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辞書で遊ぶ & AIに教えてもらう

言葉の意味は「ひとつじゃない」

以前、「言葉の意味はひとつじゃない」という記事で、「一語一義原理主義者の弊害」みたいなことを書いた。ひとつの言葉には、ひとつの意味しかない、みたいに考えると、あまりよろしくない。

紙の辞書の面白さと効能

それでは僕たちは言葉に向き合うときに、どのようにすれば良いのかというと、何しろ辞書に向かうのが近道である。特に、紙の辞書は「効率的」である。

本を読んでいて、わからない言葉があったとする。家にいるならすかさず紙の辞書を引く。外出先なら、メモを取っておいて、後で調べても良い。

わからない言葉を調べると、当然、その言葉の意味を知ることができる。紙の辞書の良いところは、さらに、その周辺の言葉にも自然に触れられるところだ。自然に語彙が増えていく。

ちなみに、語彙の「彙」という字は、ハリネズミの形だそうで、ある分野におけるグルーピングされた言葉を意味する。
「ある分野」の周りに、様々な意味の言葉がハリのように伸びている、というイメージかな。

まあそんな感じで、紙の辞書を読むと自然に言葉を増やすことができる。
また、紙の辞書は、ぜひとも複数持つと良い。一冊では足りない。二冊、三冊と持つことで、読み比べができる。

すると何が起こるか? 「言葉の意味は一つじゃない」、ということがはっきりする。

辞書によって、同じ言葉でも、その説明書き、語釈は異なる。
辞書に書かれている言葉の意味というのは、「定義」ではない。
実際に世の中で運用されている、言葉の意味を描いたスケッチである。
一つの言葉のコアイメージは同一でありながら、辞書によってその描かれ方は微妙に異なる。
どこに力点を置くかによって、説明の仕方が変わる。

しかも、同じ言葉でも、時代や場所によって、少しずつその意味合いは変わっていく。
だから、同じ辞書でも、版を重ねるに従って、同じ言葉の語釈が変わる、ということも起こる。

このように、言葉の意味は多義的でもあるし、多層的でもある。
紙の辞書からは、このようなことを見てとることができる。

このようなことも含めて、紙の辞書は物理的に様々なメリットがあるので、ぜひ複数を比べ読みするのが良い。
とくに、学生や、辞書に触れるのが初めて、という人は、まずは何冊かの紙の辞書を手に取り、何かにつけて紐解く、という経験を持つことは、とてもよいと思う。

デジタル辞書がもたらす新しい読み方

さて、ここまで紙の辞書の良さを述べてきたが、もちろんデジタルの辞書でも全然かまわない。
というか、僕も今ではほとんどデジタルの辞書ばかり使っている。
ある程度紙の辞書に触れたら、デジタルの辞書もどんどん使っていくと良いと思う。

とくに、デジタルの辞書の場合、紙の辞書にはないメリットがある。
ひとつは、紙の辞書のメリットである「物理的に存在すること」の逆。
物理的に存在しないことによる、取り回しの良さである。
とくに、スマホのアプリに多数の辞書を入れて持ち運べるようになったことは、とても大きい。
どこにいても調べ物ができる。どこでもオフィスになったようなものだ。

また、アプリに複数の辞書を入れていると、「串刺し検索」ができるのもうれしい。
ひとつの言葉の意味を調べる際に、紙の辞書だと当然、一つ一つページをめくって、当該の言葉を調べていく必要があるわけだが、デジタルの辞書の場合、言葉を入力すれば、その言葉を説明している辞書が一気に複数立ち上がる。
それらを高速で比較しながら、コアイメージを掴んだり、より目的にふさわしい表現を選んだりすることができるわけだ。

紙の辞書にせよ、デジタルの辞書にせよ、言葉というものには中心的な意味合いがあるとともに、それが多義的・多層的に揺れ動いている、という点が掴めると、どんどん楽しくなるように思う。

AIを“ざっくり辞書”として使ってみる

そんな中で、さいきんおもしろいと思っているのは、生成AIを使った言葉の意味調べである。

AIを使って言葉の中心的な意味を把握するにはどうするか。手順は次のような感じになる。

・言葉を選ぶ。
・言葉の意味を説明させる。簡単な方から、複雑な方へ、順に並べさせる。
・ざっくりと、単純から複雑に向かって、意味をつかむ。
・中心的な意味=コアイメージをつかむ。
・コアイメージが揺れながら色々な意味を生成しているような感じをつかむ。

生成AIは、本物の辞書とは違い、その説明が間違っていることもある、という点に注意したい。
その誤りの危険も踏まえつつ、あえて上記のような形で、ざっくりとした説明を読んでいく。

そうすることで、言葉の中心的な意味合い、揺れ動きながらも変わらない部分のコアイメージは掴めるのではないか。
とくに、理解するのが難しい用語の意味を知りたいときなど、この方法は有効だと思う。

実践:「概念」をAIに説明させてみた

たとえば、よく小学生向けの説明文にも出てきて、語注が必要になる言葉に「概念」というものがある。これは、説明しようとすると、けっこう難しい。ためしに、以下のようにAIに聞いてみよう。

【プロンプト】
「概念」という言葉について、小学生・中学生・高校生・大学生・大学院生に向けて、順番にわかりやすく説明してください。

【AIの回答】

小学生向け
「概念(がいねん)」というのは、いろいろなものやことをひとまとめにして考えるときに使う言葉です。
たとえば「動物」という言葉は、犬や猫やゾウなど、いろんな生きものをまとめた“グループの名前”です。
この“グループの名前”が「概念」です。

中学生向け
「概念」とは、いろいろな物事や考えを、共通する特徴ごとにまとめて、一つの言葉や考え方にしたものです。
例えば、「正義」という概念は、「悪いことをしない」「みんなのためになる」などの共通する意味をまとめた言葉です。
個々の例から、共通点を見つけて“ひとくくり”にしたものが「概念」です。

高校生向け
「概念」とは、たくさんの具体的な事例や現象に共通する性質を抽象化して、一つのまとまった意味として表すものです。
たとえば「自由」という概念は、「自分で選ぶ」「他人に縛られない」など、多くの状況や出来事に当てはまる“本質”をまとめて表しています。
つまり、「概念」は個々のものを超えて、それらを貫く共通の意味や本質を表現する言葉や考えです。

大学生向け
「概念」とは、さまざまな具体例や現象を統合し、抽象的に捉えた思考の枠組みのことです。
たとえば「社会」という概念は、家族や学校、国などさまざまな集団の在り方を超えて、“人と人との関係性が生み出す仕組み”として把握されます。
哲学や科学では、概念を明確にすることで、思考や議論の土台を作ります。
「概念」は、知識や経験を抽象化し、新たな理解を生み出す知的道具です。

大学院生向け
「概念」とは、特定の経験や事象の集合に通底する本質的な性質を抽出し、言語や記号で表現した抽象的構成物である。
それは、個別具体から離れて、分類・分析・批評・理論化の基礎となる知的枠組みを提供し、対象の再構成や新たな解釈を可能にする。
学問的議論においては、概念の定義と境界設定が理論の精度と射程を決定づけるため、概念装置の批判的検討が不可欠である。
また、異なるパラダイム間で同じ語が異なる意味を持ちうるため、概念の操作的定義やメタ概念の構築が重要となる。

「辞書としてのAI」を使いこなす楽しみ

このような形で、生成AIをざっくりとした意味を捉える辞書として使ってみるのも、なかなか面白いと思うが、どうだろうか?

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