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第2節 宇宙刑事三部作――組織ヒーローの宇宙への接木とバブル前夜の欲望

『宇宙刑事ギャバン』(1982〜83年)に続き、『宇宙刑事シャリバン』(1983〜84年)、『宇宙刑事シャイダー』(1984〜85年)が1年ごとに制作され、3年にわたる「宇宙刑事三部作」が形づくられた。単なる同一枠の
後継番組ではなく、続編としての連続性が周到に演出されている点は見逃せない。シャリバンの主人公・伊賀電は、前作『ギャバン』の終盤にすでに
ゲストキャラクターとして先行登場しており、逆に『シャリバン』本編では、ギャバンが上司格の準レギュラーとして出演を続けた[i]。銀河連邦警察という組織と、その指導者であるコム長官という体制は三作を通じて一貫しており、前節で見た「組織に属するヒーロー」という骨格が、3年をかけて一つの世界観として育っていったのである。

この時期の日本のSF熱――『スター・ウォーズ』シリーズや『宇宙戦艦ヤマト』シリーズの人気に象徴される、いわゆるSFブーム――は、こうした宇宙を舞台にした企画が成立する土壌となった時代背景として触れておく必要はあるだろう[ii]。ただし、この作品を突き動かしていたのは、SFブームへの
単なる便乗というより、すでに見たようにスーパー戦隊が耕した組織ヒーローという骨格に、宇宙という新しい舞台装置を接木する、という東映特撮
内部の必然性の方だった。

この三部作を特徴づけるもう一つの要素が、変身シーンの技術的な加速競争である。『ギャバン』のコンバットスーツ装着(「蒸着」)は0.05秒(20分の1秒)で完了するとされ、電送されてくるスーツが瞬時に身体を覆うという演出そのものが、シリーズの代名詞になった。ところが『シャリバン』では「赤射」、『シャイダー』では「焼結」とコード名がそれぞれ変わり、
その所要時間はいずれもわずか1ミリ秒(1000分の1秒)――ギャバンの装着時間のさらに20分の1にまで短縮されている[iii]。速さそのものが視覚的な
快感として追求され、1作ごとに数字が更新されていくこの演出は、テクノロジーの進歩が疑いなく善であり、加速こそが力の証だと信じられていた
時代の空気を、そのまま数値化したものだったと言える。ここに現れているのは、まだ「バブル」という言葉が一般化する前の、しかし高度経済成長の延長線上でテクノロジーへの無条件の信頼が広がっていた、1980年代前半
特有の欲望の形である。

この三部作に思想的な厚みを与えたのが、3作すべてでメインライターを務めた上原正三だった。『シャイダー』では、恩人の一人だった円谷一の
息子・円谷浩が主役候補に挙がった際、上原自身が彼を沢村大役に強く推し、その思いもあって劇場版2作を含む全話の脚本を一人で書き上げている[iv]。

ギャバンこと一条寺烈が、行方不明の父を探し求めるという設定には、幼くして沖縄戦の混乱のなかで父と離れ離れになった上原自身の体験が、無意識のうちに響いていたという逸話が伝えられている[v]。もっとも上原本人は、この呼応を認めつつも「父恋」「母恋」といった直接的なテーマは照れくさく、宇宙というとびきり突飛な設定のなかでこそ扱えるのだと語っており[vi]、単純な自伝の反映というよりは、屈折を経た再構成として捉えるべきだろう。

続く『シャリバン』でも、滅ぼされた種族の末裔という伊賀電の設定や、
劇中に登場する紋章や巫女的な少女たちの造形に、沖縄の記憶が形を変えて織り込まれているとも指摘されている[vii]。

宇宙という新しい舞台、組織というすでにあった骨格、そして加速し続ける変身技術――宇宙刑事三部作が体現していたのは、来るべきバブル景気を
先取りするかのような、テクノロジーへの楽天的な信頼だった。だが、この楽天性がそのままの形で続いたわけではない。1987年に登場する『超人機
メタルダー』は、この美学の延長線上にありながら、まったく異なる感情を作品の中心に据えることになる。次節では、この「例外」がどのような文脈から生まれたのかを見ていく。



[i] 高塔琳子「元祖『赤いギャバン』は謎多き二刀流…『宇宙刑事シャリバン』が描いた異色の怪奇世界【昭和オタクは燃え尽きない】」ふたまん+(双葉社)2025年11月29日。前作『ギャバン』第42話~第44話への先行登場、および『シャリバン』第1話以降のギャバンの準レギュラー出演について記されている。
[ii] 『メタルヒーロー最強戦士列伝』[監修]東映、双葉社、2014年11月9日、18-19頁、24-25頁、「走れ、叫べ、転がれ、飛べ ギャバン激闘伝説」「総論『ギャバン』とは何だったのか? SFブームが生んだニューヒーロー」。
[iii] LUIS FIELD「変身に革命を起こした『宇宙刑事ギャバン』の『蒸着』 子供の『なんで?』を解消!」マグミクス、2023年9月11日。ギャバンのコンバットスーツ装着(蒸着)が0.05秒で完了する旨のナレーションが紹介されている。高塔琳子、前掲。シャリバンが1ミリ秒で「赤射蒸着」を完了する旨のナレーションが紹介されている。「特撮ばんざい!第65回:『宇宙刑事シャイダー』40周年・Blu-ray発売記念イベントにキャスト・スタッフが大集合」モノ・マガジンweb(ワールドフォトプレス)、2025年3月13日。シャイダーが1ミリ秒(0.001秒)で「焼結」を完了する旨が記されている。
[iv] 秋田英夫「ウルトラマン、戦隊、宇宙刑事…ヒーローの熱き戦いを描き続けた上原正三氏の功績を振り返る」マイナビニュース、2020年1月10日。上原正三が、恩人の一人であった円谷一の息子・円谷浩を『宇宙刑事シャイダー』沢村大役に自ら強く推薦した経緯が記されている。「『シャイダー』BD化でキャスト集結、故・円谷浩さんしのぶ『大ちゃんも来てほしかった』」マイナビニュース、2018年7月13日。上原正三が『宇宙刑事シャイダー』本編を全話一人で執筆したことが記されている。
[v] 佐藤賢二「『宇宙刑事ギャバン』が背負っていたものは何だったのか? 脚本家・上原正三の戦争体験」Real Sound、2026年2月16日。
[vi] 同上。
[vii] 同上。

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