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【無料です】割安でも中国株を買わない理由(独自考察)

最近、相当割安であるという理由で中国株を買う機関投資家のニュースをよく耳にします。しかし、中国株が指標で計ると割安に見え、将来大きく上昇する可能性があったとしても、私は現時点での中国株購入が経済合理的な判断だとは思えません。以下でその理由をご説明します。

1. 政府・規制リスクの大きさ

1-1. 急激な政策転換・規制強化

中国政府は国内産業をコントロールする際に、トップダウンで急激な政策転換や規制を行う傾向が強いです。たとえば、以下のような事例があります。

  • IT・プラットフォーム企業への締め付け
    2020年末にはアリババグループ傘下の「アント・グループ」のIPOが直前で中止され、2021年にはアリババ自体に対して独占禁止法違反で巨額の罰金が科されました。同時期にはテンセントや滴滴出行(Didi)など大手プラットフォーマーに対して、データ保護・競争法などの面で取り締まりが行われました。これらの政策は株価に大打撃を与えています。

  • 教育関連企業の事業転換強要
    2021年には、中国政府が学習塾(教育サービス)業界を「非営利化」する規制を突如発表。上場していた大手教育企業の株価は90%以上暴落し、事業モデルそのものが崩壊しました。

このように、一見して好調に見える業種であっても、政府が「取り締まる」と判断すれば、企業業績や株価が一夜にして大幅下落する可能性があります。これは自由経済圏でもあり得ないことではないですが、中国株の方がこの方面のリスクは遥かに高いと言えるでしょう。

1-2. 政策意図の不透明さ

中国の政策は、必ずしも「経済成長」や「民間企業の成長」だけを目的としているわけではなく、「社会統制」「共産党の権威維持」「国家安全保障」などの政治的・社会的意図が強く反映されます。資本主義的な政策を実施しているかと思えば、突然、経済的にまったく非合理的な政策を始めたりします。外部からその意図やタイミングを読み解くのは非常に難しいため、規制リスクを織り込むことが容易ではありません。

1-3. 党・政府からの干渉による経営判断

中国企業の経営陣が共産党や政府機関の指導部や役員を兼務している場合も多く、政策方針と合わない経営戦略はとりづらいのが実情です。株主還元や利益最大化よりも、「政治的意図」や「社会的使命」が優先されるリスクがあります。


2. 財務諸表の信頼性・会計の透明性の問題

2-1. 監査・会計基準への疑問

中国企業の多くは国際会計基準(IFRS)や米国会計基準(US GAAP)に準拠していると謳っていても、実際には監査法人と当局の癒着がある、あるいは十分な検証プロセスが確立されていないなど、透明性に疑問が残るケースがあります。過去にはLuckin Coffeeが会計不正を行った例もあり、短期的に急成長していた企業が突然粉飾決算の発覚で暴落するようなリスクがあります。これは、日米でも起こり得ることですが、中国の方が透明性がないと思われます。

2-2. VIE(可変持分事業体)構造の不安定さ

中国政府は、外国資本が中国の重要産業に直接投資・所有することを制限しています。そのため、中国企業が海外(米国・香港など)に上場する場合、「VIE構造」という変則的なスキームを用いることがあります。
VIE構造とは、実質的にはオフショア(ケイマン諸島など)の法人を経由して契約上利益を受け取る形にしているだけで、投資家が保有しているのは中国本土企業の株式ではありません。

万が一、中国政府がこのVIE構造を違法と判断した場合、海外投資家の権利が大きく損なわれる可能性があります。 現行制度ではグレーゾーンとして黙認されていますが、将来的に規制強化されない保証はありません。


3. 地政学的リスク・国際関係の不安定化

3-1. 米中対立・制裁リスク

米国は2020年代に入り、中国製造業やハイテク分野への制裁・関税引き上げなどを強化しています。具体的には、半導体製造装置や先端技術の中国への輸出規制強化や、中国軍・政府系企業への投資制限など、対立の激化が続いています。

  • 上場廃止リスク
    米国で上場している中国企業は、米国当局の監査要件(Holding Foreign Companies Accountable Act:HFCAAなど)に完全に応じられない場合や、安全保障上の懸念が高まる場合、上場廃止となる可能性があります。実際に、2022年以降も複数の中国企業が米国証券取引所からの上場廃止リストに挙がっており、投資家が自分の意思に反して株式売却を迫られるリスクがあります。

3-2. 台湾問題・東シナ海などでの軍事的緊張

中国政府は「台湾は中国の領土の一部」という姿勢を堅持しており、軍事的にも威圧を強めています。もし台湾海峡で衝突が起きると、世界的にサプライチェーンの混乱や経済制裁の応酬などが起き、中国市場にも大きなダメージが及びます。地政学リスクが高まるほど、中国株への投資は敬遠されやすくなり、株価が不安定化する恐れがあります。たとえ実際に台湾と衝突することがなかったとしても、その可能性があるということ自体が株価を押し下げ続ける側面があります。


4. コーポレートガバナンスと株主還元の問題

4-1. 政府主導・党主導の経営意思決定

先述のとおり、中国企業は政府や共産党と深く結びついている場合が多く、経営判断が必ずしも株主の利益最大化を目的としていません。国家的プロジェクトへの投資や雇用維持などが優先されることもあり、投資家の期待する配当や自社株買いなどの株主還元策が後回しにされやすい土壌があります。

4-2. カルチャーとしての「株主重視」意識の薄さ

中国は証券市場の歴史が比較的浅いため、そもそも株式市場からの資金調達や株主を意識した企業運営の文化が未成熟な面があります。株主の利益よりも政府の方針や経営者の意向が優先される場合、長期的に株価が割安に据え置かれてしまう可能性があります。


5. 資本規制・資金フロー制限による撤退リスク

5-1. 中国本土からの資本流出規制

中国は自国通貨(人民元)の完全な自由化を行っておらず、資金の海外送金や資本移動に対して厳格な規制を持っています。もし中国国内の株式に投資していた場合、何らかの政治的・経済的混乱が起こった際に、思うように資金を海外へ移すことが難しくなるリスクがあります。

5-2. 外国人投資家向けマーケットへの規制強化

外国人投資家が中国の株式市場(たとえば上海市場、深セン市場)にアクセスするためには、QFII(適格外国機関投資家)制度やStock Connectと呼ばれる特別なスキームを利用します。しかし、これらの枠組みは政府の裁量によって拡大・縮小が容易に行われる可能性があります。過去には「資本流出を食い止める」という名目で、外国投資家への規制が突然強化された例もあり、投資家がポジションを整理したくてもできない状況が生まれるかもしれません。


6. 不動産バブル崩壊・景気後退


中国経済を下支えしてきた不動産開発企業(例:恒大集団[エバーグランデ])の破綻を発端とし、債務不履行が広がっています。不動産崩壊による不況がいつまで続くのか見通しが立ちません。

不動産バブルの崩壊は、サブプライムローン危機後のように数年で乗り越えられる場合もあれば、1990年の日本のバブル崩壊後のようにかなり長い期間の停滞をもたらす場合もあります。中国がすぐに克服する可能性もあるかもしれませんが、現時点ではどこが底なのかが見えていません。

まとめ

指標上割安に見えても、中国株には以下のような構造的リスク・懸念が存在します。

  1. 政府・規制リスク:

    • 共産党による突然の規制・締め付け

    • 政府方針が企業経営を大きく左右する

  2. 会計・開示の不透明性:

    • 監査体制への不信感

    • VIE構造による所有権リスク

  3. 地政学的リスク:

    • 米中対立、制裁・上場廃止リスク

    • 台湾海峡などの軍事的緊張

  4. コーポレートガバナンスの未成熟:

    • 政府・党の意向が最優先

    • 株主還元やガバナンスが弱い

  5. 資本規制・撤退困難リスク:

    • 資金移動・回収の制限

    • 外国人投資家への規制強化リスク

  6. 不動産バブル・景気後退リスク:

    • 不動産業界の債務不安

    • 経済全体への波及と長期低迷懸念

投資の世界では「リスクに見合ったリターン」が求められますが、中国株のケースでは、これらのリスクがあまりにも大きく(かつ予測不能な形で発現しやすい)、割安なバリュエーションだけで飛びつくのは極めて危険と言えます。「割安に見えるから」「中国経済は成長が続くから」という理由のみで安易に投資を行うと、想定外の政治リスク・規制リスク・地政学リスクで大きく損失を被る可能性が高い点を十分に認識する必要があります。中国の場合は、リスクが大きいのが問題というよりは(リスクは価格にすでに反映されている)、不確実性が大きすぎるのが問題だと思います。

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