【保存版】【第22話】「英語ペラペラ=通訳できる」は大きな勘違い。CTOプレゼン通訳を任される駐在員が、3日間でやっている準備の全工程を公開します
「英語できるなら、通訳もできるよね?」
僕はCxOクラスのプレゼン通訳を任されるときに、
決まってこう言われるんです。
答えは、ノーです。
多くの方が「全部その場で訳してる」と思っています。
でも、そんなことはできません。
"その場の瞬発力"なんて、通訳という仕事のほんの一部です。
今日は、現役駐在員として経営層の通訳を担当している僕が、
先日のCTO(Chief Technology Officer)通訳でやった
準備の全工程を公開します。
これは英語学習法の話ではありません。
"英語ができる人"が"通訳ができる人"になるための、実務ノートです。
①通訳は「事前準備が8割」の世界
まず大前提として、声を大にして言いたいのはここです。
通訳は、事前準備が8割。
これはプロの通訳者も口を揃えて言うこと。
現場に出るほど、痛感します。
もちろん瞬発力も英語力も必要です。
でも、背景知識ゼロでCTOのプレゼンを訳すのは、ほぼ無理ゲー。
その場で正確に、なんて絶対に無理なんです。
特にCTOクラスになると、こんな話題が一気に飛んできます。
最先端の技術トレンド
事業戦略・将来構想
業界動向と他社比較
M&Aや投資の方向性
開発組織のあり方
つまり、英語力よりも先に求められる力がある。
それは「この人は何を語ろうとしているのか」を予測する力です。
資料が"全部あるとき"と"何もないとき"。
まずラクなパターンから。
すべての台本が事前に手元にある場合は、シンプルです。
スクリプトをChatGPTやGeminiに入れて、こう指示する。
「この台本をプレゼン調の自然な英語にして」
これでかなりの精度で叩き台ができます。
ですが…
台本なんて、ほぼ100%提供されません。
僕がよく経験するのは、こんなパターン。
ドラフト資料しか共有されていない
直前で資料が大幅に差し替わる
そもそも資料が来ない(あるある)
当日「実は最後にこのスライド追加で」案件
今回もまさにそれ。
手元にあったのは、ドラフト資料だけ。
さらに厄介だったのが、専門外まで広がっていたこと。
僕はある商品のソフトウェア系部署の駐在員。
でもCTOが語るのは、他部門も含めた"全社の技術"です。
つまり、自分の畑じゃない領域まで一気に理解する必要があった。
ここから先が、僕の準備術の本質に迫ります。
【ステップ1】とにかく"周辺情報"を狩りに行く
資料をもらった瞬間、最初にやるのは"資料を読む"ことではありません。
まずは外堀から埋めるんです。
"なぜここでこの資料が使われるのか"を探りに行く。
ドラフト資料に加えて、僕はこんな情報を集めます。
自社HPの中期経営計画
直近の決算発表資料・IR説明会の動画
業界レポート、競合各社の発表内容
ニュースリリース過去半年分
関連する技術トレンドの英語記事
技術用語が出てきたら、ネットで徹底的に調べます。
理解しきれない技術が一つでもあると、通訳に自信のなさが出るからです。
モヤモヤしたまま現場に出ると、通訳はたいてい失敗します。
これは経験則として、断言できます。
【ステップ2】"CTOが何を喋るか"を生成AIに予測させる
重要なことを言います。
資料を理解するだけでは、プレゼン通訳はうまくいきません。
スライドを棒読みする通訳ほど、聴き手に響かないものはない。
自分がプレゼンするつもりで訳す。
話し手の熱量と同じぐらいで伝えないと、絶対に伝わらないんです。
そこで僕は、ChatGPTにこう投げます。
「あなたはCTOです。この資料を使って、テクノロジーに詳しくないアメリカ販社の社長にプレゼンします。各スライドごとに、日本語と英語の想定スクリプトを出力してください。」
ポイントは、聴き手のレベル感まで指定すること。
"技術に詳しい人"向けと"詳しくない人"向け。
説明の深さも語彙も、まったく変わります。
ここを指定しないとどうなるか。
生成AIは無難に小難しい説明を吐き出すだけ。
現場では、使い物になりません。
これをやると、不思議な変化が起きます。
「あ、ここはこういう流れで話すんだろうな」
というイメージが湧くんです。
スライドという"静的な情報"を、"動的なトーク"に変換しておく。
これが通訳準備の真髄です。
プレゼンの状況を詳しく書けば書くほど、
生成AIは、資料から話し手の心情を読み取り、
スクリプトまで推測してくれる。
生成AIは、本当にすごい。
ChatGPTやGeminiは、必ず活用しましょう。
【ステップ3】キーワードだけを徹底的に拾う
ここも超重要なポイントです。
僕は、文章を一切丸暗記しません。
理由は3つあります。
平日は普通に仕事してるので、暗記する時間がない
スクリプトがない以上、丸暗記しても本番ではズレる
キーワードさえあれば、文章はその場で組み立てられる
たとえば今回の案件で抽出したキーワードはこんな感じ。
■ 技術系の名詞
quantum computing(量子コンピューティング)
acoustic technology(音響技術)
carbon neutrality(カーボンニュートラル)
V2X(Vehicle to everything:車車間・路車間通信)
satellite communication(衛星通信)
ここで終わらないのが、僕のやり方。
専門用語を説明するときに使う表現も、一緒に覚えます。
■ 説明に使う動詞・形容詞・副詞
a good fit(うまくマッチする)
apply A to B(AをBに応用する)
leverage(活用する)
scalable(拡張性のある)
behind the scenes(裏で、舞台裏で)
ここを誤解している人が、本当に多い。
専門用語だけ覚えても、文章は組み立てられません。
関連する動詞・形容詞・副詞をセットで覚える。
これが鉄則です。
すでに知っている表現でも、頭からスッと出せるよう叩き込む。
短期決戦では、これが必要なんです。
僕の場合、アメリカに9年いるので、英語が口からスラスラ出ます。
だからキーワードさえあれば、本番で文章を組み立てられる。
まだその状態にない方は、口からスッと出るまで音読の反復が必要です。
【ステップ4】専門用語は"翻訳"ではなく"翻案"する
今回のプレゼン相手は、アメリカ販社の社長。
技術畑の出身ではありません。
つまり、専門用語をそのまま訳しても伝わらない。
たとえば「量子コンピューティング」。
そのまま"quantum computing"と訳しても、相手はピンと来ない。
だから僕は、こうした用語に1〜2文の噛み砕き説明を必ず準備します。
相手の表情を見て、わかってないなと思ったら、この補足説明を入れる。
そうすると、相手の表情が一気に変わる。
これができると、会議が確実に"実りある議論"になります。
そして、自分が通訳をしている意義が出てきます。
【ステップ5】単語帳は、超アナログでいい
僕の覚え方は、笑ってしまうくらいアナログです。
A4の紙を縦に半分に折って、
左:日本語
右:英語
ひたすら左を見て、右が口から出るかをチェック。
出なかったらマーク、また回す。
学生時代の英単語テストと、まったく同じです。
アプリでも、Notionでも、Excelでもいい。でも結局、ド短期で叩き込むなら書いて覚える紙が最強でした。
実際に僕が作った単語帳がこちら。
☑は間違ったところ。また見返して覚えます。

僕の通訳準備──3日間のリアルなスケジュール
参考までに、僕の準備期間を共有します。
平日昼間は、普通に仕事しています。
今回は会議で缶詰だったので、早朝に準備しました。
【1日目】情報収集デー
資料の精読
技術用語の調査
業界・競合情報の収集
背景知識のインプット
【2日目】英語化デー
想定スクリプトをAIに作らせる
自分の言いやすい表現に修正・調整
キーワード抽出
単語帳作成
【3日目】仕上げデー
単語帳の反復
音読・口慣らし
想定問答シミュレーション
瞬発力トレーニング
最終日に必ずやるのは、口を動かす練習です。
通訳は、スポーツ。
頭で分かっていても、口から出なければゼロ点。
ここを甘くみている人が、本当に多いんです。
②本番中の心構え──「準備した自分」を信じる時間
3日間の準備が終わったら、いよいよ本番です。
どれだけ準備をやっても、本番でしくったら、
せっかくの準備が台無しになる。
僕がプレゼン中に必ずやっていること、すべて公開します。
大きなノート
ここは、譲れないこだわりがあります。
僕が使うのは、B4かA3サイズの大きなノート。
理由はシンプルで、視野を広く保つため。
A4だと、すぐ余白が足りなくなる。
書ききれないストレスは、本番の集中力を一気に削ります。
字の大きさなどの配慮を気にせず、
通訳に一点集中できます。
そして、ペン。
僕は、ボールペンにめちゃくちゃこだわっています。
選ぶ基準は3つ。
滲まないこと
インクの出がいい(安定している)こと
触り具合、握り具合がいいこと
これ、バカにするかもしれませんが、
めちゃくちゃで大事です。
とにかく気が散る要素を減らすこと。
学校の試験と同じです。
ぼくは毎回同じペンを使います。
スポーツ選手が試合用のシューズを変えないのと、同じ感覚です。

CTOの言葉は、"キーワードだけ"書く
ここは、多くの人が誤解しているポイント。
CTOの発言を、全部メモしようとしてはダメです。
そんな時間はないし、書いてる間に次が始まります。
僕が書くのは、キーワードだけ。
枝葉の部分は、自分の頭の中で英語に組み立てます。
これができると、通訳の漏れを防ぐことができます。
米国側の発言は、"焦らない"が9割
アメリカの社長のコメントしっかりメモすることです。
これを日本語で訳すことも通訳の一部。
よくあるのが、最初は何を言っているか分からないこともあります。
けど、ここで絶対やってはいけないことは、焦ること。
焦って頭が真っ白になったら、その時点で終わりです。
会話には必ず流れがあって、
最初わからなかったことが、あとで繋がってくることがめちゃくちゃ多い。
だからこそ、わからなくても聞き取れたものは絶対にメモする。
流れをつかむため、紙に残しておくんです。
すると、どこかで内容をつかむキーワードが出て来たとき、
さきほどメモしてたことが
「あぁ、なるほど。このためにこういうこと言っていたのか」
とつながってきます。
キーワードが出てこなくて、内容がつかめなかったとき、
議論を深める、通訳の小技。
僕はこんな聞き方をします。
「これは、こういう意味ですか?」(相手に確認する)
「(同意するように)こうですよね?」(一歩踏み込む)
特に2番目。
相手の言葉を引き出すための、会話の煽りです。
うまく入れると、相手は「そうそう、もう少し補足するとね…」と
喜んで話を続けてくれる。
これが、議論を深める通訳の小技。
お互いの「強調ポイント」をつかむ
プレゼンと同じぐらいに大切なのが、議論の通訳。
ここで意識しているのが、両者の強調ポイントを掴むこと。
・CTOが熱を込めて話したところ。
・社長が、前のめりになった瞬間。
そこに、双方の関心が重なるポイントがあります。
そこを敢えて言語化して、通訳に乗せる。
「先ほど社長がおっしゃっていた〇〇と、まさにここが繋がりますね」
このひと言を挟めるかどうか。
議論の内容が理解できてたら、これが可能です。
これが、ただの"訳す人"と、"議論を動かす通訳者"の分かれ目です。
③プレゼンの後──議事録ができて、はじめて一人前
通訳の仕事は、
「会議が終われば終了」ではありません。
僕は必ず議事録を提出します。
個人的に一番意識しているのは、
議事録は、"鮮度"が命
CTOも社長も、忙しい人たちです。
会議の内容なんて、いちいち覚えていません。
しかも、日本とアメリカの対面打ち合わせは、次は半年か1年後。
オンラインでも、次は1か月後とか。
つまり、議事録が残っていないと、あとで振り返ることもできません。
だから僕は、1日以内に必ず送ります。
これは絶対です。
鮮度の落ちた議事録は、価値が半減するんです。
あと、結論だけ書いてはダメ。
僕の議事録は、ちょっとこだわりがあります。
結論やアクションアイテムだけを書くだけでなく、
議論のやり取りもできるだけ残します。
CTOや社長の意見は、それ自体が貴重な情報資産。
ただし、全部書くと膨大になる。
なので、状況に応じてメリハリをつけます。
先程も言った通り、忙しい経営陣は、
1か月後、数カ月後に再度議論するとき、
なぜこういう意思決定になったか覚えていません。
特に、議論の中で何か大きなターニングポイントがあったらなおさら。
また、議事録を他のメンバーに共有したとき、読み手が意識するのは、
「なぜそういう結論に至ったのか。」
つまり、意思決定のプロセスに興味があります。
【議事録作成、3つのステップ】
① B4/A3ノートに、できるだけ多くメモ
本番中に、コメントをひたすら書き留める。
字が汚くてもOK。自分が読めれば、それでいい。
② 議事録作成時に、整理する
このプロセスでは、ChatGPTを使ってもいい。
文字起こしツールを使っているなら、それも活用。
ただし、ツールで作ったものは必ずどこか間違ってるから、
必ず自分でレビューすること。
議論の本質は、AIには見えません。
③ メールで送る
議事録をPDFで添付して、本文は「添付ご確認ください」。
これ、ほぼ開かれません。
メール本文にも要約を書くこと。
本文を読んで「お、これは見ておこう」と思えば、添付を開いてもらえる。
内容をざっと確認して、必要な方だけ添付を見てもらう配慮です。
ここまでできたら、
「次もまた、あなたにお願いしたい」
そう言ってもらえること、まちがいないでしょう。
ネイティブ表現が活きる、最後のひと押し
僕は普段、X(Twitter)とThreadsで、
「ネイティブが本当に使う英語表現」を発信しています。
なぜここに、徹底的にこだわるのか。
学校で習った英語表現だけでは、経営層に響かないから。
日本語でもそうだと思います。
ビジネスにふさわしい日本語、パンチの効いた日本語の方が
心にグサッときます。
平易な表現だと、重要性や気持ちが伝わず、耳に残りません。
これ、英語でも同じです。
ネイティブ英語は比喩表現や、ビジネスでの専門用語をよく使います。
これを知っておかないと、
学校で習った英語だけでは、単純な表現になってしまい、
心に残らないのです。
特にノンネイティブだと。語彙が少ないならこうなりがちなんです。
これは、ぼくの9年間での海外駐在経験で感じたことです。
だから、ぼくは言葉にこだわりを持っています。
たとえばChatGPTにスクリプトを作らせるとき、
僕は、こんな注文をつけます。
・「ここ、"behind the scenes"を使って表現して」
・「"expand"じゃなく"scale"を使って」
・「一気通貫って”end-to-end”で表現したい」
こういう指示は、ネイティブの言い回しのストックがないとできません。
だから僕は、普段の投稿でネイティブがよく使う英語を集めている。
自分の中の英語のストックを、増やし続けているんです。
こんなことを自分だけのためにやるのはもったいない。
せっかくだから、みんなにも共有しているだけです。
こういう表現が使えるかどうかで、伝わり度が劇的に変わります。
「言いたいことを正しく訳す」から、「相手の心に届く言葉で語る」へ。
これが、実務通訳のクオリティを上げる重要なポイントだと、
僕は信じています。
最後に:これからこんな情報も発信していきます
これからのnoteでは、こんなテーマも書いていこうと思っています。
実務通訳の方法
海外会議の事前準備術
ネイティブ英語を使った勉強法
英語プレゼンの構築術
駐在員のリアルな英語環境
「情報だけあっても、実際にどう動けばいいか分からない…。」
そこで止まっている方、実は多いと思います。
僕は、ただの情報提供や共感で終わらせない。
具体的な"How"まで届ける。
そこを言語化して実践できるようにすることが、僕のnoteの価値。
それが皆さんの英語力アップや自信につながると信じています。
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