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第5節 バトルフィーバーJ、あるいはフォーマットの再生

『ジャッカー電撃隊』が1977年12月に幕を閉じてから[i]、『バトルフィーバーJ』が1979年2月に始まるまで[ii]、実に1年2か月の空白が生じている。それまでほぼ切れ目なく続いてきた石ノ森戦隊シリーズにとって、これは異例の長さの中断だった。この空白は、迷走の結果ではなく、次の一手を練り直すための、意図的な準備期間だったと見るべきだろう。

その結果として姿を現したバトルフィーバーJは、二つの異なる起源を持つ要素を、初めて一つに結合した作品だった。マーベルとの提携第2弾に
あたり、東映は既存のマーベルキャラクターをそのまま流用することを
避け、原作者名義を八手三郎とする東映独自のヒーローを立てたうえで、
ゴレンジャーとジャッカーで確立していた「集団ヒーロー」という要素を
再投入した[iii]。同時に、東映版スパイダーマンで好評を博した「巨大ロボット」という要素も、そのまま引き継がれている[iv]。ゴレンジャーの型と、
スパイダーマンの型---由来のまったく異なる二つの要素が、ここで初めて
接木されたのである。

この接木の跡は、企画の出発点そのものにも残っている。バトルフィーバーJは当初、マーベルの『キャプテン・アメリカ』と『ミズ・マーベル』を
下敷きにした、日本版キャプテン・アメリカとも言うべき「キャプテンジャパン」という企画として立ち上げられていた[v]。最終的には、チームの一員であるミスアメリカを除く全キャラクターが東映のオリジナルとして再設計され[vi]、コンセプトそのものはアメリカン・コミックヒーローの翻案というより、ゴレンジャー的な集団ヒーローの成功をなぞる方向へと転換していく[vii]。

巨大ロボット「バトルフィーバーロボ」の登場のさせ方にも、この作品らしい試行錯誤の跡がある。番組の目玉であるはずのロボットは、第1話からではなく、第5話になって初めて姿を現した[viii]。前作の打ち切りという苦い
記憶を持つ制作陣にとって、巨大ロボットは「復活を賭けた目玉」であったにもかかわらず、その登場は当初の想定より遅れたのである[ix]。しかし、
この遅れは、結果的には損失ではなく利点として働いた。登場までの準備
期間が長く取れたことで、ロボットの戦闘シーンをじっくりと作り込むことができ、この第5話は、演出面で高く評価されただけでなく、同年の「東映まんがまつり」において劇場版として再編集・上映されるまでになっている[x]。制約が、狙って生み出せなかった質の高さを、結果的にもたらす---この構図は、仮面ライダーの顔や変身儀式の成立過程、そしてゴレンジャーの
5人という編成の成立過程で、本稿がすでに繰り返し確認してきたものと、同じ形をしている。

この二重の継承---集団ヒーローという内容面の型と、巨大ロボットという
玩具展開面の型---は、狙い通りに機能した。バトルフィーバーロボの玩具は大きな商業的成功を収め、これ以降、巨大ロボットの搭乗戦闘は、戦隊シリーズに欠かせない標準装備として定着していく[xi]。そしてバトルフィーバーJ以降、戦隊シリーズは一度の中断もないまま、以後2026年2月の『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』の最終回に至るまで、毎年途切れることなく新作が製作され続けていた[xii]。

こうして振り返ると、50年にわたって続く戦隊フォーマットの土台は、
一人の天才の頭の中で完成形として構想されたものではなかったことが分かる。ゴレンジャーの「集団ヒーロー」も、ジャッカーの「失敗」も、東映版スパイダーマンの「巨大ロボット」も、それぞれ別々の事情---視聴率、局の編成、日本市場向けのローカライズ---から生まれた、部分的な解にすぎなかった。バトルフィーバーJの功績は、新しい何かを発明したことではなく、すでに存在していたこれらの部分的な解を、初めて一つの番組の中で組み
合わせて見せたことにある。仮面ライダーの誕生が事故と制約の連鎖だったように、スーパー戦隊という一大ジャンルの完成もまた、周到な設計図からではなく、いくつもの失敗と借用の末に、後から振り返って初めて必然に
見える形へとたどり着いたのである。



[i] 「ジャッカー電撃隊〔35・終〕 大勝利!さらばジャッカー」放送ライブラリー。
[ii] 「バトルフィーバーJ〔1〕 突撃!!球場へ走れ」放送ライブラリー。
[iii] 戸部田 誠「てれびのスキマの温故知新〜テレビの偉人たちに学ぶ〜『八手三郎』篇」VR Digest+、2026年1月16日。https://www.videor.co.jp/digestplus/article/tv260116.html
蒼影コウ「終了報道で感謝の声も…『スーパー戦隊』を導いた『原作・八手三郎』の正体とは 守り抜いたヒーローの魂」ふたまん+、2025年11月16日。
[iv] 杉山すぴ豊「スーパー戦隊シリーズとは何だったのか? 米ヒーローとの関係とその歩み」リアルサウンド ブック、2025年11月4日。
[v] 「東映スパイダーマン後のマーベル提携作品」Spider-Manブログ、2008年4月18日。
[vi] 同上。
[vii] 秋田英夫「『ゴレンジャー』プロデューサー吉川進氏が語る大ヒットの要因、そして次代のスーパー戦隊へ託す思い」マイナビニュース、2019年12月12日。
[viii] 石原久稔「巨大ロボット登場はなぜ第5話から? 逆境をチャンスに変えた『バトルフィーバーJ』」マグミクス、2024年3月29日。
[ix] 同上。
[x] 同上。
[xi] 同上。
[xii] 「特撮シリーズの新ブランドが誕生【PROJECT R.E.D.】始動!! 記念すべき第1弾作品は『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ』」東映公式サイト、2025年11月24日。https://www.toei.co.jp/entertainment/news/detail/1247213_3483.html
「スーパー戦隊シリーズ終了し新たな特撮シリーズ「PROJECT R.E.D.」始動へ 第1弾「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」来年放送開始」中日スポーツ/東京中日スポーツ、2025年11月24日。https://www.chunichi.co.jp/article/1168363
最終話 我ら、ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー!」『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』テレビ朝日公式サイト。

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