#023 組織マネジメントを担う人の必要条件は覚悟と責任感!
自治体からDMOに出向して1年半が経とうとしているが、この間、いくつかの問いと向き合ってきた。
その一つが、「DMOのマネジメントに適任なのは、DMOで採用されたプロパー職員か、行政や民間の出向者か、または、別の人か」である。
全国のほとんどのDMOは、プロパー職員や行政・民間の出向者など、異なる背景を持った職員の集まりである。
マネジメントの適任者について、一般的には、人事異動でいなくなるリスクが少ないプロパー職員が望ましいと言われることが多く、実際に、出向者は2年から3年で異動している。
○最近のインプット
最近のインプットからたまたま自分なりに問いの答えを出すことができた。そのインプットを提供してくれたのが、一倉定さんと木下斉さんである。
1.一倉定さんからの学び
伝説の経営コンサルタントの一倉定(いちくら さだむ)さんのYouTubeを視聴した。一倉さんは社長の教祖と呼ばれた方で、動画を見るだけでも、圧倒的な迫力を感じる。
語録としても「いい会社とか悪い社長とかはない。あるのは、いい社長と悪い社長である。」「優れた社長は、うちの社員はよくやってくれる」と人に語り、能力のない社長ほど社員の無能ぶりを他人にこぼす。」「経営とは「外部」に対応するものであって、企業の「内部」に対応するものではない。」「事業経営にきれいごとは危険である。」「会社の赤字は、お客様を忘れたのが原因である。」などの名言を残されている。
○一倉定さんのYouTube動画の要点
・社長とは事業を経営する人である
・事業の定義は市場活動である。事業はお客様を奪い合うこと
・社長がやるべきことは経営計画書をつくること。経営計画書は会社が生き残る条件
・社長は幹部社員や銀行に、自分の考え方・方針、経営計画を説明するための表現力が必要。
・表現力をつけるには、経営計画書をつくることが有効。経営計画書の内容が伝われば、幹部職員は力を発揮できる。経営計画書をつくり、社員に発表をすると社員の目の色が変わる。社長の方針を聞いて奮い立つ。経営計画書がないときは不安になる。経営計画書をつくる以外に自分の会社を知ることはできない。
・経営計画書は未来のこと。つくる前に必要なのは、お客様のところを回って、お客様の求めることを確認すること。
・企業の未来を設計する。事業は前向きにやるべき。人件費と経費は、精度が高く分かる。出るお金は否応なしに出る。その原資を見つける必要がある。未来に必要な売上高をつくることが重要。
・部下に権限移譲する民主経営は恐ろしい。問題が発生した時に、部下は責任回避をするため、社長に情報が上がってこなくなる。
一倉氏の意図から外れるが、社長をDMOの1つの課のマネージャーと置き換えたい。「良い部署とか、悪い部署はない。あるのは良い課長と悪い課長である。」つまり、課の全責任は課長にあるということである。
それは当たり前のことであり、私も理解しているつもりであった。が、私は、DMOでのマネジメントの経験を振り返った時に、本当の意味で、そのことを理解していなかったことを痛感した。
課の全責任を負うというのは、次の①から④を覚悟を持って実行することである。
①自分の課の運営方針を含めた事業計画(経営計画書)をつくり、メンバーに周知すること。仮に、メンバーが考えた個別事業の計画が上がってくる場合でも、顧客理解が甘い計画の提出があった際は、例え、メンバーの意に沿わなかったとしても、必ず、最終責任者として変更を加えること。
②事業計画(経営計画書)をつくる際は、まず、地域を訪れる観光客や地域の事業者から、直接、話を聞き、顧客のニーズを踏まえること。これは、顧客の行動の実績を示すデータも含まれる。そして、課長は、計画が実現するまでのロジックがクリアか考え抜く必要がある。
③外の人と話をする時は、必ず、メンバーを褒める。間違っても、メンバーのことを悪く言ってはいけない。悪く言うことは、自分の責任逃れをしていることである。
④事業計画を先頭に立って実行し、事業計画を基に決めたルールが確実に実行されているか確認する。そのために、事業を進めるための役割分担を明確にし、誰がいつまでに、何を実行する必要があるか明らかにしなければならない。
私がマネジメントを担当している事業の中で、うまくいっていない事業もある。目標を達成できていない事業について、①から④を実行できていたかを振り返ると、否とである。
私は経営するとは何か。事業をするとは何か。市場活動をするとは何か。全責任を負うとは何かを理解していなかった。
2.木下斉さんのvoicyからの学び
放送の内容は、スキームをうまくデザインしたおかげで、公民連携事業が実現したとの記事(エモい薄いカルピスみたいな話)に対して、木下さんが「レベルの低く、キラキラの内容なんかで社会課題は解決できない。」と断罪されているもの。私も記事を読んだが、実践者にインタビューをしておきながら、それを踏まえない結論で締めくくられており、こんな失礼な記事があるのかと驚愕した。
この放送での、今回のテーマに関する私の学びは次のとおりである。
キラキラしたスキームなんかでは、社会課題は解決できない。そして、他地域で、そのスキームを実践しても成功しない。
成功するかどうかは人である。建物の計画をつくる前に、顧客(建物のテナント候補)に先回り営業して、需要に応じて、建物を小さくまとめられる人がいるか。
ビジネスと向き合い、収支の数字を見て、緊張感を忘れずに、数字を合わし続ける努力をできる人がいるか。
自分で事業のオーナーシップを持っている人がいるか。最終責任者として、責任を全うした経験がある人がいるか。
○まとめ
最初の問い「DMOのマネジメントに適任なのは、DMOで採用されたプロパー職員か、行政や民間の出向者か、または、別の人か」に話を戻したい。
一倉定さんと木下斉さんの学びから、私が考える、DMOのマネージャー(組織マネジメントをする人)の必要条件は、最終責任者としての覚悟と責任感を持っているかである。もちろん、マーケティングの知識・経験も必要であるが、プロパーであるか、行政や民間の出向者であるかは関係ない。プロパーの場合、異動がないため、長期間、安定的にマネジメントできるという利点はあるが、そもそも、最終責任者として覚悟と責任感がない人がマネジメントをすると1年組織はもたない。
その上で、プロパーの場合は、会社経営者又は行政や民間組織のある部門での責任者を経験した人を採用する方法とプロパー職員を育成する方法の2つが考えられる。
採用の場合は、最終責任者となることの覚悟・責任感があるか、面接で確認する必要がある。マネジメントの経験があるのと、覚悟・責任感があるかは別の話である。
プロパー職員の育成の場合は、マネージャーとしての覚悟や責任感を示し続けることが必要である。そして、他責思考になったり、顧客(市場)を無視した行動をとるメンバーに対しては、迷わずにフィードバックを行い、改善を求める必要がある。
一方、行政や民間からの出向者の場合、会社を経営などの最終責任者の経験がない場合が多いため、適任者を見つけるのは難しいかもしれない。が、行政・民間企業にも適任者はいる。行政の事例になるが、私の元上司や元同僚で、課内・部内ではあるが、最終責任者としての覚悟を持って仕事をされている方がいた。
自身の課の運営方針を練り上げ、毎年、部下に伝達し、それが実行されるよう、粘り強く、フィードバックしていた上司。
上司ばかりを見て、市民を見ていない部下を叱る上司。
出向者であっても、覚悟・責任感のある人材を派遣できる場合は、DMOのマネジメントを機能させることができると思う。
最後まで、読んでいただきありがとうございました。
