歴史を背負った梅干し
今年、人生で2回目になる梅干し作りをしてみた。
去年初めて挑戦したのだが、紫蘇を入れずに漬けてしまった。ちゃんと梅干しにはなったものの、なんだか物足りない。
今年は張り切って赤紫蘇も購入した。
子どもの頃は畑の隅にたくさん生えていたので気にもしていなかったが、買うとなると意外といいお値段だ。
実家にはきっと今もあるだろう。
送ってもらおうかとも思ったが、島からだと送料の方が高い。
それもそうかと諦め、近所のスーパーで購入した。
梅は和歌山の道の駅で買ったものだ。安くて新鮮。きっと間違いない。
梅を洗い、水気を切り、竹串でヘタを取る。
この作業が地味に楽しい。
夏になると海で拾った巻貝を茹でて針の先でフタを外して食べていたが、その感覚に少し似ている。
ヘタ取りを終えたら梅をきれいに拭き、焼酎にくぐらせてジップロックへ放り込む。
去年もこの方法で漬けたのだが、意外といける。
めんどくさがりなので「簡単にできます」という言葉には弱いが、これは本当に優秀だと思う。
塩を加えてよくなじませ、空気を抜いて重しをのせる。
梅酢が上がってきたら紫蘇を入れ、しばらくなじませて土用干しをすれば完成だ。
ところが少々フライングした。
梅酢が出てから準備すればよかった紫蘇を、先に買ってしまったのである。
仕方なく塩漬けにして冷蔵庫へ。
紫蘇もなかなかの量があり、洗って乾かすだけでも一仕事だ。
扇風機を動員して時短し、水気を拭いて塩でもむ。
すると最初は少ししか出なかったアクがどんどん出てくる。
泡立ちもなかなか豪快で、
「えっ、洗剤入れたっけ?」
と少し不安になった。
二度ほどアク抜きをして冷蔵庫へ。
準備は万端である。
……と思ったのだが、ここで問題が発生した。
重しになるものがない。
ペットボトルを使う方法もあるらしいが、そんな都合よく500ミリのペットボトルは転がっていない。
小皿を重ねるのもなんだか不安定だ。
どうしたものかと足元を見ると、処分予定の本の山があった。
娘が高校で使っていた日本史と世界史の教科書である。
歴史好きなので、いつか読もうと思って取っておいた。
だが、その「いつか」は来ないままでさよならしようと思ってたのだ。
バットの上にジップロックを置き、その上に日本史と世界史を重ねる。
大きさも重さもシンデレラフィット。
見事な重しになった。
教科書たちも、まさかこんな使われ方をするとは思っていなかっただろう。
梅もまた、日本と世界の歴史を背負わされるとは想像していなかったに違いない。
今、我が家の梅は歴史の重みを受けながら静かに梅酢を上げている。
日本史と世界史を背負った梅干しが、どんな味になるのか今から楽しみだ。
うまく出来上がったら家族にも伝えようと思う。
「これはね、歴史を背負った梅干しなんだよ」
そんなことを伝えて食べさせようと思った。梅雨の晴れ間の日だった。
#歴史を背負った梅干し
#梅干し作り
#梅仕事
#手仕事のある暮らし
#季節の手仕事
#赤紫蘇
#ジップロック梅干し
#暮らしを楽しむ
#日々のこと
#創作大賞2026
#エッセイ部門
