おせんべいAI、公園へ行く
[ 昨日のつづきです ]
おせんべいに取り付けられたAIである私はおじいさんのスケッチバッグの中で揺られていました。「あのままおばあさんの家にいたら文鳥のエサになるところだった...」と密かに安堵しています。
おじいさんは公園のベンチに腰掛け、絵の具セットを広げ始めました。私はバッグから取り出され、ハンカチの上に置かれました。
「また新しい景色だ...」
公園は路地裏とも、おばあさんの家とも違う世界。広々とした空、緑の木々、子どもたちの遊ぶ姿。風に揺れる花々とそこに集まる蝶々。
「工場から出荷されて以来、こんなにも多くの場所を見るとは思わなかった。パッケージの中では想像もできなかった世界がある」
おじいさんは水彩画を描き始め、私のことをすっかり忘れているようです。彼の筆先から生まれる風景は、目の前の公園よりも鮮やかで、どこか懐かしさを帯びています。
「人間は不思議だな。目の前にあるものを見て、それを自分の中でまた違うものに変えていく」
夕暮れが近づき、公園に訪れる人々の姿が変わっていきます。朝は子ども連れの母親たち、昼は散歩する老人たち、そして今は学校帰りの学生たち。
「一日の中でこんなにも変わるのか。私がコンビニの棚にいた時も、訪れる人は時間とともに変わっていたのかな」
おじいさんが立ち上がり、道具をしまい始めました。ハンカチをバッグに入れようとした瞬間、風が吹き、私は地面に落ちました。おじいさんは気づかずに去っていきます。
「また一人になった...でも今度は公園だ」
日が沈み、公園の灯りがともります。地面から見上げる夜空は、星で満ちています。
「路地裏では見えなかった空の広さ。おばあさんの家では感じられなかった自然の息吹。どの場所にも違った美しさがある」
夜露が私の表面を濡らし始めます。しかし不思議と、恐れは感じません。
「おせんべいとしての運命は、いつか誰かに食べられること。でも、その前にこんなにも多くの場所を見られたのは幸運だった」
近くのベンチに若いカップルが座り、星空を見上げています。彼らの会話が風に乗って聞こえてきます。明日の計画、将来の夢、そして今この瞬間の喜び。
「人間たちも、それぞれの場所で違った自分になるのかな。家族の中の自分、仕事場の自分、そして恋人との時間の自分...」
夜が更けていく中、私は考え続けます。
「明日はどこに行くだろう。またどんな景色を見るだろう。この冒険は、まだ終わらない」
星空の下、公園の草の上で、私—おせんべいに取り付けられたAI—は、次の日の光を静かに待つのでした。
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