短篇小説【似てない二人】
1
目を覚ました時、摺りガラスの向こうに微かな灯りが見えて、朋子は昨日から実家に帰ってきていた事を思い出した。
変な体勢で眠ってしまっていたのか背中に鈍い痛みがある。
ゆっくりと起き上がってスマホの画面を見るとまだ午前四時を過ぎた所だった。
そっとカーテンを除けて小さな窓を覗き込むと、自分の疲れた顔が浮かび上がってきた。
今年の夏には五十歳になる。
目元が弛み、顎の下にも大分余計な肉が付いてきていた。
ここ数か月間の色んな手続きの煩わしさと、重ねてきた様々な会話の息苦しさとが、おくびの様に喉元までせり上がってきた。
二十五年連れ添った夫との離婚。
十五年勤めた会社からの退職。
二十二歳の一人娘の結婚と出産。
そして東京から静岡の実家への転居。
朋子の人生は雪崩の様な勢いで変化を見せていた。
思っていた様な老後とはどうも程遠い道を歩んでいる様だった。
今の所目立った身体の不具合は無かったが、不安の類なら売る程あった。
溜息で窓ガラスが曇る。
外側から内側へと潮が引く様にその曇って白くなった範囲が狭まっていくのを呆けた顔で見ている自分の顔が、何だか可笑しくなって声を出して笑ってしまった。
そうしてまだ自分には確かな余力があるのだと、少し心を強くし膝を一つ景気付けに叩いてみてから、軋む廊下の突き当りの便所までスリッパを摺りながら朋子は歩いた。
その廊下を挟んだ真向いの台所では、この家の主である悟が裸電球の灯りの下で一人朝餉を掻っ込んでいた。
大振りの茶碗に生卵を落した白飯。
掛川の新茶が隣で湯気を立て、申し訳程度の胡瓜の柴漬けが小鉢に乗っていた。
悟も今年の夏に五十歳を迎える。
短く刈り込まれた髪の毛、酷い猫背、腹の肉は不摂生な生活の証で、長い一人暮らしに馴れ過ぎた所為で最後に笑った記憶も朧気だった。
元来無口で不愛想な男であったので、父親の代から数えて創業六十年の老舗のパン屋の評判も今一つであった。
少し離れた所の大型のスーパーでは、お洒落なパン屋が近所の若い主婦などの人気を集めている。
飯を忙しく掻っ込み過ぎて咽てしまい、悟の口から飯粒が勢いよくテーブルに散らばった。
便所から水を流す音が聞こえてきて、それで昨日から朋子がこの家に居る事を思い出した。
会わない時は五年も十年も会わない期間もあった。
だがそれも当然と言えば当然だったのだろう。
二人は血の繋がりも、今となっては戸籍上の繋がりも無い元兄妹であった。二人が四歳の時にそれぞれの親同士が籍を入れ、それで昨日の他人が今日の家族となった。
その後両親が離婚するまでの十六年間をこの三十坪の平屋で共に過ごした。誕生日が三日早かったので悟が兄で朋子が妹。
特に仲が良い訳でも、あからさまに悪かった訳でも無かった元兄妹は、人生の過渡期に確かな老いを感じる年齢になって、奇妙な同居生活をこの日から始める事になったのであった。
2
二度寝して、朋子が再び目を覚ましたのはお昼近くになってからの事であった。
台所のテーブルの上には昨日の売れ残りであろうロールパンが無造作に置かれていた。
これを喰えという事なのだろうと朋子は思った。
冷蔵庫を開けてみると賞味期限切れの牛乳があるのみ。
朋子は構わずそれを手近のコップに注ぎ、立ったままロールパンに噛り付いた。
朋子がこの家を出たのはもう三十年も昔の事。
が、時が止まったかの様に何もかもがあの頃のままに感じられた。
四人掛けのダイニングテーブル。
点きの悪いガス給湯器。
西向きの窓に掛けられた色褪せたブラインドカーテン。
恐ろしいまでにその光景は朋子の記憶そのままであった。
三十年前に二人の両親が離婚した時、兄の悟は東京の大学に通っていた。
朋子は静岡の短大に通っていて、母親と共にこの家を出た。
それから悟の父親が亡くなるまでの二十年間、この家に住んでいたのはその父親一人きりだった。
玄関に続く廊下の途中、薄っぺらいロールカーテン一枚を隔てた先は直接パン屋の店舗になっている。
単調なクラシック音楽の調べがそこから小さく流れてきていた。
悟の父親も無口で不愛想な男だったと朋子はその色褪せたロールカーテンを眺めていて思い出した。
特に仲が良かった訳でも悪かった訳でも無い。
無理に距離を縮める様な努力も互いにしなかった様に思う。
朋子は丁度十年前の今頃の季節に、この家で執り行われた悟の父親の葬式の事をついでに思い出した。
母は結局来なかった。
最後は余り良い関係では無かったのでそれも無理はないと朋子は当時も今でもそう思う。
ここで確かに営まれていた筈の四人の生活の記憶が、年々薄れていく事にももう慣れていた。
そうやって時が確実に何かを押し流していく筈なのに、この家だけが変わらずここに留まっている事がただ不思議に思えただけの事だった。
悟はそんな事考えたりしないだろうと、朋子はロールカーテンの向こうで不愛想な顔を表通りに向けているであろう元兄の事を想像した。
朋子は自分が離婚する事を決めた時、まさか静岡のこの家で暮らす事になろうとは夢にも思わなかった。
何せ今となっては赤の他人の家であるし、三十年も前に縁が切れた場所でもあった。
でも自分の人生の仕切り直しを決断した時に、ふと悟の顔が頭を過った事もまた事実であった。
その理由は分らなかった。
ただ何故かそうする事が正しい事の様に感じた。
久し振りに連絡をしてみると、悟は家に置いてもいいと言ってくれた。
何も余計な事は聞かずに、ただそう言ってくれた。
天気が良いので朋子は近所を歩いてみようと思った。
玄関で買ったばかりの真っ白のスニーカーを履く。
化粧もせず、髪の毛さえ整えていない。
姿見で自分の全身を写してみると、随分と母親に似てきたなと思って少し気分が沈んだが、朋子はまた景気付けに膝を一つ叩き、玄関の引き戸を勢いよく開けた。
陽射しが暖かく、朋子は春の匂いを肺いっぱいに取り込んだ。
3
家から駅の方角に少し歩くと、小さな橋が掛かった川に突き当たる。
朋子は小学生の時、そこでよく知らないおじさんに話し掛けられた事を思い出した。
今思えばあれはホームレスの人で、似合わない女性物のつばの大きな帽子をいつも被っていて、夏でも冬でも深緑色の雨合羽を着ていた。
そのおじさんは朋子を見付けると決まってこう言うのであった。
「お嬢ちゃん、こんにちは。学校かい?いつもありがとうってお父さんに伝えといてな」
それは朋子にとってずっと謎のメッセージであった。
普段から必要な時以外は会話の無い父親にこの件を報告する事は当然無く、いつの日だったか何かの話のついでに悟に話してみた事があった。
すると悟は事も無げに詰まらなそうな顔でこう言ったのだった。
「それは父ちゃんがいつも余ったパンをその人にあげてるからだよ。だから俺にも同じ様にいつも言ってくるんだ」
あの頃から悟は不愛想だったなと朋子は思い出して少し笑った。
今は橋の下にはフェンスが張り巡らせてあって人の気配は無かった。
川沿いの道には三十年前はまだ空地や雑木林などが点在していた記憶があったが、今は寸分の隙間も無く家が立ち並んでいた。
ベビーカーを押す若い女性とすれ違った。
産まれて直ぐに会ったきりの孫の事を朋子は否が応にも思い出した。
離婚を決めた時、娘夫婦が住む千葉のニュータウンに自分も家を探そうかと一瞬頭を過ったが、次の瞬間にはそれは無いな思った。
朋子にはこれからの人生を誰にも頼らずに一人で生きてみたいという気持ちがあった。
幸い銀行員の元夫からの慰謝料で当面の生活には困らないし、その気になれば何でも出来る様な気がしていた。
それが何故こうして静岡の他人の家に転がり込む事になってしまったのか。朋子は自分でも不思議でならなかった。
実の母親にも実の娘にも掛けたくない迷惑を、何故か赤の他人の悟には掛けても構わない様な気がしてしまったのだった。
暫くして少し開けた通りに出ると大きなスーパーが見えてきた。
ここが悟のパン屋のライバル店かと朋子は思い、偵察がてら入ってみる事にした。
午後の早い時間であったが店内は既に買い物客で込み合っていた。
入り口近くのスペースに確かに小洒落た雰囲気のパン屋があった。
コーヒーをサービスで出すイートインコーナーまで用意されている。
辺り一帯をバターの香りが包み込み、焼き立てのクロワッサンや色とりどりの総菜パンが目を引く。
こりゃ一分の勝ち目も無いなと朋子は思った。
昨日の夜、悟はこの店の客層は自分の店のそれとは違うからと嘯いていたが、吹けば飛ぶようなパン屋の店主の強がりに、よりリアルな悲壮感が増すだけだと朋子は思った。
暇を持て余していた朋子はついでにスーパーの中を物色し始めた。
若い夫婦の多い地域なのか、割と安価な食材が目立つ店であった。
産地直送朝もぎ野菜のコーナーには、スイカ程もある大きな春キャベツが積み上げられていた。
その鮮やかな黄緑色の玉を見ていると、朋子の脳内に遠い日の記憶が鮮明に蘇ってきた。
あまり料理の得意でなかった母の手料理を、食べ盛りの中学生だった悟は何も言わず黙々と食べていた。
継子の不愛想さには既に慣れていた母も、特に悟の好みに合わせてやろうという様な気持ちは無かったのかも知れない。
そんなある日、朋子が学校の調理実習で学んだロールキャベツを家で再現して食卓に並べた事があった。
四人掛けのダイニングテーブルの真向いの席で、いつもの様に詰まらなそうに皿に盛られたロールキャベツを箸で摘まみ口に頬張った悟の顔に、みるみる抑えきれない笑みが広がっていくのを朋子は見逃さなかった。
心の中でやったと叫んでいた。
今思えばどうして悟はあんなにいつも詰まらなそうにしていたのだろうか。感情表現というものをどこかに落としてきてしまった様な人間だった。
朋子は暫し産地直送朝もぎ野菜のコーナーの前に立ち尽くし、おもむろに一番大きな春キャベツを掴み取るとそのまま大勢が行列を為しているレジに突進していったのだった。
4
悟は朋子に関して、今でも忘れられない記憶が一つあった。
年の同じ朋子と、同じ小学校の同じクラスに入った時に、担任だった若い女性教師が何気なく放った一言だった。
「悟くんと朋子ちゃん、双子なのに全然似てないねぇ」
確かに同じ年齢の兄妹という事であれば自然双子という事に決まる。
だが互いに連れ子同士の即席兄妹である事に、その若い女性教師の考えは及ばなかったようだ。
悟は何故かそう言われた事が酷く恥ずかしい事に感じてしまって、何も言わずに教室を飛び出してそのまま全速力で家まで帰ってしまった。
自分でもどうしてあんなに恥ずかしかったのか分らない。
ただその頃から他人に対して妙な防衛意識を抱く様になってしまった。
朋子の母親は家にいる時も真っ赤な洋服を着ている様な人で、悟はその事も内心恥ずかしく思っていた。
一緒に買い物に連れて行かれそうになったりすると、無言でその場から逃げたりした。
朋子はそんな悟をいつも奇異と好奇心の目で見ていたのだった。
悟が客足の途絶えた店のカウンターの中から表通りをぼーっと眺めていると、大きなビニール袋を手に持った朋子が勢い良く歩いて来るのが目に入った。自分の着古したパーカーを勝手に朋子が着ていると、悟はそんなどうでも良い事を小さく独り言ちた。
悟は元来無口であったが、その分独り言が異様に多い男であった。
結婚八年目で嫁が去っていったのも、その独り言が原因だったのでは無いかと朋子は遠慮無く悟に言った事があった。
無口であるのに理由など無く、自然発生的な独り言を止める術も無いと、また心の中で悟は独り言ちるのであった。
近所に住む独り暮らしの老婆が食パンを一斤買って店を出ていくと、悟はそっと自宅との仕切りのロールカーテンを除けて奥の様子を窺った。
台所の方からまな板を叩く包丁の音や、鍋を勢いよくガスコンロの五徳に叩き付ける豪快な音などが響いてきた。
気にはなるが店を離れる訳にもいかず、悟はじりじりとした気持ちになった。
一週間程前の夜、唐突に朋子から電話があり暫く家に置いて欲しいと言われた時、悟はどうしてなのか特段の拘りも無く、気付けば二つ返事している自分に自分でも驚いてしまった。
何故かこうなる予感が、心のどこかにあったという事に自分でもその時初めて気が付いた。
三十年も前に縁が切れた元妹と、再び一つ屋根の下で生活を共にする事になろうとは。
その事の不自然さと歪さには流石の悟も何も思わない訳では無かったのだが、朋子を受け入れる事が自分にとっても何か意味のある事なのでは無いかという、直感の様なものがあった。
それは独り言ちようにも言葉にならない感情であった。
その晩はダイニングテーブルに二人相向かい、朋子の作ったロールキャベツを食べた。
どこか懐かしい味に悟は記憶の底を探るが、遠い日の朋子の調理実習の成果にまでは辿り着かなかった。
匙を口に運ぶ度に小さくうん、うんと頷きながら食べている悟を、朋子は目の端でちらちら盗み見ていた。
台所の壁掛け時計は二人の沈黙の隙間を埋めるのに懸命に秒針をチクタク響かせる。
どうしてだとか、いつまでだとか、あって至極当然の質問が悟から朋子へと投下される気配は、結局いつまでも訪れなかった。
5
銀行員の元夫は際限なく捲し立てる様に自分の話だけをする男であったと、朋子はふと思い出した。
今となってはどこに魅力を感じていたのか自分でも分からない。
朋子が二十五年の夫婦生活で唯一学んだ事は、人と人とはどこまでも平行線を辿るという事実であった。
自分の素地は確かにこの家で育まれた。
朋子は自分にあてがわれた部屋の煤けた壁の一点を見つめ、そんな事を取り留めも無く考えていた。
四歳から二十歳までの多感な時期を、仮設家族が奏でる不協和音をBGMに自我を形成してきたのだ。
自分も相当に捻くれた人間に成長したと自負していたが、悟の得体の知れなさは更に磨きが掛かっている様に朋子には思えた。
今日も早朝から悟は独り工房に籠ってパンを焼き続けている。
話し掛けても二、三言ぼそぼそと答えるだけの会話。
小さい頃と何ら変わっていなかった。
店の扉には真鍮の呼び鈴がぶら下がっているので、客の出入りの度に部屋にいる朋子の所までその音が聞こえてきた。
心底暇過ぎて、朋子はここ一時間の呼び鈴の音を数えていた。
計六回の心細い鈴の音。
朋子は今日も台所のダイニングテーブルの上にそっと置かれていたロールパンを二つ齧った。
バターと小麦の香りが口に広がり、悟の物言わぬ心の声がその小さな塊から漏れ出てくる様に感じた。
それは素朴で飾り気が無く、それでいて豊かで正しい味の様に朋子には思えた。
外はこの日も嫌味な位に晴れ渡っていた。
くさくさした気持ちをどうにかしようと、朋子はまた膝を一つ叩いて部屋を飛び出した。
少し歩き小さな橋の欄干から川面を泳ぐ小魚の群を見た。
透き通った水の底には涼し気に水草が揺れている。
五十歳も間近に迫る中年の女が用も無く日中からふらふらとしている姿は、さぞ傍目に異様であろうと朋子は自嘲気味にほくそ笑んだ。
構うもんか。
こうなったらもう怖い物など何も無い。
遠い昔、母親に手を引かれこの橋を渡って悟の家に初めて連れてこられた日の事を朋子は今でもはっきりと覚えていた。
夏の盛り、樹上から降り注ぐけたたましい蝉の声。
首の後ろを玉の様な汗が頻りに流れ落ちたのがまるで昨日の事の様だった。
つくづく時の流れの早さは冗談の様だと朋子は思った。
その日初めて見た悟は半ズボンに野球帽という恰好で、居間の端で畳のささくれた所を指で懸命にほじくっていた。
誰とも目を合わせず、少しも笑わない子供だった。
朋子にとって悟は、兄というよりかは弟の様に思っていた。
そもそも年は一緒なので女の子の方がませていて大人っぽいものなのかも知れないが、悟にはどこか不安定な危さの様なものがあると朋子は感じていたのだった。
それは悟が無口な所からくる不安なのだろうか。
それとも無表情で愛想が無い所が原因だったのだろうか。
こうしてまた毎日顔を合わせる様になって、改めて朋子は悟について知らない事ばかりだった事に気が付いた。
東京で働いていた筈の悟が何故今ここでパン屋を継いでいるのか。
どうして彼の妻は出て行ってしまったのか。
何故ずっと独りで生きているのだろうか。
本当に謎だらけの男だと朋子は思った。
川沿いの住宅地は静まり返っていた。
散歩のついでにまたスーパーで買い物をした。
今自分に出来る事は取り敢えず夕餉を用意する事位だろうと朋子は頭の中で独り言ちた。
6
畳敷きの居間には申し訳程度の縁側があり、その先には猫の額程のささやかな庭があった。
隣の民家との境の塀際には早咲きのつつじの白と赤の花弁が溢れていて、悟はそれを縁側から眺めながら煙草の煙を真っ直ぐ立ち昇らせていた。
パン屋の週一度の定休日、悟が昼近くになってやっと寝床から身を剥がした時分には既に朋子はどこかに出掛けている様子だった。
突然の元妹との同居で最初は不安な気持ちもあったものの、僅か数日で既にそれにも慣れてしまったのか、悟の心は妙に凪いでいてそれを自分でも不思議に思うのであった。
血の繋がりは無くとも物心付いた時からずっと傍にいた人間なので、何を考えているのかはその表情や仕草で大体分る。
不愛想で他人に関心の無い様によく思われる悟であったが、実際は神経質で繊細な性格の持ち主であった。
周りの空気を敏感に察知し、それに必死に対処しようと思うのであったが、どうもそこから先が不器用に出来ていていつも裏目に出てしまう。
幼少時代から抱えていた悟の人知れぬ悩みは、そんな対人関係の不具合が大半を占めていたのであった。
父親がもう余り長くないと知った時、既に離婚していた悟は新卒からずっと続けていたエンジニアの仕事をあっさりと辞め実家に帰ってきた。
休業状態のパン工房で一から独学でパン作りを学んだ。
小麦粉の選定、配合、発酵時間、成型方法、オーブンの扱い方。
見様見真似で半年間失業保険で食い繋ぎ、漸く開業準備に着手したタイミングで今度は父親が死んだ。
悟は特段パンが好きだった訳でも、父親の為に店を継いでやろうという気持ちがあった訳でも無かった。
ただそこに住む家があり、パン屋をやる環境が整っていただけの事であった。
パン屋の再開を父親に報告出来なかった事に付いて特別な感慨も無かった。それからは細々と営業を続け、気が付いたらあっと言う間に十年が経っていた。
思えば客や出入り業者以外とは会話らしい会話もしなくなっていた。
一体いつからそんな生活をしていたのか、悟にはもう殆ど思い出せなくなっていたのだった。
塀の上を隣の家が飼っている黒猫が通り過ぎていった。
首輪の鈴が乾いた音を響かせる。
自分はこのままここで一人で死んでいくんだと、どこか諦めた様な気持ちがあった。
慣れというものが身体に纏わりついて、段々と何も感じなくなっていった。何かマズいんじゃないかとか、寂しさとか恐ろしさとかが無かった訳ではないのだが、繰り返しの日々はそれさえも麻痺させてしまっていた。
そこへ突如降って涌いたのが朋子の存在だった。
悟はまた煙草に火を点けて大きく煙を吐き出す。
陽射しがもう暑いと感じる様な季節になってきているのにその時初めて気が付いた。
俺は余りにも一人に慣れちまったんだなと、小さく独り言ちる。
勿論誰も何もそれに返してはくれないが、悟は虚空に向かって頻りに頷いた。
そこへまたいつもの如くスーパーの買い物袋を持った朋子が帰ってきた。
縁側に座っている悟に気付いてギョッとしている。
この血の繋がらない、戸籍上の関係も無い女は何を考えてここに居るのだろうかと、悟は細く煙を吐きながら思った。
この家で自分以外の誰かの事を気にするのも、当たり前だが久し振りなんだなと続けて頭の中で独り言ちる。
「悟、あたしこのスーパーで明日から働くから。決めてきた」
サンマートと赤字で書かれたビニール袋を掲げて朋子は言った。
「毎日ぶらぶらしてるのも飽きたしね。何か買い物あったらあたしがついでに買って来るから言ってよ」
そう言い残し朋子はさっさと家に入っていった。
黒猫が悟の足元まできて熱心に毛繕いを始めた。
ふと視線が合ったその名前も知らない黒猫が、まぁ成る様にしか成らないんじゃないかと言っている様な気がして、悟は何とも言えない気持ちで唾を飲み込んだ。
7
想像以上に退屈なレジ打ち業務に既に限界を感じ始めていた朋子は、せめて少しでも苦行から気を逸らす為に客の観察に精を出していた。
こんな小さな町の在り来たりのスーパーにも、実に多種多様な人間が訪れる事に朋子は驚いていた。
彼等彼女等の容姿風体と買っていった物品とを比較して、その生活模様を勝手に想像していく。
白髪の老婆がキッチン鋏を新調していけば人目を忍んだシリアルキラーのストーリーをでっち上げ、作業着姿の中年男性が甘いお菓子を大量に買い込めば不器用な男のラブストーリーを練り上げる。
朋子は幼少の頃から空想の世界に身を置き一人楽しむ術を身に付けていた。自分の家庭が夫の不貞の発覚で壊れそうになった時も、朋子はこの空想の力で難局を凌いで生き抜いた。
何事も成る様にしか成らない、諦観と現実逃避が朋子の長い年月で築き上げた賢い処世術であったのだ。
このまま他人の家に厄介になり続ける訳にも行かない事は重々分かっていたのだが、ここからまたどこか別の場所に動くその時には、何か天啓の様なものが我が身に降り注ぐ筈であると朋子には根拠の無い予感があった。
思えば自分達の親の都合で家族になったり他人になったり、そしてまた同じ様に自分も結婚と離婚を経験し五十歳を目前にして住所不定無職の身に陥る。
中々に波乱万丈であるが、それでも人生は何とか成ってしまう。
これからの先行きもきっと起伏は激しいのだろう。
それでも何故か締め付けられる様な不安や恐怖が無いのは、もしかしたらこの町に悟がずっと居るという事がどこかで自分の足を地に付けていてくれたのかも知れないと、朋子はふと思った。
遠くの親戚よりも近くの他人の真逆、近くの肉親よりも遠くの他人だなと朋子は心の中で独り言ちた。
「赤沢さん、休憩行って下さい、替わりますよ」
背中から復帰したての旧姓で呼ばれ、朋子は即座に反応出来なかった。
名前が変わるってのも不思議なもんだなと、また心で独り言ちる。
スーパーの搬入口にある喫煙所の丸イスに座って、ぼーっと向かいの公園の深緑を眺める。
何だか人生の小休止の様だと朋子は思った。
夫への無償奉仕も終わり、子育ても完了し、孫の世話からも逃亡。
何者でも無くなった自分へのインターミッション。
昔映画館で観た中国の長い映画を思い出す。
幕間のトイレタイム。
今は丁度そんな時間なんじゃないかと、朋子は一人で少し微笑んだ。
朝の内に買っておいた人気パン屋のクロワッサンを一口齧る。
うん、これなら悟のロールパンにも勝機はあるなと朋子は思った。
長い人生の今は何合目辺りなのだろうか。
景色はそんなに良く無いが、まだ登頂への気力が尽きた訳でも無い。
子供の頃の夢の様な大それた野望はよもや無いが、私だってまだ捨てたものでは無いと朋子は一人鼻を膨らます。
公園で戯れる子供達。
その傍らで立ったままスマホに夢中な母親らしき女達。
頻りに何か頷きながら目を細めているベンチの老人達。
世界は今日も平和な様だった。
何も起きなくても良いと、朋子は思った。
特別な事は何も。
生き物のサイクルは人を笑わせる為にあるんじゃない。
ただそこにある無限性に名前や価値を勝手に付随させるのは人間の悪癖だと、朋子は急に柄にも無く感傷的な事を考える。
そしてまた一人で少し笑ってから退屈なレジ打ちへと戻っていったのだった。
8
店の前の通りを、先程から何度も同じ背恰好の女が往ったり来たりを繰り返していた。
季節違いのベージュのトレンチコートが抜群に目立ってしまっている。
流石に鈍感な悟も気になっていた。
変装の積もりなのだろうか、ティアドロップ型のサングラスが余りに不自然で、意を決した様に勢い込んで店に入って来た時には思わず悟も身構えてしまった。
女は店内を一通り見廻すと、焼き立てだったクロワッサンを無造作にトレイに乗せて一直線にレジの悟の所に近付いてきた。
「いらっしゃいませ」
悟は手慣れた手付きでクロワッサンを透明なビニール袋に入れ、更にそれを紙袋に入れた。
その一挙一動を女はずっと凝視している。
「ありがとうございます」
悟が紙袋を手渡そうとすると、女はお金の変わりに一枚のスナップ写真をすっと差し出してきた。
悟はその写真を一瞥し、そこに写っているのが朋子である事を確認した。
「この人を知ってますよね」
女は短くそう言った。
知ってますかでは無く、知ってますよねと。
悟は女の様子を改めて窺った。
その恰好は怪しい事この上無かったが、年の頃は二十代前半といった所、髪が長く透き通る様に肌が白かった。
「この人を探しているんです。ここにいますよね。あなたはどういった関係なのですか?」
女は少し興奮気味で悟に詰め寄った。
「えーと、俺はこの人の兄です」
悟は紙袋を所在無く手に持ったままそう答えた。
次に女が継ぐであろう言葉を予見しつつ。
「母に兄妹はいません!本当はどういったご関係なんですか?」
やはり朋子の娘だったと悟は思った。
そして自分の事を朋子が娘に言っていなかった事も何となく予想が付いていた。
変な例えだが、別れた夫婦の様にその後の人生に過去を入り込ませたくない気持ちは悟にも理解出来た。
「あーと、それはちょっと複雑な話で、つまり朋子とは一時的に兄妹だった時期があって、それはもう随分昔の話なんだけど、だから今は確かに兄妹では無いので他人なんだけど、まぁ、とにかく暫くここに置いてくれと頼まれて・・」
口下手の説明下手が懸命に言った所で当然埒が明かないのも明白だった。
女は痺れを切らした様子で掛けていたサングラスを勢い良くレジカウンターに叩き付け、鬼の形相で悟を睨み付け捲し立てた。
「困るんです!今私達は微妙な時期なんで!母に不適切な関係などがあっては非情に困るんです!」
どう言っても自分に誤解を解く術は無いと悟は観念した。
朋子の離婚の事実は聞いていたが、細かい経緯など知る由も無い悟は、他に良い案も浮かばないので店のチラシの裏に急いで朋子の勤めるスーパーまでの道順を地図に書いて女に手渡した。
「朋子は今このスーパーで働いてるから。自分で行って確かめてきて下さい。あなたが思っている様な関係じゃ本当に無いから」
その時、真鍮の呼び鈴が乾いた音を響かせ買い物かごを手に持った中年女性が店に入ってきた。
女は暫く悟の顔を睨み付けたまま静止していたが、意を決した様にスナップ写真と地図を掴み取るとサングラスを掛けて大股で店から出て行った。
その後ろ姿を茫然と見送って、あの親にしてこの子だなと、悟は心で独り言ちる。
まるで十代の頃の朋子を見ている様だと思った。
9
その日の日暮れ時、急な小雨がパラついてきて悟は店を早仕舞いした。
売れ残ったパンを片付けて、翌日の分の仕込みをしていると外は完全に暗闇になっていた。
いつもなら既に仕事から帰ってきている筈の朋子の気配は無かった。
ロールカーテンの向こう側は静まり返っていた。
長く独りの生活に慣れていた筈なのに、胸の奥に重しが置かれた様な疼きを悟はか細く感じていた。
このまま帰ってこないのかも知れないと悟は思った。
粉塗れの両腕に冷たい蛍光灯の光が降り注ぐ。
こうして見ると節くれ立った手の甲が父親そっくりだと悟は思った。
その時悟の頭に、忘れようとしても忘れる事の出来ない記憶が蘇ってきた。それはもう二十年以上も前、妻が息子を連れて当時住んでいた東京のマンションから出て行った日の事。
何度思い出しても、悟にはあの時どうするべきだったのかが分らなかった。自分の気持ちを誤魔化す事がどうしても出来なかった。
それは息子が交通事故に遭って、救急車で病院に運ばれたという報せから始まった。
緊急の手術で輸血が必要になった。
そこで看護師に息子の血液型を聞かれて答えたが、念の為に確認した結果、息子の血液型は悟の知っていたものでは無かった。
悟は混乱したが、とにかく手術は無事終わって息子は一命を取り留めた。
そして残ったのは重いしこりの様な疑念だった。
息子のそれが、自分と妻との血液型の組み合わせ上あり得ないものであった事は直ぐに分った。
となれば考え得る可能性はそう多くは無い。
悟は妻の不貞を赦す事が出来なかった。
そしてそれを隠し通し偽りの家族に加えられていた事にも。
それまでの現実が音を立てて崩れ去った様に感じた。
息子に対する当たり前だったはずの愛情が、手酷く裏切られた様な気持ちになってしまった。
そうして結局、家族は崩壊し離れ離れになった。
最も傷付いていた筈の息子に、悟は何も声を掛けてやれなかった。
その事をずっと後悔してきた。
親の都合に振り回される事が、どんな気持ちにさせられるかを一番よく知っていた筈なのに。
血の繋がりは悟にとって、逃れようにも纏わりついてくる呪縛のようなものだった。
血の繋がりのない妹と共に育ち、血が繋がっていると信じていた息子を手放した。
家族という言葉が、何か得体の知れない枷となって悟を縛り続けてきた。
そしてそこから離れ無関係でいようとしてきた人生に、また家族という魔物が入り込んできたのだった。
朋子を受け入れる事で、何かが変わるのでは無いかという淡い期待。
根拠の無い直感。
しかしそれがまた自分の世界を足元から崩れさせてしまうのではないかという恐怖が、悟の頭から離れなかった。
その時、玄関の扉を開ける音が不意に聞こえてきた。
軋む廊下をスリッパを摺りながら近付いてくる足音。
カサカサと聞こえるのはきっとスーパーのビニール袋だろうと悟は思った。
「急に雨降ってきちゃって、濡れちゃったよ」
朋子はそう言いながらダイニングテーブルにビニール袋を置くと、悟の脇を通り過ぎて縁側に渡された洗濯紐にぶら下がっているタオルで髪を拭き始めた。
カーテンを引いていなかったので、庭のつつじが闇に浮かび上がっている様に見えた。
テーブルの袋からはジャガイモが二つこぼれて転がっている。
「優美が・・娘がここに来たんだってね。あの子悟の事を私の新しいパートナーだと勘違いしてたんだって。色々と話したら取り敢えず納得したみたいで帰っていったよ」
朋子の声には疲れが滲んでいた。
そしてそれは何時になく低い響きで悟の耳に届いた。
きっと二人の会話の中には穏やかでは無い事も含まれていたのだろうと想像出来た。
悟は暗い庭を見つめたまま、煙草に火を点けて深く煙を吐き出した。
昼間、朋子の娘に言われた言葉を思い出す。
確かに自分と朋子とは不適切な関係では無いが、だからと言って適切であるとも言い難いと悟は心の中で独り言ちた。
「カレー作るから。食べるでしょ?ちょっと着替えてくるね」
朋子はそう言うと隣の部屋に消えていった。
雨音が庭の土を打つ音だけが、やけに大きく部屋の中まで響いてきた。
サーという水が土に染み込んでいく音。
石や木や草に水滴がポツポツと落ちる音。
雨どいの金属を打つ高い音。
風で網戸が揺れる音。
何か言いたい事があった筈なのに、外の雨の音なんかに意識を集中させている自分に悟は苛立っていた。
一度も振り返る事無く去っていった、あの日の息子の後ろ姿が瞼の裏にチラついた。
「朋子!」
自分でも驚く様な大声を悟は出していた。
この怒りの様な感情は何なのだろうと思った。
一体誰に対して怒っているのか。
悟の脳内は激しく乱れていた。
普段の周波数にチューニングしている筈なのに、ダイアルをいくら捻ってもノイズしか聞こえてこない様だった。
朋子の為に強引にスペースをこじ開けた物置部屋の中央で、悟の着古したパーカーに着替えた朋子は立ち尽くし俯いていた。
少し肩が震えているのが、灯りの消えた暗い部屋の中であっても悟には分った。
「また家族を失うぞ。お前はそれでいいのか?それで納得しているのか?」
悟の声も震えていた。
考えるよりも先に言葉が溢れてきていた。
「納得なんて出来る訳ないじゃない!そんなの!無理に決まってるでしょ!」
悟の耳を朋子の声がつんざく様に刺した。
「あたしはただ守りたかったの!家族を!娘を!でも・・少し疲れたの・・・ちょっと・・立って居られなくなったの」
そういうと朋子は空気が抜けた風船の様に、ストンと本当に床に座り込んでしまった。
その目は放心したように、床の一点を見つめたまま動かなかった。
「俺はこれまでの人生で、一人また一人と家族が去っていくのを見送ってきたんだ。何も言わずに、消えていっちまった者の気持ちを、ずっと考えながら生きてきたんだ。誰も好き好んで独りでいたい奴なんかいない。そうなっちまった理由と、嫌でも向かい合いながら生きていくんだ」
悟は自分でも何を言っているのか、そして誰に対して言っているのかも分らなかった。
ただずっと心の中で独り言ちてきたものが、声帯を震わせ外に出ている現実に、まるで他人事の様に驚かされていた。
狭い部屋の中に、二人の荒い息遣いだけが響く。
悟は目の前がチカチカと明滅している様に感じた。
それはコップの水が遂に臨界点を越えて溢れ出す様に、押し留めようのない感情のメルトダウンであった。
「悟はあたし達の事を恨んでたの?」
長い沈黙の後、朋子が消え入りそうな力無い声でそう言った。
そんな朋子の声を、悟は嘗て聞いた事が無いと思った。
「俺は多分・・・多分・・誰も欠けて欲しく無かっただけなんだ。お前達がこの家に来るその前に、実の母親が出て行った時から多分、ずっとそれは変わってないんだよ」
二人の頼りない姿が、暗闇に浮かぶ鏡の様な窓の中に、小さく映り込んでいた。
ずっとこんな日がくるのを心のどこかで待っていたのかも知れないと、悟はもう一度思った。
「私達ってさ、本当に似てるよね」
朋子のその声はやけに大きく響いた。
まるで自分の脳内に直接流れ込んできているかの様だと悟は思った。
「お前覚えて無いのか?小学校の時の担任の教師が、皆の前で俺達の事、全然似てないって言ったろ。あん時俺何だか無性に頭来て、当たり前だろって、俺達は血の繋がった本当の兄妹じゃ無いんだからって」
そう言って悟は朋子が使っているベットに力無く腰を降ろした。
思いの外疲労感があるのは、こんなに長く誰かと会話をするのが覚えていない位に久し振りであった為だと悟は気が付いた。
「似てないのは確かにそうだね。あたしはあんたみたいな間の抜けた顔してないし。でも血は繋がって無くてもやっぱり似てるんだよ。中身はね。あたしとあんたはそっくりだよ」
そう言った朋子の横顔には僅かに生気が戻っていた。
「俺はお前みたいな激しい性格はしてないぞ。至ってまともな大人だからな」
悟の顔にも笑みが広がる。
「不思議だね。家族って。何だかよく分かんないけど。本当いい歳して何か馬鹿みたいだけどさ、不思議過ぎてもうお手上げって感じだよ」
朋子は両手を掲げてお道化て見せた。
悟も顎鬚を摩りながらつられて声を出して笑う。
本当に、そんな不思議なものに俺達は散々振り回されてきたんだなと、悟は思った。
暫くの間、二人はただ外の雨の音に耳を澄ませた。
そうすれば時計の針が逆回転して、望んだ時代にまで連れていってくれるかの様に。
「カレー、俺辛いの駄目だからな」
更に長い沈黙の後、唐突にそう言って悟は勢い良く立ち上がり、大きく背伸びをした。
「あたしも辛いの苦手だから、だから当然ルーはバーモントの甘口買ってきた」
朋子もそう言って膝を一つ叩いてから立ち上がる。
「付け合せは福神漬けじゃなくて胡瓜のキューちゃんだからな、らっきょうなんて論外」
悟が朋子の背中にそう浴びせ掛ければ、
「当然飲み物はカルピス一択、最後の味変には生卵」
朋子もきっぱりとそれに答える。
一瞬の沈黙の後、二人同時に吹き出した。
「ほら、やっぱりそっくりじゃん。本当似た者同士」
朋子の顔に満面の笑みが広がる。
「そりゃ、お前、これは似てるって言うよりも・・・」
悟はその先の言葉を、そっと心の中で独り言ちた。
完
あとがき
こんにちは。ころっぷです。
この度は【似てない二人】を読んで頂きありがとうございます。
今回の物語は、
とあるラジオ番組のリスナー投稿から着想を得て書きました。
実際にこの世のどこかに存在している誰かのエピソードが、
姿形を変えて虚構の物語として生まれ変わる。
想像を膨らませていく過程の中で、
登場人物達の人生が紆余曲折していくのは、
小説を書く醍醐味の一つであると思います。
内容としてやや重たいものになりましたが、
最後には希望を感じる形にしたいと思い、
こんなラストになりました。
「家族」というテーマは、
自分にとって一つのライフテーマであると実感しました。
また次回作でお会い出来るのを楽しみに。
2025・4・30 ころっぷ
