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第44話 General Terms and Conditions-交渉の技法(2)

一般条項に限ったことではありませんが、契約書の交渉ではドラフトを提示した側が圧倒的に有利な立場に立ちます。その優位性をどうして突き崩していくかがポイントです。

取引には適用がない規定は削除を要求する

売買契約の一般条項に ’Withholding’ と題して、次のような条項がありました。

The Buyer will make such deductions and withhold such amounts from each payment to be made to the Seller as may be required from time to time by law, governmental regulation or order.
和訳:
買主は法、又は政府規則、若しくは命令によって適宜課されるであろう控除はこれを行い、売主に支払われるべき金額からこれを差し引くことができる。

税金を源泉徴収すべき場合に支払金額から控除をすることは、ローン契約(金利から控除)、ライセンス契約(ライセンス料から控除)などにはあることです。しかし売買代金についてはまずありません。

そこで「この条項は適用がないので、削除して下さい」と要求します。相手は「適用されることがないならあっても差し障りないでしょう」とか、「一般条項は削除等お受けできないことになっているのですが」などと言うかもしれません。いずれも答になっていません。

最終的にこの条項のために取引全体をフイにする必要は全くありませんが、正しいことなので、これは言いましょう。(☚これがポイント)

相手方ドラフトの実質は受け入れる

相手案に対して、内容的に大きく変わらない「対案」を提示するのは得策とは言えません。

 次の2つの不可抗力条項の実例をみて下さい。 

<相手方の書式>
If and to the extent that the performance by a Party (an “Affected Party”) of any of its obligations under this Agreement is delayed by a Force Majeure Event and such delay could not have been prevented by reasonable precautions by the Affected Party, the Affected Party shall be excused for as long as such Force Majeure Event continues.

和訳:
いずれかの当事者(「影響を受けた当事者」)の本契約上の義務の履行が、不可抗力事由によって遅延した場合であって、当該遅延が影響を受けた当事者の合理的な予防によっては回避することができなかったであろうときは、影響を受けた当事者は当該不可抗力事由が継続する限り免責される。

<対案>
A delay in or failure of performance of each party hereto shall not constitute default under this Agreement nor give rise to any claim for damages if any to the extent such delay or failure is caused by force majeure, which means and includes …
 
和訳:
当事者による履行の遅延、又は不履行は、当該遅延、又は不履行が不可抗力(以下のような事由)によるものであるとき、その限りにおいて、本契約の下における不履行とはならず、また、もしあればであるが、損害の賠償請求の根拠とはならない。 

書き方は違うし、細かく比較すれば内容も異なります。でも対案を出して長い時間をかけて交渉する値打ちがあるでしょうか。「万が一のときは免責される」のなら、相手の考え方に異議を唱えることは非生産的です。両方の当事者に適用される不可抗力条項があるだけで十分ではないでしょうか。

ものごとには2つ以上の見方、言い方があるものです。ついでに言えばこのことは「形式」や「書き様」にも当てはまります。人にはそれぞれの好み、こだわりがあります。

パラグラフの区切り方段下げのデザインフォントの選択英国綴りか米国綴りかといった、どちらかというと形に関することもあります。また解除条項で「下記の場合は契約を解除できる」と書いて、まず解除権の存在を書くか(例1)、「これこれの場合は」と先に状況を示して、その後に「解除できる」と書くか(例2)といった、筋の立て様にも個性が出ます。なお和訳しても差がよく分からないので、例に訳は付けませんでした。 

例1 
Seaton may terminate this Agreement immediately upon written notice to the Company if: (i) the Company fails to pay any amounts due to Seaton when due ...
  
例2
If an Event of Default occurs and is continuing, the non-defaulting Party may terminate this Agreement upon written notice to the defaulting Party.

しかし答が同じなら、そのようなことについては何も言わない方が交渉はスムーズに進みますし、不利益もありません。(☚これがポイント)

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