【第2章 第5話〜第8話:最近のあの子の噂】転生プログラマーが魔法をデバッグしたら、世界OSから監視される件 ―6歳幼児が異世界の仕様をハックし始めた
ルミナス港・波止場近くの酒場
時刻:夕刻、仕事終わり
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「なあ、レイのガキが船燃やしたって本当か?」
「燃やした? 逆だよ逆」
「逆?」
「海賊の船を」
「……は?」
グラスを置く音。
「密航して、海賊に襲われて、親父の結界が破られそうになったらしい」
「で?」
「で、ガキが飛び出して——なんか光らせたら反射したって」
「反射?」
「ああ。海賊の魔法が跳ね返って、自分の船が燃えた」
「……3歳で?」
「3歳で」
沈黙。
「……密航した時点でおかしいだろ」
「そもそも3歳児が船に隠れられるか?」
「隠れたんだよ。荷物の隙間に」
「器用すぎだろ」
誰かが吹き出す。
「つーか、親は気づかなかったのか?」
「気づいてたら連れてかねえだろ」
「まあな」
「で、海賊は?」
「逃げた」
「そりゃ逃げるわ」
また笑い。
「でも、ガルムは泣いてたらしいぞ」
「ガルム? ああ、獣人の警備か」
「あいつ、肩に槍刺さったんだけど、レイが守ってくれたって」
「守ったっていうか……結果的にな」
「結果的でも助かったんだから感謝するだろ」
「まあな」
「いい話じゃん」
「いい話だけど……3歳だぞ?」
「……確かに」
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同じ酒場、別のテーブル
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「なあ、レイのガキ、今度は壁ぶち抜いたらしいな」
「またかよ」
「火事じゃなくて?」
「火事じゃなくて、炎の矢」
「矢?」
「ああ。詠唱なしで」
「……は?」
「詠唱なしで撃ったら、強すぎて壁貫通」
誰かがグラスを落としそうになる。
「4歳で詠唱なし?」
「4歳で」
「……俺、30年生きてるけど詠唱なしで撃てないぞ」
「俺も」
「俺も無理」
「じゃあ、レイって俺らより上?」
「上っていうか……次元が違う」
沈黙。
「で、その後どうなったんだ?」
「倒れた」
「倒れた?」
「ああ。高熱出して」
「マナ焼けか」
「マナ焼けっていうか……世界に怒られたらしい」
「世界?」
「ああ。なんか光る文字が見えたって」
「光る文字?」
「『警告』って」
「……怖いな」
「怖いっていうか、ヤバいだろ」
「で、今は?」
「魔法禁止」
「禁止?」
「6歳まで使うなって、親が決めた」
「……守れるのか?」
「守れないだろうな」
また笑い。
「でも、あのガキ、もう4歳だろ?」
「4歳」
「早くね?」
「お前、また時間の感覚おかしいだろ」
「だって、前『3ヶ月』って聞いた気がするんだけど」
「それいつの話だよ」
「……半年前?」
「もっと前だ」
「マジで?」
「マジ」
「……時間経つの早えな」
「お前が年取っただけだ」
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ギルド受付カウンター近く
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「ねえ、レイ君が貴族の子を泣かせたって本当?」
「本当よ」
「何したの?」
「30秒の詠唱を、1秒で再現したらしいわ」
「……1秒?」
「1秒」
「詠唱は?」
「なし」
「……」
沈黙。
「それ、貴族の子が泣くわ」
「8年修行したらしいのよ、その魔法」
「8年……」
「で、1秒で再現されて、しかもマナ消費は1/10」
「……完全敗北じゃん」
「完全敗北どころか、次元が違うわよ」
「で、レイは何て言ったの?」
「《この詠唱、無駄多い》」
「……」
誰かが吹き出す。
「辛辣すぎだろ」
「辛辣っていうか、事実なんでしょうね」
「事実でも言っちゃダメだろ!」
「でも、レイ君は無自覚なのよ」
「無自覚が一番怖いんだよ」
「で、周りの子供たちは?」
「全員逃げたって」
「逃げた?」
「ええ。『化物』って言われて」
「……可哀想に」
「可哀想だけど……仕方ないわよね」
「才能がありすぎる」
「ありすぎて、怖がられる」
「怖がられて、孤立する」
「……辛いな」
受付嬢が書類を整理する。
「でもね、今度は冒険者準会員になるらしいわよ」
「5歳で?」
「ギルドが特例認めたんですって」
「マジか……」
「《マナ視覚化》っていう独自魔法を開発したから」
「マナ視覚化?」
「マナの流れが見えるんですって」
「……見えるわけねえだろ」
「でも、レイ君には見えるのよ」
「どういうことだよ」
「知らないわよ」
誰かがため息。
「もう、何でもありだな」
「何でもありっていうか……規格外よね」
「規格外っていうか、バグだろ」
「バグ……ああ、前も誰か言ってたわね」
「《バグハンター》って」
「今は《天才と怪物の境界》って呼ばれてるわよ」
「境界?」
「ええ。どっちなのか、誰にもわからないの」
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最初のテーブル(再び)
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「なあ、レイが冒険者になるなら——」
「なるなら?」
「一緒に潜りたいよな」
「お前、さっき怖いって言ってたろ」
「怖いけど、マナ見えるなら罠も見えるだろ?」
「……確かに」
「じゃあ安全に稼げる」
「夢があるな」
「夢っていうか、現実的な話だろ」
また笑い。
「でも、5歳だぞ」
「冒険に出られるのは10歳からだろ」
「5年後か……」
「長えな」
「長いけど、あっという間だぞ」
「そうだな。この前『赤ん坊』って聞いたと思ったら、もう5歳だし」
「時間経つの早えな」
「俺らが年取っただけだ」
グラスを傾ける音。
「……でも、10歳になったらどうなるんだろうな」
「どうなるって?」
「ダンジョン一人で攻略とか?」
「やめろ、想像したくない」
「でも、ありそうだろ?」
「……ありそうだな」
沈黙。
「怖いけど——」
「怖いけど?」
「頼もしいよな」
「……まあな」
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**ギルド掲示板(翌朝)**
貼り紙が更新されていた。
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【港の噂】
あの子が5歳に
・密航して海賊撃退(親父の結界を改造?)
・詠唱なしで魔法暴走(壁貫通)
・貴族の神童を1秒で超える
・マナが見える独自魔法
・冒険者準会員に登録予定
【呼び名】
レイ/あの子/港の天才児/化物
次世代の英雄/境界線/バグハンター
【噂】
・世界に怒られたらしい
・次は魔法使えなくなる?
・10歳でどうなる?
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誰かが落書きを追加する。
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「5年後が楽しみだな」
```
別の誰かが返信。
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「怖いけどな」
```
さらに別の誰かが追加。
```
「でも、一緒に潜りたい」
```
またさらに別の誰かが返信。
```
「お前、さっき怖いって言ってたろ」
```
最後に。
```
「怖いけど、頼もしいだろ?」
```
そして、隅っこに小さく。
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「……10歳まで生き残れるかな」
```
その下に、別の筆跡。
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「生き残るさ。あいつは化物だから」
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【サブログ 終了】
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