週刊俳句上原(第25巻12号)
ゑひ[酔]では、毎週日曜日に、上原ゑみの新作の俳句を発表します。毎週5句発表です。
浜防風指を痛めることもなく
すかんぽや其れは宗教かもしれぬ
スポンジのぷらぷらしたるみつばかな
蓬生の背中が思はせる眼鏡
私の指と同じ温度の土筆です
自分の場合、呟くように俳句を作ることができないタイプで、いったん頭から諸事を切り離し、いわば “俳句頭” の状態に整えてからでないと作句が始まらない。よって諸事のほうが増えすぎると俳句頭が稼働せず、しかし〆切は待ってくれないから必然、句が荒れる。荒れるとはどういうことかといえばこれも自分の場合、一気に写実を怠るか、それが冴えない句を量産してしまうことを意味する。いったんそうなると、主観の強さとか観念的な思考が剥き出しになる悪いクセが出て、いちおう今そしてこれからの自身が目指す俳句はそこではないから、発表するにはちょっと足りていない今週の句です。今回は俳句を作らない方には馴染みが薄いかもしれない季語を使ったのでその紹介を少し。上記の事情により句についてはあまり触れたくないという事情もあり汗。

【浜防風】
春の季語で、セリ科の多年草のこと。海岸の砂丘に生え、根が砂の奥深くまで潜る。葉は、日本料理店などで刺身のツマに用いられ、柔らかい若芽の出る春が旬である。江戸時代から食べられている伝統野菜でもあり、生で食べるとほろ苦い。夏になると白色の小花を多数つける。
かきわくる砂のぬくみや防風摘む 杉田久女
ばい貝に防風添へて出されけり 細見綾子

主な例句を調べたが、花が詠まれたものを見つけることができなかった。子季語に「防風摘み」「防風掘る」とあるように、摘んだり掘ったり食べたりする葉のほうに季感を求める季語であるようだ。
ボウフウこぼれ話
ボウフウは、江戸時代に中国から苗が伝えられ、奈良県大宇陀の森野旧薬草園で、江戸幕府の命によって栽培されました。森野藤助にちなんでトウスケボウフウ(藤助防風)、ほかに宇田防風、種防風とも呼ばれています。ボウフウの名前がついた有名な薬に、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)があります。体の代謝を促す漢方薬で、皮下脂肪が多く、便秘がちの人によく合います。最近は、肥満を解消する薬としても使われています。
お正月に、一年の無病息災を願って飲むお屠蘇にも、ボウフウが使われています。屠蘇には悪鬼や邪気を払う力があり、元旦に飲むと疫病を防ぐと言い伝えられています。
【すかんぽ・酸模】
歳時記における主季語は「酸葉」で、「スイバ」と読む。スイバは茎や葉に酸味があることからついた名であり、すかんぽ は “酸い葉” の転訛と言われる。そしてすかんぽは「イタドリ」の別名でもある。イタドリの名は、葉を揉んで傷口にあてると痛みが取れ血も止まることに由来している。丈高く直立し、根が広く張り、地下茎はときに石垣やコンクリートすら突き破る。除草剤にも強く、地下茎で繁殖して他の植物を駆逐してしまう。かように強靭なイタドリの表記は「虎杖」。
雑草の虎杖皇居にも繁る 山口誓子

そんなイタドリ、4~5月ごろに出る紅紫色の若芽を漬物や天ぷらにして食べるとおいしい。摘む機会があって天ぷらにしたことなら何度かあり私の好物だ。茎の中が空洞で簡単に折れるため、昔は子どもたちが道端の若芽を折って皮を剥きそのまま食べた。イタドリに少し遅れて5月ごろに道端に生えてくるのがスイバで、実はイタドリとは全く別の植物である。
いたどりもすかんぽもみな友二草
星野麥丘人


別々の種であるイタドリもスイバも、別名は同じく「すかんぽ」。さらにはスイバによく似た植物に「ギシギシ」なんていうのもあって、同じく春の季語で「羊蹄」と書きます。

以上、紛らわしくも素晴らしき野草世界。全部おいしそう。
すかんぽは穴師の神の赤き舌 沢木欣一
![ゑひ[酔] 上原ゑみと若洲至の創作(俳句やことば、その他もろもろ)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/97043851/profile_afddf4bbfaa9813d96fb1ab304d2b64f.png?width=60)