Adobeのサブスクから抜け出したい人へ - 無料のAffinityで何ができて、何ができないか
Affinityとの出会い
私はフリーランスになった直後は、ホームページの画像作成にAdobe Creative Suite 6(CS6)を使っていました。その頃のAdobeの最新版は、Adobe Creative Cloudでしたが、私レベルでは、CS6で十分だったので使い続けていました。ところがある日、悲劇が訪れたのです。ストレージがクラッシュ。いろいろ試みたのですが復旧できずにWindowsを再インストールしました。そこで問題が発覚。フリーランスになる前にすべての事業と設備を新しいオーナーに渡してしまったので、CS6のCDが無かったのです。(今思えばこの時点でのCS6の使用はライセンス的にNGだったと思います)
Adobe Creative Cloudをサブスクしようと思ったのですが、当時月額6,000円強でした。年間70,000円超え。フリーランスになった直後の私には、大きな負担でした。そこでネットを探し回って見つけたのがAffinityです。買い切りで6,690円。Adobe Creative Cloudの一ヶ月分の値段でした。ちょうど無料体験キャンペーン中だったので、使ってみると「これで十分じゃん」と思いました。それ以来Affinity Photo 2を使っていました。今回この投稿を書くにあたって最新のAffinity Studioを使ってみました。「十分じゃん、しかも無料!」。皆さんにもお知らせしたくてこの投稿を書いています。
Affinityとは?
Affinityは製品ブランド名で、開発元は英国のSerif(セリフ)社です。1987年に英イングランド・ノッティンガムで創業されました。創業当初から「100ポンド(約24,000円)以下で買えるデスクトップパブリッシングソフト」を作ることを目標とし、当初はDrawPlusなどWindows専用の低価格DTP・グラフィックソフトを開発していました。
2014年頃から現在のAffinityシリーズの発売をはじめ、買い切り型という営業姿勢が、サブスク全盛のAdobeに対するアンチテーゼとしてプロ・セミプロ層から支持を集めています。
Adobeは、Affinityより前の1982年にアメリカ・カリフォルニア州で設立されました。創業者は、ゼロックスのパロアルト研究所(PARC)出身の2人で、会社の名前は、創業者の自宅裏を流れていたAdobe Creek(アドビ・クリーク川)に由来しています。いかにもアメリカの「正当」なベンチャー企業のにおいがする会社です。
Adobeの方が、Affinityより5年早く創業していますが、Adobeが最初に手掛けたのはPostScript(プリンタ言語)で、1987年にIllustratorを、1990年にPhotoshopを製品ラインに加えました。DTP市場に進出したのは1994年で比較的後になってからです。
Canvaによる買収と完全無料化 - 2025年10月31日
Affinityは、2024年3月26日にCanvaに買収されました。それまでAffinity Photo(新名称:Pixel Studio)、Affinity Designer(新名称:Vector Studio)、Affinity Publisher(新名称:Layout Studio)の独立したソフトで、それぞれ買い切り型の有料ソフトでしたが、AI機能を除く全機能が完全無料化され、Canvaアカウントでログインすれば、Vector/Pixel/Layoutの全スタジオが無料で使えるようになりました。
同時に名前も、Affinity Photoは、Pixel Studioに、Affinity Designerは、Vector Studioに、そして、Affinity Publisherは、Layout Studioに変更されました。
各ソフトの機能とAdobeソフトとの対応関係
Pixel Studioは、Adobe Photoshopに相当するソフトです。ラスター画像(ピクセルベースの画像)の編集・加工を行うソフトで、写真のレタッチ、色調補正、レイヤー合成、選択ブラシによる背景切り抜き、RAW現像などが中心機能です。
Vector Studioは、Adobe Illustratorに相当するソフトです。ベクターデータ(拡大・縮小しても劣化しない線や図形で構成されたグラフィック)を扱うソフトです。ロゴ制作、アイコン、イラスト、UIデザインなどに使われます。ベクターとラスターを同一キャンバス内で切り替えながら作業できる点が特徴です。
Layout Studioは、Adobe InDesignに相当するソフトで、複数ページのレイアウト・DTP(Desktop Publishing)を行うソフトです。冊子、チラシ、雑誌、パンフレットなど、テキストと画像を組み合わせた印刷物・PDF制作に使われます。マスターページ、段組み、目次自動生成といった機能を持ちます。
Canvaが、SNS投稿、簡易資料などをテンプレートベースで作成する「お手軽デザインツール」なのに対し、Affinity(Pixel/Vector/Layout Studio)は、プロ向けの「本格制作ツール」でゼロから精密に作り込め、精密なレタッチ、印刷用データ、複雑なベクターイラストを作ることができます。
Adobe CC(Adobe Creative Cloud) との違い
Adobe CCには、20以上のソフトと様々なAIモデルが標準でついてきます。また、Adobe FontsやAdobe Stockの写真素材を使うこともできます。サブスク販売で、ときどき割引セールがありますが、9,080円/月が標準価格です。Adobe Photoshopを使いたい場合は、単体で、3,280円/月。LightroomとPhotoshopを合わせたAdobe フォトプランだと、なぜか、2,380円/月と安くなります。学生向けプランを除けば、Adobe Photoshopを一番安く使えるのは、Adobe フォトプランです。(価格は、2026年7月現在)
一方で、Affinity(正式名称は、Affinity by Canva)は、Adobe Photoshopに相当する機能、Illustratorに相当する機能、InDesignに相当する機能だけです。「だけ」と書きましたが、大部分のWEBクリエーターやデザイナーには、この3つがあれば十分だと思います。個人的には、Adobe Acrobat Proを付けてほしいなと思いますが。
Pixel Studioは、Photoshopのように、レイヤー管理、ブレンドモード、ペンツールやマスクなどの高度な選択ツール、各種フィルター、CMYK/RGB対応のカラーマネジメント、RAW現像や調整レイヤーによる非破壊編集など、日常的な写真編集機能はほぼ同等です。違う部分としては、Pixel Studioの無料版にAI機能がない点です。また、Lightroomとの連携により、数百枚の写真を一元管理しながら現像(RAW形式のデータを写真として仕上げること)するようなことはできません。プラグインは、長い歴史があるPhotoshopが有利で、Pixel Studioでは、Photoshopと同等の機能のプラグインを入手することは困難な場合があります。
Vector Studioは、Illustratorの対抗ソフトですが、グラデーションメッシュ(Gradient Mesh)が完全に非搭載です。これはフォトリアルなベクター表現に不可欠なツールで、代替手段が存在しないため、この機能が必要な仕事ではIllustrator一択になります。Affinity Designerのイメージトレースは、Illustratorに比較して貧弱でしたが、Vector Studioになって相当いいところまで追いついています。
Layout StudioとInDesignの差は、他の二つに比べて一番大きいです。本格的な長尺・複数ページのDTP制作(雑誌、書籍など複雑な組版)については、InDesignの方が専門性・成熟度で上回るという評価が一般的です。実際、Adobeに慣れたユーザーの多くは「Layout Studioは使う機会が最も少ないスタジオ」という感想を持つ傾向があります。また、歴史的に印刷業界の慣習では、Illustrator・Photoshop・InDesignを連携したフローが業界標準として出来上がっているので、Layout Studioが参入できる部分は少ないです。
ファイルの互換性
ソフトを変えたときに、気になるのは今までに蓄積したファイルの互換性と操作性です。まず、ファイルの互換性について見ていきます。
Pixel Studioは、PSDをかなり正確に読み込みます。通常レイヤー、レイヤーマスク、グループ、調整レイヤー(トーンカーブ、色相彩度など)は、ほぼ正確に再現します。スマートオブジェクトとスマートフィルター、拡張フィルターは、見た目は保たれますが、編集ができなくなります。フォント・テキストレイヤーは、Photoshopでも同じですがフォントが手元にない場合は表示が崩れる可能性があります。Pixel Studioの設定で「可能な場合はPSDスマートオブジェクトをインポートする」を先にONにしておくと読み込める範囲が広がります。
また、Pixel Studioは、PSDを書き出すことはできますが、Photoshopで読み込んだ時にうまく再現されない場合があります。Pixel Studioのレイヤーエフェクト(ドロップシャドウ、ベベル、光彩など)が、Photoshop側のレイヤー効果としてうまく変換されないという、かなり分かりやすい違いが出てくることが実際の検証で確認されています。
PSDの互換性については、読み書きはできますが、完全な互換性は期待しない方がいいでしょう。ファイルでの納品は、PSDではなく、PNG/TIFF/PDFでの受け渡しの方が安全です。
Illustratorで出力したAIを、Vector Studioにインポートすることはできます。読み込んだファイルのパスやテキストなどは、基本的な編集は可能です。ただし、クリッピングマスクなどの高度な構造は読み込み時に失われ、最終的にはただの画像のような扱いになってしまうケースがあるようです。AIファイルは、Adobe製品同士でもバージョン間で表示の違いが起きるほどデリケートなフォーマットのため、AffinityとIllustratorという別会社のソフト間では、開けたからといって見た目が完全に維持されるとは限らない点に注意が必要です。
Vector StudioからAIファイルへの書き出しは不可能です。AdobeがAIファイルのフォーマット仕様を公開していないため実装できないようです。
AIファイルでやり取りは制限がありますが、EPS、PDF、SVGフォーマットでは、互換性が保たれるので、実務ではこれらのフォーマットを使うのがいいでしょう。
Layout StudioとInDesignのINDDに互換性はありません。ここはあきらめてください。
このレポートの読者はWEB系の人が多いと思うので、Adobe PhotoshopやIllustratorからジェイルブレイクしてAffinityに乗り換えを検討する余地は大いにあると思います。
操作性について
Pixel Studioの操作性は、Photoshopに慣れたユーザーが違和感なく移行できるよう、レイヤー構造や画面レイアウトが意図的に似せてあります。編集画面はPhotoshopに近く親しみやすいです。私を含め多くのユーザーが評価しているのが動作速度です。Photoshopは最新機能が充実している分、PCスペックへの要求も高くなりがちですが、Affinityは低スペック環境でも快適に動きます。
操作性が似ているがゆえに、ちょっとしたショートカットが見つからなくて苦労することもあります。こんな時はChatGPTやGeminiに「PhotoshopのCtrl+〇〇は、Pixel Studioではどうする?」と聞いてください。ヘルプやネットを検索するより早く見つかります。
Affinityのインストール
Affinityをインストールするためにインストール画面、https://www.affinity.studio/ja_jp/get-affinity にアクセスします。「Affinity by Canva」と表示されるので「登録してダウンロード」をクリックします。次に、Canvaアカウントにログインする画面が表示されます。既にアカウントをお持ちの場合は、そのままログイン。アカウントがない場合は、アカウントを作成します。
途中、「Canvaプロ」や「Canvaビジネス」の勧誘画面がでますが「X」などをクリックしてスキップします。そのあとダウンロード画面が表示されます。Windows用かmacOS用を選んでダウンロードします。Windows用の場合、CPUアーキテクチャとエディションを聞いてきます。市販のデスクトップ/ノートPCや一般的な自作PCであれば「Windows(Intel/AMD)」をクリックしてください。
ダウンロードが始まりダウンロードフォルダに「Affinity x64.msix」ファイルが格納されます。これをダブルクリックして実行し、画面の指示に従ってインストールします。インストールが完了するともう一度Canvaアカウントへのログインが要求されます。ログインすると「ようこそ」画面とその裏にAffinity Studioが開きます。「ようこそ」画面は、右上の「X」ボタンで閉じてください。機能はAffinity Studioの左上の「ベクター / Vector Studio」「ピクセル / Pixel Studio」「レイアウト / Layout Studio」のボタンで切り替えます。「Canva AI」のボタンは生きているように見えますが、Canvaの無料プランでは機能しません。
以上で、Adobe ジェイルブレイクの説明はおしまいです。最後までお読みいただきありがとうございます。お役に立ちましたでしょうか?今後もAIに関する記事、WEB技術に関する記事、私の経験に基づいたフリーランスの生き方に関する記事を発信していきます。よろしければ応援のコメントとフォローをお願いします。
