【寝物語】みそっこどん
むかしむかしのお話でございます。
ある大きな村に、みそを作る男がおりました。名を、みそ太郎と申します。
みそ太郎どんはみそ作りの名人で、大豆から丹精込めてみそを仕込みます。

そのみそのうまいこと、うまいこと。まわりの村からも、遠くの村からも、人々が買い求めにやって参ります。
「みそ太郎どんのみそは、とっても美味しいと評判じゃからのう」
「わしらもみそが好きでのう。みそ太郎どんの味噌、小指の先ほどあれば、米をたくさん食えるわい。本当にうまいんじゃぞ」
と、みな口々にほめそやすのでございました。

ところがある時のこと。
みそ太郎どんがいつものようにみそを仕込んでおりますと、そこへなんと、妖怪が現れたのでございます。
妖怪みそなめ——みそ蔵のみそを舐め尽くすという、恐ろしい妖怪でございます。

「みそ太郎どん。お前が作るみそはたいそううまいそうだな。この俺様が、お前のみそを、ぜーんぶ舐めてやる」
「なんだお前は!」
「俺の名前は妖怪みそなめ。みそ蔵のみそを全て舐めるのが、俺様の趣味よ」
「なんたる生意気な!この俺様が作った大事なみそを、貴様なんかにやるものか!」
そう言うやいなや、みそ太郎どんは背中から大きな斧を取り出すと、みそなめを真っ二つに叩き切ってしまいました。

すると、みそなめの体の中から、たくさんのみそがあふれ出てきたのでございます。
みそ太郎どんはみそに目がございません。そのみそなめから出たみそを、試しに舐めてみますと——
「うっ!うまい!なんたるうまさ!みそなめのみそは……本物のみそだ……。俺が長年たどり着けなかった、本物のみそが、こんなところにあるとは……!」

みそ太郎どんは夢中になって、みそなめのみそを全て舐めてしまいました。
そして、はっと我に返った時には……みそ太郎どんは、みそなめになっていたのでございます。


妖怪みそなめとなったみそ太郎どんは、それから村の人々に言いました。
「私は妖怪みそなめになってしまいました。でも、私が作るみそは、とっても美味しゅうございますよ」
そう言って、自らの体から出るみそを振る舞ったのでございます。

「うわあ!妖怪になっちゃったの、みそ太郎どん!大変だねえ!でも本当に美味しいよ。どうやって作るの?」
「実はこれ……、私の体の中から出てくるものでございます」
人々は驚き、戸惑いました。
「え、え、気持ち悪い!それ、ひょっとして……、みそじゃなくって……、あれじゃないの!」
「いえ、これはみそでございます。みそなのでございます」
——「みそくそいっしょ」という言葉がございます。
この言葉が生まれたのは、このみそ太郎どんのお話があったからなのでございます。
おしまい。

