【寝物語】文字太郎と絵太郎
あるところに、文字太郎という人がいました。文字太郎は文字を書くのがとっても得意でしたが、絵を描くのは苦手でした。
文字太郎は、絵を描いている人を見ると、なんかすごくいやな気持ちになるため、「おい、お前、絵を描くんじゃない」と注意していました。
一方、絵太郎という人は、「俺は絵を描くのが好きなんだ」と言っていました。絵太郎は文字を書くのが苦手だったため、文字太郎のことが大嫌いでした。
彼は文字太郎に対し、「なんだ、お前、文字ばっかり書いて、そんなもん書いて何が面白いんだ」と文句を言い、文字太郎も絵太郎に対し、「お前なんて絵ばっか描いて、全然何の意味もないじゃないか」と言い返していました。
この2人はいつも喧嘩ばかりしていました。

そんな中、王様が「漫画コンクール」を開催することになりました。
王様は「わしは今まで漫画を読んで一度も笑ったことがない」と述べ、「もしもお前たちの中で漫画を描いてわしを笑わせることができたら、そのものにこの国の半分をやろう」と約束しました。
町の人は皆、漫画を描き始めましたが、文字太郎は絵が描けず、絵太郎は文字を書くことができませんでした。
2人は「一緒に描けばいい」と思われましたが、とにかく仲が悪かったため、一緒に描く気にはなれませんでした。
コンクール前日になり、まだ漫画が描けていない文字太郎と絵太郎は偶然ばったり出会いました。
文字太郎は絵太郎に「俺と一緒に組むか」と声をかけました。
絵太郎は「組みたくねえよ。お前のこと嫌いなんだからよ」と答えました。
「でもよ、この国を半分もらえるんだぞ」と文字太郎は言いました。そして小声で、「ここは手を組んだ方が得じゃねえか」と誘いました。
文字を書くのは文字太郎が得意、絵を描くのは絵太郎が得意だったからです。
絵太郎は「分かった。じゃあちょっとここは仕方ない。一緒に頑張ろう」ということで、徹夜をして漫画を描き上げました。
コンクールの当日、王様は国中の様々な漫画を見ましたが、「つまんない」「全然だめ」と不満を漏らしていました。
しかし、文字太郎と絵太郎が描いた漫画を読むと、王様は「うわ、何これ? 超面白いじゃん」「すっご、めちゃくちゃ面白い。やば」と大絶賛しました。

王様は約束通り、2人に国の半分をくれました。
ところが、国の半分をもらった後も、元々仲が悪い2人はすぐに喧嘩になりました。
文字太郎は「俺が字を書いたからこの国の半分をもらえたんだぞ」と言いました。
絵太郎は「俺が絵を描いたからこの国の半分をもらえたんじゃないか」と言いました。
そしてとうとう、「じゃあ勝負だ」ということになりました。
しかし、勝負をしようにも、片方は文字を書くだけ、片方は絵を描くだけで、勝負になりませんでした。
悩んでいると、そこに再び王様がやってきました。
王様は2人に対し、「お前たちはバカだな」と言い、「2人でようやく力を合わせてこの国の半分を手に入れたのに、なんで仲良くしないんだ?」とたずねました。
2人が「こいつのことが嫌いなんです」と答えると、王様はこう命じました。
「それじゃあその嫌いな気持ちをお前は文字で書いてみろ」
「それからお前はその嫌いな気持ちを絵で描いてみろ」
2人はお互いへの「嫌いな気持ち」を一生懸命文字にし、懸命に絵に描きました。
すると、その文字と絵の2つを合わせると、ものすごく面白い漫画が描けてしまいました。
文字太郎は「俺はお前のことが嫌いなだけなのに」、絵太郎は「俺だってお前のことが嫌いなだけで、それをひたすら絵に描いただけなのに」と驚きました。
2人は、お互いのことは嫌いなのですが、嫌いなまま一緒に漫画をたくさん描き、国の人々をたくさん笑わせて暮らしていくことになりました。

