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第45話 General Terms and Conditions-交渉の技法(3)

小さな変更、大きな効果

条文の交渉をしているときに、自分の望むような大幅な変更は受け入れられなくても、1語か数語の追加なら検討してもらえるかもしれません。そしてその数語が、規定の方向性を逆転させるまでは行かなくても、何か起こったときに「筋の通った異議を唱えることができる手がかり」となれば、それはそれなりの成果です。

次の規定を見て下さい。 < * > のしるしのところには同じ言葉が入っていました。 

If Tenant is prevented from making < * > use of the Premises for more than 45 consecutive days, Tenant shall be entitled to a < * > abatement of Rent for each consecutive day (after such 45-day period) that Tenant is so prevented from making < * > use of the Premises.
 
和訳:
もし賃借人が物件の使用を、連続して45日を超えて妨げられたら、賃借人は(当該連続的45日の期間を超えて)使用ができなかった1日毎に賃料の減額の権利を有する。

10階建てのオフィスビルの5階に事務所を借りました。あるとき5基ある共用のエレベーターのうち2基が故障して交換する必要ができたため、2ヶ月間ほど使えなくなり、不便を被りました。この規定にもとづいて賃料の減額が要求できるでしょうか。

規定されていないことは望んでも出来ません

答は「」です。なぜなら賃借人は物件を使用することができた、つまり不便ではあっても使用を「妨げられ(is prevented from making use)はしなかった」からです。でも大変な不便を被ったのですから、何かしてもらえないものでしょうか。いいえ、契約書に明文で書いていなければ「」です。

百歩、いや2百歩、譲って「妨げられた」と認められても、減額は賃料のたった1%かもしれません。それでも「減額」です。何も書いていないのですから「たった1%!?」とも言えないのです。

そんなことになっては困るからといって、契約書に「エレベーター1基の不稼働について賃料の3%を減額、但し3基以上使用できないときは20%…」などと書けるわけがありません。「ゴミの収集の中断があったら」どうするのでしょう…、「共益部分が水浸しになったら」どうするのでしょう…と、「不便」の理由は数限りなくあって、そのすべてに対して規定を作るなんて不可能だからです。

挿入された1語の効果

では本件の賃借人はどうしたでしょうか。< * > の部分に ’reasonable’ と入れてくれるよう交渉したのです。和訳を下記しておきましょう。

和訳:
もし賃借人が物件の<合理的な>使用を、続いて45日を超えて妨げられたら、賃借人は(当該継続的45日の期間を超えて)<合理的な>使用ができなかった1日毎に賃料の<合理的な>減額の権利を有する。 

これで立派に交渉の「契約上の権利」を手に入れました。何が「合理的な使用」が出来なかった事態にあたるか、「何%」の減額が要求できるかは分かりません。しかし原文にはなかった権利があります。しかも「合理的な水準」を要求する手掛かりがあるのです。

このように形容詞や副詞ひとつでも効果を変えることが可能なのです。

この規定の中に、他にも注目すべき語がありますか?

実はこの規定にはもうひとつそのような手がかりが埋め込まれています。それは「継続的consecutive)」です。この語があることによって、使用不能が45日「継続」しなければこの条項の適用はないことになります。40日間使えなかった後に、数日間運転されたが、また30日間使えなくなってもダメなのです。もちろんこれは作成者(賃貸人)の法務担当の工夫です。

次回ではもう少し例を紹介しましょう。

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