見出し画像

第5節 武部直美――現場を動かした仕事

1967年、京都府に生まれた武部直美は、東映入社後、商品化権営業部に配属され、2年後にテレビ企画制作部へ異動する。2001年の『仮面ライダーアギト』から、白倉伸一郎とコンビを組んでサブプロデューサーを務めるようになった[i]

2008年の『仮面ライダーキバ』で、メインプロデューサーに就任。2010年『仮面ライダーオーズ/OOO』、『仮面ライダー鎧武/ガイム』『仮面ライダージオウ』『特命戦隊ゴーバスターズ』『機界戦隊ゼンカイジャー』を手がけ、2022年の『仮面ライダーギーツ』では令和ライダー初のチーフプロデューサーに就任、2025年の『仮面ライダーガヴ』でも続投した。白倉伸一郎とのコンビは、実に二十年を超えて続いていることになる[ii]

『仮面ライダーオーズ/OOO』では、脚本家の小林靖子とともに、モチーフである「メダル」から「欲望」を物語の主題として立ち上げていった[iii]
玩具展開という与件を、物語の芯そのものへと変換する仕事が、ここには
ある。

もう一つの決定的な介入は、誰と組むかという人選そのものにあった。
『仮面ライダー鎧武/ガイム』では、それまでの小林靖子・井上敏樹といったベテラン脚本家との協働から一転し、実写ドラマの経験がまったくない虚淵玄らニトロプラス系のライターを起用している。武部自身は、その圧倒的なキャラクター造形とインパクトのある台詞回しが、多人数ライダーという
本作の企画にふさわしいと考えたことを起用理由として語っている[iv]

ファンの間には、武部が手がけた作品の作風の多くが、武部自身というより起用した脚本家の個性をそのまま映し出しているという見方もある。もし
そうだとすれば、武部の仕事は、第4節で見た阿部征司や塚田英明の「実行する側」に近い位置にあることになる。だが、OOOでの「メダル」を
「欲望」へと読み替えた着想や、鎧武での意表を突く人選そのものは、紛れもなく武部自身の創造的判断である。ビジョンを示す側と、それを実行に
移す側という単純な二分法に、武部はきれいには収まらない。

武部のキャリアが示すのは、プロデューサーという職能のどこに作家性を
見出すかという問いへの、また別の角度からの応答である。それは特定の
カット割りにも、台詞の一つひとつにも宿らない。誰と組むか、そして与えられた商業的な制約をどう物語の芯へと変換するかという、一見地味な決断の積み重ねの中にこそ、彼女の仕事の輪郭がある。次節では、令和ライダーという同じ舞台で、まったく異なる形で作家性を主張しようとした、もう
一人のプロデューサー――大森敬仁――に目を向ける。



[i] 「武部直美のプロフィール」映画ナタリー(株式会社ナターシャ)。「『仮面ライダージオウ』最初の企画は『ロボットに乗って戦う仮面ライダー』――東映・武部Pが語る人気ヒーローに絶対必要なもの」マイナビニュース、2018年12月29日。「〈凄腕つとめにん〉送り出した『ヒーロー』=50人」朝日新聞デジタル、2011年12月19日(インターネットアーカイブ)。以上三点により、1967年京都府生まれ、東映入社後の商品化権営業部からテレビ企画制作部への異動、2001年『仮面ライダーアギト』より白倉伸一郎とともにサブプロデューサーとして参加した経緯を記載している。
https://natalie.mu/eiga/artist/120167
https://news.mynavi.jp/article/20181229-kamenrider/
[ii] 「武部直美のプロフィール」映画ナタリー。「『仮面ライダーギーツ』チーフプロデューサー・武部直美『どれが正義とはいえないようなエッセンスを取り入れたかった』」ニコニコニュース、2022年10月9日。東映株式会社公式サイト内ニュース記事各種(2024〜2025年、『仮面ライダーガヴ』関連)。以上により、2008年『仮面ライダーキバ』でのメインプロデューサー就任、2010年『仮面ライダーオーズ/OOO』、『鎧武/ガイム』『ジオウ』『特命戦隊ゴーバスターズ』『機界戦隊ゼンカイジャー』を経て、2022年『仮面ライダーギーツ』での令和ライダー初のチーフプロデューサー就任、2025年『仮面ライダーガヴ』でも続投した経緯を記載している。
[iii]『仮面ライダーオーズ』人間の尽きない“欲望”を主題にした、激しいメダル争奪戦」マイナビニュース、2018年12月24日(著者・秋田英夫)。同作が「メダル」をめぐる「欲望」を毎回のドラマの主題として展開していたことを解説している。
[iv]新仮面ライダー『鎧武/ガイム』の脚本に虚淵玄、"ライダー戦国時代"へ突入」マイナビニュース、2013年7月25日(制作発表記者会見レポート)。武部直美本人の会見での発言として、「虚淵さんは、数々のオファーがある中『仮面ライダーならやってみたい』と引き受けていただけました。その圧倒的なキャラ立てと非常にインパクトのある台詞、今回の多人数ライダーという企画にまさにぴったりではないか」という起用理由を紹介している。

いいなと思ったら応援しよう!