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三角の豆餅 偏愛おやつたち①

 和菓子が好きだ。

 洋菓子も好きだが、40歳前後あたりから和菓子をより好むようになった。
 さらに歳を取った今、和菓子ラブが勢いを増している。洋菓子も美味しくいただくのだが、クリームやバターの重厚さにマイ・ストマックが「あ、ちょっと消化が大変で、えっと…」という反応を示しがちだ。乳脂肪や油が多いと、胃に負担がかかる。人は外見だけでなく、内臓もちゃんと老化するのだと実感できる。でも骨密度だけはまだ若いと、このあいだの人間ドックで判明した。骨自慢。

 洋菓子に比べ、和菓子は脂肪分は多くない。
 だからといって油断は大敵、砂糖の量は洋菓子に負けていない。たしかに、大福一個はショートケーキひと切れよりカロリーが低い。問題は、大福ならば二個食べられる、という点だ。大福のサイズがやや小さめだったりしたら、三個いけるかもしれない。ショートケーキは1切れで充分なのに……。これは太りやすい中年小説家にとって、手痛い現実だ。ちなみに私は甘い物を食べたい気分の時、自分の理性にはいっさい期待していない。

 大福はあんこがたっぷりであり、あんこには砂糖がたっぷり入っている。
 ならばあんこのない和菓子ならばカロリーも低いはず。
 ということで、今日はこちらの和菓子をご紹介したい。

三角の豆餅
 ザ・シンプルな佇まい

 私はこれを「豆餅」と呼んでいる。
 見たままの、三角の、豆(たぶん赤エンドウ豆)が入ったお餅である。平たい三角形で、あんこはない。
 母が「豆餅」と言っていたので、そういう名前なのだと思っていた。
 ところがさきほど「豆餅」をググってみたら、めちゃくちゃ豆大福の画像が出てきた。えー、きみは豆餅と違うやろがーい、と思ったが、実際「豆餅」と呼ばれているらしい。そういえば私も昔、京都の出町ふたばで、これ「豆餅(=豆大福)」を食べたっけ……。

 その時になんの疑問も感じなかったのは、空腹であんこを強く欲していたからだろう。さもありなん。私は自分の理性に期待していないのだ。

 おそらく、どちらも「豆餅」で正しいのだろう。あんこがあろうとなかろうと、そこに豆と餅があるのはまちがいない。
 さて、この三角のほうの、あんこないほうの「豆餅」。
 全国的に食べられているのかと思っていたがそうでもないらしい。
 私の実家(千葉県)の近くの和菓子店にはいつでもあった。弟もそう言っていたので、記憶違いではないはずだ。しかし今の住まい(東京都)の周辺では、この三角の豆餅を見ない。デパートやターミナル駅の中にある和菓子店などでも見あたらない。
 もしや、ローカルなお菓子だったのだろうか……と思っていたら、都内のあるお店で見つけた。庶民的な雰囲気のいいお店で、創業70年を超える老舗『大文字』さんだ。
 初めてこのお店の前を通ったのは二、三年前だったろうか。ショーケースの下のほうに奥ゆかしく存在していた三角豆餅を発見した時、私は内心で小躍りしてしまった。

 久しぶりに出会えた豆餅を買って帰り、食べてみる。
 あぁ、そう、これこれ。

 このほんのりした塩味のお餅。とても柔らかくて、むちむちしていて、ときどきお豆のほくっとした噛み応えを感じる。素晴らしいハーモニー。あんこがないぶん、お餅そのものの味が楽しめるのも嬉しい。
 昔食べたものはもう少しサイズが大きかった気もするが、それは私が子供だったからかもしれない。自分の手のひらにはみ出る、三角の豆餅。
 なぜか大福餅ではなく、豆餅をよく買ってきた母。母は大変な締まり屋さん(つまりケチ)だったので、もしかしたら節約だったのだろうか。けれど子供の頃はあんこが少し苦手だったこともあり、私としても豆餅のほうが嬉しかった。

 残念ながら、実家の近くの和菓子屋さんはすでに閉店してしまっている。
 けれど私は、また三角の豆餅を買えるお店を見つけられた。思い出を連れてきてくれる素朴な和菓子がそこにある。

 ……今度行ったときは三枚買っちゃおうかな。

(2025年6月)