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『面使い』第三話

○村・中
颯斗、入ってくる。
つじつじに法派が立って監視している。
村人たち、緊張の面持ちで生活をしている。
村人が、運ぶ荷車の酒の樽が落ちてこぼれる。
法派たち、集まってくる。
法派D「なにをしてる!」
村人「す、すみません!」
法派D「連れていけ」
村人「そ、そんな」
と、法派に連行されていく。
村人たち、諦め顔で見て見ぬふりをしている。
颯斗、その様子をジッと見ている。

○町・中
颯斗、入ってくる。
つじつじに法派が立って監視している。
町の人たち、緊張の面持ちで生活をしている。
小型犬が『キャン! キャン!』と吠える。
町人「静かにして! 吠えないで」
と、リードに繋がれた小型犬に哀願する。
法派たち、集まってくる。
法派「うるさい! 黙らせろ」
さらに小型犬が『キャン! キャン!』と吠える。
法派「連れていけ」
町人「そ、そんな」
法派が、小型犬のリードを無理矢理引っ張りながら、町人と共に連行していく。
町の人たち、諦め顔で見て見ぬふりをしている。
颯斗、その様子をジッと見ている。

○法派の本部・前
ひかり、法派の一団と共に出てくる。
颯斗の声「待ってたぞ」
ひかり「?」
と、見る。
立っていた颯斗、金獅子の面を着ける。
ひかり「金獅子の面!」
颯斗「勝負だ」
ひかり「……」
と、『裂元刃』の小面を着ける。
颯斗、ひかりが、無言で向かい合う。
颯斗の『新連斬刃』と、ひかりの『裂元刃』の闘いが始まる。
颯斗、『新連斬刃』の技で、目にも止まらぬ速さで何度も巨大に伸びた刃で斬り込む。
ひかり、『裂元刃』の大きく伸びた刃で、颯斗の攻撃を受ける。
金獅子面の颯斗と小面のひかり、見つめあう。
ひかり「互角か……金獅子面とは」
颯斗、高速で何度も斬り込む。
ひかり「く……」
と、受ける。
ひかり、斬り込む。
空間が歪み裂ける。
颯斗「うわあ……」
と、飲み込まれそうになる。
しかし、刃を地面に突き刺し踏ん張り耐える。
ひかり、続けて何度も斬り込むと、ますます空間が歪み裂ける。
颯斗、刃が地面から抜け、宙に舞い、空間に飲み込まれそうになる。
ひかり「フン。終わったな」
と、斬り込むのをやめる。
颯斗、吸い込まれる寸前に『新連斬刃』を高速で何度も歪み裂けた空間に向かい斬りつける。
その反動で颯斗が吹き飛ばされ、ひかりに向かっていく。
颯斗、そのままひかりに斬り込む。
ひかり、不意を突かれ腕を斬られる。
吹き出る血。
ひかり、刀を落とし、ガックリと膝を付く。
颯斗、ひかりの前に立って、小面を真っ二つに切ろうと刃を振り下ろす。
ひかり、前に飛び出てくる。
颯斗「!」
と、避けようとするが、ひかりをけさ懸けにしてしまう。
ひかり「!」
颯斗、金獅子面を脱ぎひかりを抱きかかえ小面を外し、
颯斗「なぜだ?」
ひかり「私、間違ってたのかな?」
颯斗「間違ってた」
ひかり「だったら、これでいいね」
颯斗「なに言ってるんだよ。間違ってたら、罪を償って、やり直せばいい。それが、法律だろ!」
ひかり、ハッとなって、
ひかり「私、法のことなにも分かってなかった……」
と、息を引き取る。
颯斗「ひかり!」
と、ひかりを抱きしめる。
そばに転がっている、小面の面。
律、走ってくる。
律「なんで、ひかり姉ちゃんを……」
と、泣きながら颯斗をなんどもたたく。
颯斗「……」
と、黙ったままたたかれている。
律「ひかり姉ちゃんは、長老の命令を守ってただけなんだぞ」
颯斗「?」
法派の一団が二手に分かれ頭を下げる。
その中を、『八岐大蛇刃(やわたのおろちじん)』の面を着けた百歳くらいの老人がつえを突きながら出てくる。
八岐大蛇刃の老人「金獅子面か?」
颯斗「お前が黒幕?」
八岐大蛇刃の老人「黒幕? ただの法派のおさじゃよ、ハハハハハ」
と、陽気に笑う。
颯斗「ただのおさのわけがないだろう」
八岐大蛇刃の老人からは、ただならぬ妖気が漂っている。
八岐大蛇刃の老人、ひかりを見て、
八岐大蛇刃の老人「もう少し、使えるかと思ったが、使えぬ女じゃの」
颯斗の腕の中にいるひかりの顔。
颯斗「なんだと!」
律「ひどいよ! ひかり姉ちゃんが、どんなに、長老のことを……」
颯斗、ひかりを優しく横たえ律に託し、
颯斗「俺が相手だ」
と、金獅子面を着け『新連斬刃』で素早く連続で七回斬りつける。
巨大に伸びた刃が、八岐大蛇刃の老人を襲う。
八岐大蛇刃の老人、つえから居合で『八岐大蛇刃』を抜き斬りつける。
刃が八つ、巨大に伸びる。
それぞれの先には蛇の頭がついた蛇の刃である。
一匹目、二匹目、三匹目、四匹目、五匹目、六匹目、七匹目が、ぬらりと新連斬刃の刃に巻きつき止める。
八匹目、颯斗に噛みつこうとする。
颯斗、辛うじて避ける。
さらに何度も噛みついてくる八匹目。
颯斗、走り、跳んで、避けるが、とうとう右足をかまれる。
颯斗「ぐあああああ」
と、悶える。
みるみる右足が腫れてくる。
八岐大蛇刃の老人「どうじゃ? 八岐大蛇の毒の味は? うまいじゃろう」
律「颯斗兄ちゃん!」
残りの七匹の蛇と八匹目の蛇、颯斗の体に巻きついていく。
颯斗「ぐああああ」
八匹の蛇、ますます、颯斗を締め付ける。
颯斗「ぐおおおおお」
颯斗の体がメキメキと音を立てる。
律「やめて! やめて、長老様!」
八岐大蛇刃の老人「うん? そうじゃの。もう少し楽しませてもらわんと、つまらんわい」
と、蛇に颯斗を放り出させつえに納める。
颯斗、地面にたたきつけられる。
颯斗「ぐわあ」
と、もがき苦しむ。
ますます腫れていく右足。
律「颯斗兄ちゃん!」
そのそばにある小面。
八岐大蛇刃の老人「そうはいっても、そろそろ毒が回って死ぬ頃じゃしの。楽しみの時間は短くてつまらんわい」
颯斗「なんで……」
八岐大蛇刃の老人「なんじゃ?」
颯斗「なんで、法派のおさの癖に暴力に走る? 法を守らせようとしない?」
八岐大蛇刃の老人「暴力の後ろ盾がないと、誰も法など守らんじゃろ?」
颯斗「だからと言って、これはやり過ぎだ」
八岐大蛇刃の老人「馬やロバには、これくらいが丁度いいんじゃよ」
颯斗「人は、人間は、馬やロバじゃねえ!」
と、必死に立ち上がり『新連斬刃』を構える。
八岐大蛇刃の老人「ほう。まだ、楽しめそうじゃの」
と、つえから居合で『八岐大蛇刃』を抜く。
八匹の蛇が、颯斗を襲う。
颯斗、力をふり絞り何度も『新連斬刃』で斬りつける。
その都度、避けられたり、絡みつかれたりして効果がない。
颯斗「くそおおおおお!」
と、最後の力を振り絞り斬りつけた刃が、八匹目の頭を斬る。
八岐大蛇刃の老人「なんと?」
八匹目の蛇の血が、颯斗の右足に滴り落ちる。
みるみる萎んでいく颯斗の右足。
血が毒消しになるのである。
八岐大蛇刃の老人、『八岐大蛇刃』を操り、残り七匹の蛇に颯斗を襲わせる。
颯斗、なんとか『新連斬刃』で防戦する。
颯斗「律! 小面」
律「!」
と、小面を拾い上げ走ってくる。
八岐大蛇刃の老人「なんじゃ?」
と、『八岐大蛇刃』を操り、一匹目と二匹目の蛇に律を襲わせる。
律、危うくかわし、颯斗のそばに来る。
颯斗「律、よくやった」
律「うん」
颯斗「小面を金獅子面の上から着けてくれ」
律「わかった」
と、颯斗の金獅子面の上から小面を着ける。
八岐大蛇刃の老人「なんじゃ? おもしろいことをやっておるの。これも一興じゃ。待ってやろう」
と、『八岐大蛇刃』の攻撃を緩める。
颯斗、横たわるひかりの顔をジッと見ているが、顔を上げ、
颯斗「勝負だ!」
八岐大蛇刃の老人「せいぜい、楽しませてくれるがよいわ」
と、『八岐大蛇刃』の攻撃を始める。
迫りくる七匹の蛇の頭。
颯斗「……」
と、小面を左手で覆い。
颯斗「裂元刃……」
と、呟き、刀を振るう。
空間が歪み裂ける。
『裂元刃』を使ったのである。
しかし、力が出ず小さな空間しかできない。
八岐大蛇刃の老人「なんじゃ、かわいい裂元刃じゃな」
と、一匹目の蛇に空間を飲み込ませる。
颯斗「くそ!」
と、力を振り絞ろうとするが、満身創痍の体ではできない。
律「僕も手伝うよ」
颯斗「頼む」
颯斗と律、力を合わせ刀を振る。
先ほどよりは大きな歪み裂ける空間が出現するが、まだまだ小さい。
八岐大蛇刃の老人「ハハハ、そんなものか」
と、二匹目の蛇に飲み込ませる。
颯斗「律、もう一度だ」
律「うん」
颯斗と律、力を合わせもう一度刀を振る。
空間が歪み裂ける。
八岐大蛇刃の老人、三匹目の蛇に飲み込ませる。
八岐大蛇刃の老人「そろそろ、よかろう」
と、『八岐大蛇刃』の攻撃を始める。
颯斗と律に迫ってくる七匹の蛇。
颯斗と律、力を合わせ刀を振ろうとするが間に合わない。
律「助けて、ひかり姉ちゃん!」
ひかり「……」
と、微笑んだように見える。
颯斗の着ける小面が光る。
一匹目と二匹目と三匹目の蛇が悶え始め、腹が破裂して、歪み裂けた空間が出てくる。
三個の歪み裂けた空間が、合体して、
大きな歪み裂けた空間が出現する。
八岐大蛇刃の老人「畜生」
と、残りの四匹の蛇に飲み込ませようとするが、大きすぎて飲み込めない。
八岐大蛇刃の老人、空間に吸い込まれそうになる。
八岐大蛇刃で四匹の蛇に木や岩をくわえさせ持ちこたえる。
しかし、裂元刃の歪み裂ける空間の吸い込む力に持ちこたえられず、次々に蛇の首が千切れていく。
とうとう、四匹目の首がちぎれ飛び、八岐大蛇刃の老人に向かって飛んでいき、四匹目の蛇の牙が、八岐大蛇刃の面に当たり、面が割れる。
八岐大蛇刃の老人「助けてくれ。助けてくれ」
と、叫ぶ素顔はただの老人の顔である。
法派の一団が助けようとするが、次々と歪み裂ける空間に吸い込まれていく。
八岐大蛇刃の老人「助けてくれ。助けてくれ」
と、叫びながら吸い込まれていく。
八岐大蛇刃の老人「ぎゃあああ」
と、最後の声を残し裂元刃の空間が閉じていく。            
律「颯斗兄ちゃん!」
と、颯斗にしがみ付く。
颯斗「律」
と、律の肩を抱く。
颯斗と律、ひかりを見る。
ひかり「……」
と、微笑んでいるかのように横たわっている。
 × × ×
ひかりを抱きかかえた颯斗と律が去っていく。

#創作大賞2024 #漫画原作部門

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