【毎週ショートショートnote】お題:「最低二万里」
「お願いです。付き合ってください」
「実は私、神様なの」
彼女と出会ったとき、この人と一緒にいられたら、きっと幸せになれる。そう思った僕は、願いを告げた。
<すると彼女はひとつの試練を与えた>
「私に触れられたら、あなたの望みを叶えてあげる」
「わかった」
「ただし、近づくたびに、あなたは小さくなるの」
僕は彼女に向かって歩き出した。足を踏み出すたびに、身体が少しずつ縮んでいく。足元の小石がやがて岩のようになり、空を見上げると、彼女は雲間に立つ神像のように見えた。
近づくほど、遠くなる。縮むほど、声も届かなくなる。
「どこへでも連れて行く! 財産、命、僕のすべてを差し出す!」
声を張り上げても、もう風にさらわれていくだけだった。彼女は微動だにせず、冷たい目で僕を見下ろしている。
「いつになったらたどり着けるんだ」
「さぁ、今の調子なら、二万里くらい先かしら」
やがて僕は、指先ほどの大きさになっていた。地を這うように進むことすら、もうままならない。
「・・このまま歩けば、消えてしまう」
僕は、ただ顔を上げ、彼女を見つめた。何もせず、何も言わず、ただその存在を見ていた。
ーそばにいるだけでいい。お願いだー
そのときだった。
彼女の瞳が、わずかに揺れた。
そして彼女は、はじめて一歩を踏み出し、こちらへ向かって歩き始めた。
彼女は、小さな僕の身体をそっと両手で包んだ。
その瞬間、僕の身体は、少しずつ、もとの大きさへと戻っていった。
「さあ、どこに行こうか」
彼女は微笑んで、僕の手を、やさしく握った。
お題【最低二万里】
たらはさん、二万里ってどえらい長さなの知ってます?
そんな突拍子もないお話書けるわけないですよ。
せっかくの記念回なのに。
そんな皆様にはこちらを。
裏お題【たいてい序盤に】
