見出し画像

知的退行時代①:高齢者を狙う悪徳商法

今回の記事では、中国で話題となっている「知的退行時代」という概念と、それに関連した社会問題を取り上げます。

知的退行時代とは

この言葉は2025年初頭に注目を集めました。

シンガポールの学者・鄭永年が
「中国は近く、国民知的退行の時代(全民弱智时代)に入るかもしれない」
という見解を示したとされ、ネットで大きな反響を生んだからです。

鄭永年は、シンガポール国立大学東アジア研究所の元所長。現在も活発に発言を続ける著名な研究者です。

なお、この発言が本当に氏によるものかについては諸説あり、一部メディアは否定しています。しかし、この知的退行という言葉が象徴する問題意識そのものは、中国で広く共有されることとなりました。

ショートムービーが変えた知識の概念

鄭氏の主張によれば、ショートムービーの普及により、人々の知識取得の仕組みそのものが大きく変わりました。インターネット、特にショートムービーでは「知識を創る時代」から「知識を売る時代」へ移ったといいます。

アクセス数や金銭が知識の価値基準となることで、有害情報や偽知識が主流化する危険性が高まったのです。

従来の知識とは、まず情報を受け取り、それを自分の中で再解釈し、初めて「自分の知識」として定着するという流れです。情報は理解の入り口にすぎず、本来の意味では思考の材料です。

しかしショートムービーの時代になると、このプロセスが変質します。瞬時に流れる情報は切り抜いたネタとして消費され、理解・再解釈という処理が不可能になります。

さらに、ショートムービーのアルゴリズムはユーザーの嗜好を学習し、興味に合う動画を途切れなく供給します。その結果、多くの利用者がフィルターバブル(自分に都合の良い情報だけが集まる環境)に閉じ込められます。

鄭氏は、これにより

  • 多様な意見に触れる機会が減少

  • 誤った心理・思想・価値観が強化

  • 世界への理解が極端に偏る

といった現象が生まれると指摘しています。

氏が指摘した知的退行は、すでに目に見える形で社会に悪影響を与えています。その代表的な例がショートムービーを悪用した悪徳商法の蔓延です。中国では今、これが深刻な社会問題となっています。

ここから先は

3,458字 / 11画像
この記事のみ ¥ 300

ニュースでは見えない、もうひとつの中国を解説するシリーズです。中国社会のリアルを継続的に追いたい方におすすめします。

過去に投稿したバックナンバーが全て読み放題になります。現代中国に生きる人々の風景から見えてくる社会を分析しています。「中国経済のいま」「若…

チップのご検討をいただき、ありがとうございます。 いただいたチップは全て記事を書くための費用として使わせていただきます。