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第52話 表明と保証条項-Representations and Warranties 条項(1)

何のためにあるのかよく分からない「Representations and Warranties (表明と保証)条項」の登場です。

本当のところは買主には分からない

不動産会社が住宅地を取得して開発、販売してみたら、有毒な物質が地下に埋まっていたため、住民に健康被害が生じたら、大変な問題になります(半世紀以上前のことですが、ナイアガラの滝の近くの Love Canal というところで、住民に白血症などが多く発生し、大変な社会、環境問題になった事件がありました。埋め立てられていた有害廃棄物質が原因だったのです)。

あるいは、会社を買収してみたら、不正会計、未払いの税金、買収されたら解除される契約、高額な退職金の約束などがあって、結局大損になったというのではこれまた困ります。

とはいえ、目的の不動産の地下に何があるかや、会社の内部に何が隠されているかなんて、限られた買収監査(’Due Diligence Investigations’)では調べきれません。(☚これがポイント)

表明(表示)って何のことでしょう

英国の法理に、「契約締結前」に、売主が「…があります」とか、「…はありません」とか言ったので、それに信頼して取引をしたが、言った通りではなかったというときには、売主に責任を問うことができるというのがあります。

この「『…である/ではない』と言う」ということを英語で ’represent’ するというのです(名詞は ’representation’)。なるほど辞書の「表明する、『…だ』と述べる」という訳語の意味が分かりますね。

なお法務省の「日本法令外国語訳データベース[1]」では、’representation’ は「表示」と訳されていますが、一般的には「表明」がよく使われます。

後で重要になりますから、「表明」は「契約締結前になされる」ということをよく覚えておいて下さい。(☚これがポイント)

でも契約締結前に言ったことなんて消えてしまいます

そのとおりです。「そう言ったから契約したのに、どうしてくれるんだ!」と歯ぎしりしてみても、「そんなこと言いましたっけ?」ととぼけられたらおしまいです。

どうすれば安心して契約できるでしょうか? そう、記録に残せばよいのです。「契約締結前にこう言った」ということを契約書に書いておけばよいのです。それが「表明条項」なのです。(☚これがポイント)

実例を見てみましょう

実例は大抵どの条項も「表明と保証」の両方になっています。そのわけは次回に説明しますので、ここでは「表明」に注目してください。

資産買収契約
Seller hereby represents and warrants to Buyer as follows: … Seller has … good, complete and legal title to each and all of the Assets, free and clear of any and all Liens. 

概要和訳:
売主は買主に次のように表明、及び保証する:売主は(売却対象の)資産について瑕疵のない権利を有しており、担保等は何もない。

事業の買収契約
Seller hereby represents and warrants to Buyer as of the Agreement Date … as follows: … Seller has made available to Buyer all material, historical sales information related to the gross and net sales of the Product in the Territory...

概要和訳:
売主は契約日において買主に次のように表明、及び保証する:売主は商品のテリトリーにおける売上について重要な情報を提供した…。
 
ローン契約
The Borrower represents and warrants that: …All facilities owned or leased by the Borrower …have been in compliance with all Environmental Laws...

概要和訳:
借主は表明、及び保証する:借主の所有、または借主の賃借りする施設はすべての環境関連法の規定を満たしてきた…。

土地の売買契約
Seller hereby makes the following representations and warranties to Buyer …: there are no leases … to which Seller is a party affecting the Property.

概要和訳:
売主は買主に次のように表明、及び保証する:物件に影響を与えるような賃貸借契約…は存在しない。 

当事者が何か言えば、それはすべて「表明」ということになるのですか?

法的な意義という観点からすれば、そういうわけでもありません。

契約前に相手が言ったことが、事実と異なっていたらそれを ’misrepresentation’ とよびます。英国法上この ’misrepresentation’ が成立するためには、いくつかの要件があります。

まず「表明」は事実についてである必要があります。意見、意図は表明ではありません。「有毒物質は埋まっていない」「不払いの税金はない」というのは事実の問題ですが、「この土地は市場性がある」「会社の成長については私が太鼓判を押す」などというのは事実ではありませんから、その発言は法律にいう representation ではありません。

次に、表明は相手にそれなら契約しよう、と思わせるものであることが原則です。

そして表明を受けた相手方がそれに信頼して契約を締結した、ということも必要です。

misrepresentationの法的性質と効果

次に大事なことは ’misrepresentation’ の法的性質は契約違反ではなく、不法行為だということです。なぜなら「表明」がなされるのは、契約の前だからです。違反しようにも契約はその時点ではまだありません。

そして救済方法として、「結んでしまった契約をなかった状態に戻す」権利が相手方に発生します。英国法下で表明を問題にする1つの大きな意味はここにあります。(☚これがポイント)

なお元に戻す権利の行使には時間的制限などのいくつかの条件があります。また、そのほかに損害賠償の権利もありますが、ここでは立ち入りません。 

契約書に書いてあっても契約違反ではないのですか?

いい着眼点です。これについては次回に説明しましょう。


[1] https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja

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