カメ事件。- 思いもしなかった 驚きの急展開
夕方6時。突然、インターホンが鳴って何事かとおもったら、見知らぬ女性が玄関の前に立っていた。
チラシのようなものを持っていたので、あぁ、何かの勧誘か営業か…この時間になぜ?と思ったけれど、それは誤解だった。
「実は…昨日ウチの亀が居なくなりまして…」と。
玄関先のマダムは、切ない顔をして私に手書きのチラシを渡し、ことの詳細を教えてくれた。
昨日仕事から帰ったら、ベランダから脱走したとのこと。
ちゃんと名前も書いてある。
が、呼んでも振り向きはしないだろう(たぶん)
15センチくらいの小さな亀らしい。
水のあるところや暗いところを好む、ということだから、どこか物の下とか、草の陰とか、水のありそうなところ…
考えてもそんなにすぐ亀の好きそうなところは思いつかない…
見かけたらご一報を、と電話番号が書いてある。
『一緒に探しましょうか?』
マダムの切なそうな顔を見て咄嗟にでたひと言。
ということで、カレーを仕込んでいた鍋の火を消し、少し外を一緒に探すことにした。
薄暗くなってきたタイミングで、黒い甲羅を探すのは容易ではない。
水槽のようなもののなかに、ネットをして飼っているらしいのだけれど…見事にどうにかして出てしまったらしい。頭の隅でプリズンブレイクがよぎった。
とはいえ、そんなに探せる場所もなく、また昨日の脱走からして、亀の歩みはどんなものか。どこまで逃げられるのか…なんか真面目にそんなことを考えていた。
そうこうしていたら、娘さんが帰ってきて、3人で探すものの見当たらない。
『もし見かけたら、バケツみたいなものに入れてくださると…』といわれて『了解です!』と返事をしたものの。亀をどうやって抱き上げようか、触れるのか私 ?!と妙な心配事が頭をよぎる。
仕方なく、マダムと娘さんとサヨナラして、見つかることを願った。
家の中に立ち込めるカレーの匂いでふと現実に戻る。
手元に残った手書きのチラシに添えられた文字に、焦りがみえる。
私は動物は好きだけれど家族には迎えない。
それはいつか来るサヨナラに耐えられる自信がないから。それが亀なら私より長生きしてくれるかな。と思ったりもした。
夕飯を作りながらも、なんだか気になり、カレーの火を再び止めて、もう一度外をひとりでぐるりと見てみるけれど、やっぱりいない。
仕方がない。
そこから10分たったかたたないかの頃。
またピンポーンとなった。
インターホンに出ると『〇〇です!』とマダムの声のトーンが明るい。
これは見つかったに違いない!
そうおもい、勢いよく玄関をあけ『見つかった?!』と尋ねると、半泣きのマダムが亀を抱っこしている…!
🐢!!
なんだかもう、『ようやく会えたね!』の気持ちである。
思わず甲羅を撫でようとすると(それが正しいのかわからんが)首をすくめて、オマエダレダと言われた気分。
兎にも角にも無事でよかった。
自転車の影にいたのだとか。
なんだかそんな自分を俯瞰して『あぁ。私はオトンそっくりだ』と思ってしまった。
困ってる人がいたら、それがどんなに見ず知らずの人だとしても、父は絶対見て見ぬ振りはしない。娘である私からすると、人情の塊みたいな父が、めんどくさいなとおもう子供時代もあった。
けれど、きっとマダムは辛かっただろうなとおもった。
チラシを受け取るだけでもよかったけど、とっさにサンダルで外へでた自分が、なんだかちょっと誇らしく思えたのは、父の影があったから。(あ。父はまだ全然元気にやってます)
ということでめでたしめでたし。
明日もし、うちに玉手箱が届いても、開けてはならぬ。
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いいしょう