity between tectonic plates in northern Hokkaido inferred by GNSS velocity data」

北海道大学大園先生ら
「An intraplate slow earthquake observed by a dense GPS network in Hokkaido, northernmost Japan」
https://doi.org/10.1093/gji/ggu380

名古屋大学市原先生ら
「Imaging of a serpentinite complex in the Kamuikotan Zone, northern Japan, from magnetotelluric soundings」


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