深夜2時の給湯室 ~七海が溶ける午前~(前編)
【注意】
時間停止・静止描写を含む不思議系フィクションです。
18歳未満の方や苦手な方は閲覧をお控えください。
林七海の静止のエピソードを公開中↓

このまま時間が止まれば
広告代理店で働く林七海、23歳。
肩までの黒髪ボブが少し乱れ、大きな瞳に疲労の色がにじむ。
丸みのある愛らしい顔立ちは、まだ新社会人のあどけなさを残していたが、連日の残業で心身ともに限界だった。

重い足取り
午前2時を回った深夜、デスクのモニターの明かりだけがオフィスを照らす中、七海は重い足取りで給湯室へ向かった。
紺のブレザーの下、ブラウスは皺が寄り、ミニタイトスカートが腿に張り付くように感じる。

受けとる優しい温もり
給湯室の薄暗い明かりの下、誰もいないはずの場所に一人の女性が立っていた。
30代半ばくらいの、穏やかな笑顔の女性だ。
「お疲れ様。こんな時間まで、本当に頑張ってるのね」
女性は湯気の立つマグカップを差し出した。
「特別なお茶よ。少しでも疲れが取れるように」
七海は断る気力もなく、受け取って一口飲んだ。
温かい液体が喉を通る瞬間、胸の奥から不思議な熱が広がった。
「……ありがとうございます」
最初は心地よい温もりだった。
しかし数秒後、指先が重くなり、マグカップを持つ手がぴたりと止まった。

思考は凍りつく
足が床に根を張ったように動かなくなり、全身の筋肉が内側から溶けるような感覚のあと、逆に固く締め付けられていく。
(動けない……どうして? この人、誰……?)
思考は鮮明なのに、体は言うことを聞かない。
七海の大きな瞳から徐々に光が失われ、虚ろなガラス玉のような輝きに変わり始めた。
頰の柔らかさが引いていき、肌が陶器のような滑らかな艶を帯びる。
紺のブレザーとブラウスに包まれた細い体が、完璧に静止した。
恐怖と、どこか奇妙な解放感が混じり合う。
常に「動かなければならない」プレッシャーから、初めて完全に自由になったような——そんな甘い感覚。

完璧なマネキンへと変わる瞬間
女性は微笑み、七海の頰にそっと触れた。
「綺麗に固まってきたわね……もう少しで、完璧なマネキンよ」
七海の意識だけが、深夜の給湯室に響いていた。
(後編に続く。)
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