春の土用に想いを寄せて
春の土用、心の衣替えをゆっくりと
こんにちは。
少しずつ、風の中に花の香りが混じるようになってきましたね。
窓を開けると、冬のひんやりとした空気とは違う、どこか湿り気を帯びたやわらかな風が入ってくる。そんな季節の変わり目に、ふと体が重くなったり、気持ちが追いつかなくなったりすることはありませんか。
今はちょうど「春の土用」の時期。
暦の上では、次の季節へと移り変わるための、大切な「調整期間」と言われています。
今日は、なんだか心が落ち着かない、そんなあなたへ向けてお話しさせてください。
焦らなくていい「停滞」の時間
この時期、私たちは無意識のうちに「新しいことを始めなきゃ」「周りに置いていかれないようにしなきゃ」と、自分を急かしてしまいがちです。
春は、世の中が大きく動く季節。
真新しいスーツを着た人たちや、希望に満ちたニュースが目に飛び込んでくると、何も変わっていない自分に対して、ちいさな焦りを感じてしまうこともあるかもしれません。
でも、土用の時期の土の下では、植物たちがじっと次の準備をしています。
それは、決して「止まっている」わけではなく、根を張り、栄養を蓄え、力を溜めている大切な時間。
私たちの心も、それと同じだと思うのです。
「何もできていない」と感じる日は、実は心が一生懸命に、新しい季節に適応しようと頑張っている証拠なのかもしれません。
「正しさ」に疲れてしまったときに
私が代表を務めている「一般社団法人 笑顔の架け橋」では、日々、いろんな方とお会いします。
そこには、自分を責めてしまっている人や、「もっとしっかりしなきゃ」と歯を食いしばっている人もたくさんいらっしゃいます。
あるとき、活動の中で出会った一人の女性が、ポツリとこうおっしゃいました。
「世の中には『正しい生き方』が溢れすぎていて、そこから外れるのが怖いんです」
その言葉を聞いたとき、私は胸が締め付けられるような思いがしました。
今の社会は、効率や正解、強さばかりが求められがちです。でも、私たちは機械ではありません。天気が変われば体調も崩れるし、理由もなく悲しくなる夜だってあります。
そんなとき、私はいつも自分にこう言い聞かせます。
「今は『正しさ』よりも『やさしさ』を選ぼう」と。
誰かに対してだけでなく、自分自身に対しても。
「早く起きるのが正しい」とわかっていても、どうしても起きられないなら、「今は眠りが必要なんだね」と、自分を許してあげる。
「前向きでいるのが正しい」と思っても、落ち込んでしまうなら、「それだけ一生懸命生きてきたんだね」と、隣に座ってあげる。
そうした小さな「自分へのやさしさ」の積み重ねが、いつか誰かへのやさしさへと、自然につながっていくのだと信じています。
比べない、競わない。自分だけの「一歩」
私たちは、どうしても他人と自分を比べてしまいます。
SNSを開けば、キラキラした日常や成功体験が流れてくる。それを見て、「自分はなんてちっぽけなんだろう」と溜息をついてしまうこともあるでしょう。
でも、幸せの形に「定規」はありません。
ベランダの植木鉢に水をあげたこと。
丁寧にお茶を淹れて、その香りを嗅いだこと。
空がきれいだな、と一瞬でも思えたこと。
そんな、誰にも気づかれないような、自分だけの小さな「一歩」を、どうか大切にしてください。
大きな成果を上げることだけが素晴らしいわけではありません。
今日、一日を無事に終えようとしている。
それだけで、あなたはもう、十分に立派にやっているのです。
そのままで、大丈夫
もし今、あなたの心が曇り空のようで、何もやる気が起きないとしても。
あるいは、言葉にできない不安で胸がいっぱいだとしても。
どうか、そのままのあなたを否定しないでください。
春の土用は、無理に動くための時間ではなく、心を「ゆるめる」ための時間。
パンパンに張った糸を、少しだけ緩めて、遊びを持たせてあげる。
そうすることで、ようやく新しい空気が入ってくるスペースが生まれます。
今は、雨の日が続いても、風が強くても、
「ああ、季節が変わろうとしているんだな」
と、眺めているだけで大丈夫です。
特別なことは、何もしなくていい。
ただ、温かい飲み物を飲んで、自分の心臓が刻むリズムに耳を傾けてみてください。
あなたは、そこにいるだけでいいのです。
土用の時期が明ければ、まぶしい新緑の季節がやってきます。
でも、そのときまで急ぐ必要はありません。
今はただ、ゆっくりと、自分を労わってあげましょう。
あなたの心が、少しでも軽くなることを願っています。
今夜も、静かな夢が見られますように。
また、ここでお会いしましょう。
