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第54話 分離可能-Severability 条項

今回は「分離可能条項」を取り上げます。英文ではSeverability、Severance、Separability といったタイトルが付いています。

「何をせよ」というのでしょうか

言葉の意味からはじめましょう。’severability’、’severance’ の中にある ‘sever’ という動詞は「切り離す」「切り分ける」という意味です。 ’separability’ は ’separate’ からきています。
 
いずれも何かを何かから「切り離す」「分離する」わけです。

切り離す?

実例を見てみましょう。

The provisions of this Agreement are severable …

「本契約の各条項は分離することができる」とあります。一つひとつの条項は契約書全体の不可欠な一部というわけではなく、切り離すことができるというのです。
 
それぞれの契約条項に含まれた事項(約束ごと)は、個別のものだとみるのです。三角形のへんや、家の大黒柱のように全体の不可欠な部分ではないというわけです。もしそうだとすると、どの条項1つ欠けても契約書が成り立たなくなりますが、そうではないというのです。これが前提です。

どんな事態を想定しているのでしょう

この規定はどんな出来事が起こったときに適用するかというと:

 If any provision of this Agreement is held invalid or unenforceable … 

いずれかの条項が無効(’invalid’)だとか、裁判に訴えて強行することができない(’unenforceable’)ということになったときに発動するのです。「条項が」といっていますが、もちろんある条項の「一部が」でもかまいません。

それでどうするのですか?

そうなったら、そんなやっかいな条項はなかったことにして、分離し、捨ててしまおうというのです。

… that provision shall be deemed to be deleted from this Agreement 

「当該条項はないものとする」というわけです。欠くべからざる一部ではないから、そんな乱暴なことができるのです。
 
そして残りの部分はどうするかというと:

… this Agreement will continue in full force and effect without said provision

 … the remaining provisions shall remain in full force and effect

ということです。つまり「残存部分だけで行く」わけです。ほかにこんな言い方もあります。

… the remainder of this AGREEMENT shall not be affected

残余の部分はいささかも影響を受けないものとする」といったところです。 

… this Agreement shall be carried out as if any such invalid or unenforceable provision were not contained herein 

これは「そんな条項はなかった」ことにして、契約の履行を続けようというのですが、何だかせっかくの条項にかわいそうな書き方ですね。

でも切り捨てられた部分に大事なことが書いてあったら、困りませんか?

そうです、そういうことまで考える人もちゃんといます。

… such provision shall be reformed, if possible, to the extent necessary to render it legal, valid and enforceable, or otherwise deleted

「当該条項は、可能であれば、合法的、有効、かつ強行可能なように、必要な範囲で修正して続ける」という趣旨です。涙ぐましいですね。
 
ほんの寄り道ですが、’reform’ は日本では「リフォームする」として家の「改装をする」という意味で使われていますが、’reform’ は「(社会を)改革する」「(人を)矯正する」ときに使います。上例では非合法な規定を「正して」、合法的なものにしよう、ということです。「家、部屋などを改装する」というときには ’refurbish’、’renovate’、’remodel’ といった言葉を使います。
 
元に戻りますが、もし「矯正」できないなら(’otherwise’ は「可能でないならば」ということを意味します)「切り捨て」てもやむを得ないとあります。

ほかに対処方法はないのでしょうか?

そうですね。簡単にあきらめずに、何とかそんな状況を打開しようと、こんな努力をする人もいます。

… the Parties shall use their respective reasonable endeavours to procure that any such provision is replaced by a provision which is valid and enforceable, and which gives effect to the spirit and intent of this Agreement

「当事者はそのような条項が、有効、かつ実行可能で、本契約の意図にかなった条項に置き換えられるべく、各々合理的努力をするものとする」ということです。うまくいくといいのですが…。

'Supervening Illegality' というタイトルもあります

動詞  ’supervene’ は「思いがけずに起こって、現状に強い影響を与える」「状態を変える」といった意味合いですから、これは「契約履行中つまり締結後に、ある条項が違法ということになった場合」を示します。
 
対応策は上のいくつかの例と同じです。

どんな条項でもこの規定の対象になるのでしょうか?

そういう訳にはいきません。契約の本旨に関わる部分が違法になったら、切り離すも何もないでしょう。トカゲは、シッポを切り離しても、生き残れますが、頭を失ったのでは一巻の終わりです。
 
代理店契約の中に「代理店は会社の指定する価格で商品を販売しなければならない」という条項があったとします。これは再販売価格の指定として、認められない国が多いようです。そのようなときに代理店契約全部を否定することなく、この条項だけを修正して、たとえば「推奨販売価格」「参考市場価格」などと入れ替えて契約を救うことは可能でしょう。
 
しかし売買契約で売り買いすべきものが、ワシントン条約の改正によって、国際取引が認められないということになったら、それをほかの物と入れ替えて契約を温存する、などということは考えられません。
 
とにかく、こんな条項のお世話にならなくてもいいように、あらかじめ調べておくべきですが、万が一の場合にそなえてという一般規定の1つです。

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