その石には意思がある【2/3】解読:天音町の奇妙な冒険
「その石には意思がある」
私は民俗学博士のロバート教授。
とある大富豪から、天音町にある謎の石と模様の調査を依頼された
それが意味するものは、超古代文明の遺物か、それとも世界を騙す最高峰のマジックか。私は真実を追求するため、カバンを手に取った。
__覚悟はいいか
自分に言い聞かせる
全ての謎が眠る地、天音町への旅が始まった

天音町
山と海に囲まれた、のどかな田舎町だ。西洋風の建物や石畳のメインストリートがこれからの壮大な冒険を予感させる
「この町にある奇妙な石を調査させてください」
私は、天音町役場の受付の女性に石のことを尋ねると、「私も持ってます。これのことですか」とペンダントにされた石を持ってきてもらった。

__こんなにも早くお目当ての石が見つかるとは
その石は、薄い曇ったオレンジ色をしており、何かの模様が一つだけ描かれていた。手に取ってみると硬く、ずしりと重い。
研究のために貸してほしいと懇願するときっぱりと断られた。
「それはできません!この石は私のものです!」
「私のモノ?」
「学術調査のためです。数日だけで構いません」
何度も頭を下げ、ようやく数日間だけ借り受けることができた。
「しばらくお借りします」
素材は翡翠・超精密技術の石
私は天音町の大学の研究施設を借りて、石の分析を行った。
蛍光X線で成分は翡翠。オレンジ色の結晶は新発見の鉱物だった。硬度7を誇る頑強な翡翠に刻まれた模様には機械工作の後がない。
過去にオーパーツとして有名だった「水晶ドクロ」は、超古代文明の産物だと言われていたが、近年になって、電子顕微鏡でダイヤモンドカッター、研磨剤の痕跡が見つかり、現代に創られた偽物だと判明した。
しかし、この石には加工した痕跡がない。硬度7を誇る頑強な翡翠に、これほど鮮やかな模様を刻む技術は現代科学を超越している。炭素分析により作られたのは2000年以上前だった。
___私は興奮した。
市役所に戻り「この石を高額で譲ってほしい」と懇願した。
「ダメです。これは私の個人所有物です」
それに「天音町の人」は誰でも持ってます。
私は驚愕した。国宝級の価値を持つ古代文明の遺物が、この町では当たり前のように住民たちの手元にあるのだ。
「どこからこれを?売られているモノなのですか」
「基本的に拾ってきたものです」
「どこかの遺跡の中に眠っていたものですか?」
「いいえ、天音町の山とか河原とか歩いてたら稀にみつかります。家族代々で引き継いでいる人もいます」
町で調査を行うと。天音町の住民のほとんどが、奇妙な石の断片を個人で所有していた。

大きさはバラバラで、1~3個の記号が刻まれている。住民たちは、家紋にしたり、アクセサリー、文鎮、漬物石と様々な用途に使われていた。玄関で熊の木彫りの彫刻の横に置いてあるケースが一番多い。
この町の住民たちは、この石を日常に溶け込ませている。
___この模様も何なのだ、文字なのか、記号なのか、地図なのか?
夜の研究室
時計の針は深夜2時を回っていた。薄暗い研究室の中で、パソコンの画面だけが怪しく緑色の光を放っている。
「……バカな。この石は一体何なんだ! この町の住民も!」
教授は血走った目で画面を睨みつけた。
町中の家庭を回り、文鎮や漬物石として使われていたあの翡翠(ヒスイ)の断片を、片端から撮影した画像データを、大学の最新の形状解析ソフトにかけ、輪郭をスキャンさせていた時、ある衝撃の事実に気付いた。
「これは!まさか、ひょっとして…」
バラバラに見えた破片の端には、特定の幾何学的な「角度」が存在していたのだ。互いの形をパズルのように組み合わせると、ピタリと噛み合うものが次々と現れる。
ロバート教授は歓喜の声を上げた

「この模様は文字だったのだ!!」
「そして……石板だ。元々は、一つの巨大な石板だったんだ……!」
すべてのパーツが揃ったときの大きさを推定し、ロバート教授は愕然とした。 天音町の人口はおよそ8万人。
その全員が1個ずつこのパーツを所有していると仮定し、手のひら大の平均的な体積から計算を弾き出すと、完成する石板の総重量は約105トン。
面積にして約800平方メートル――テニスコート3面分を超える、オレンジ色に怪しく光る超巨大な翡翠の壁画が現れる計算になる。
文字の解読を試みたが、世界のどの文字とも照合しない。順番も分からない断片的な文字の破片では解読が出来ない。さらなるサンプルが必要だ。
狂気とも言える高揚感に突き動かされ、教授の探索隊は天音町の河川や山林へと向かった。最新の地質調査機器を投入し、しらみつぶしに捜索を行う。 しかし――石は、ただの1個も見つからなかった。
「全て回収され尽くした後なのか……?」
焦燥感に駆られた教授は、再び市役所を訪れた。受付の女性に、山にも川にももう石は残っていなかったと告げると、
「まだまだありますよ。現に、去年は197個ほど、新しい石がここに新規登録されているんですから」
「197個? 登録?」
「ええ。昔からこの町では、あの石を見つけたら役場に申請して、個人の所有物として『登録』することになっているんです。簡単な書類を出すだけですけどね」
「そんな馬鹿な! 私の探索隊がどれだけ血眼になって探しても、ただの怪しい石ころ一つ見つからなかったのだぞ! それなのに、毎年200個近くも新しく見つかるなどと……」
「そう言えば…不思議ですよね。あの石は、最初からそこにあるものを拾い上げるんじゃないんですもの。石のほうが、私たちの前に突如として姿を現す……そんな感覚です」
その瞬間、私の脳裏を驚愕の閃きが駆け抜けた。心臓が嫌な音を立てて跳ね上がる。
「もしかして…去年の天音町の新生児の数を教えて下さい」
「ええと、そうですね…」担当の女性は資料をペラペラめくった
「197人です」
天音町の人口、約8万人。そして去年この町で生まれた子供の数は、およそ197人。 偶然の一致などではあり得ない。
___この町に新しい命が一人生まれるたび、その人間のためだけの遺伝子(コード)を刻んだ翡翠が、山や川から文字通り「生み出される」!
そして、その人間が死ねば、石は遺品として家族に受け継がれ、あるいは再び河原へと還り、次の血脈を待つ。
「天音町でこの石は、昔から、個人証明書の代わりにも使われていました。アナログの”マイナンバーカード”みたいなものです」
……外の人間がいくら探しても見つからない理由
……この石が外に出回らない理由も

誰が何のために作った。
どうして石板を断片にしてバラバラの文字にした。
石板には何が書かれていた。
未解読予言か?人類の設計コード?
誰も知らない罠?
この町の住人だけが受け継ぐ秘密とは?
__私の思考の深淵に足を踏み入れ、目の前が深い霧に包まれたような目眩を覚えた。
その時。 私の狼狽している姿を心配したのか、市役所の女性の声が、現実の世界へと私を引き戻した。
「新構造真(しんこうぞう しん)さんの地域復興コンサルタント事務所に行けば、何かわかるかもしれません。あの人も奇人で有名……いえ、この天音町という『名所』の裏側に、最も詳しい方ですから」
次回予告(最終章)
★その石には意思がある【3/3】最終章★
ロバート教授が、天音町の地域復興コンサルタント事務所を訪れ、奇妙な石の真相を尋ねる。
___その結末とは

こちらのお題です
主催者も投稿するのが この企画のスタイル!!
作品の画像はこちらからいただきました。
studio_maki🍀note.2025.4.17_φ(・_・☘ 様
ありがとうございます!使わせていただきました。
以上
よろしくお願いいたします_φ(・_・☘✨🍀
