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【毎週ショートショートnote】お題:【入学式の養殖】

入学式の朝、生徒たちは魚を受け取った。

卒業式の日、その魚は「その人間の精神」になっている。

この学校では、創立以来ずっと続く伝統行事だという。

楽しい思い出を食べた魚は、眩い黄金に。
悲しみをすすった魚は、静かな青白に。

卒業式の日、水槽の中には、数えきれない色が混ざり合い、万華鏡のような「青春のアート」が生まれる――

しかし、ある女子生徒の魚が、その光景を一変させた。

彼女の魚は、真っ黒だった。

しかも、他の魚よりほんの少しだけ大きかった。

彼女の魚は、周囲の黄金や青の魚を、無慈悲にそして機械のように飲み込み始めた。

一匹飲み込むたび、黒さはさらに深くなる。

やがてその魚は、数千匹の光をすべて飲み干し、水槽いっぱいに広がる巨大な闇となった。

学校関係者は色めき立った。

__それは、教育的指導という名の、あからさまな嫌悪だった。

「その真っ黒な化け物は、君の心の醜さそのものだ。社会への不満か?それとも、何か良からぬ思想に染まっているのか。」

クラスメイトや教師たちの言葉が、礫のように彼女へ投げつけられる。

女子生徒は何も答えなかった。

上履きのつま先を見つめたまま、ただ黙ってうつむいていた。

<そして、卒業式>

全校生徒の前で水槽が披露された。

__水槽の中は、真っ黒で何も見えない。

ざわめく講堂。

その暗闇の奥で、突然、大きな目玉がくるりと開いた。

「ぎゃっ!」

誰かが叫んだ。

次の瞬間。

強化ガラスに亀裂が走る。

パキパキ、と不吉な音が講堂に響いた。
生徒たちが悲鳴を上げて逃げ惑うなか、水槽は爆発するように砕け散った。

そこから現れたのは――

講堂の天井を突き破らんばかりの巨大なクジラだった

水槽という狭い枠を飛び出し、空へと躍り出るその巨体。

その巨大な胸鰭には、鮮やかな七色の紋様が刻まれていた。

黒は、すべての色が混ざり合った色。

クラスメイトたちの孤独も、喜びも、希望も、絶望も――

すべてを飲み込んだそのクジラは、七色のヒレを羽ばたかせ、空へ消えていった。

初めて顔を上げた彼女の瞳には、海を目指すクジラのように、どこまでも澄んだ空が映っていた。




田原にかさん!いつもお世話になっております。


#毎週ショートショートnote
#入学式の養殖

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