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第4節  レスキューポリスシリーズ――バブル崩壊後の美学の変奏

宇宙刑事三部作からメタルダーを経て、メタルヒーローシリーズ第8作として1989年に放送されたのが『機動刑事ジバン』である。現職の警察官を主人公に据えた本作に続き、翌1990年に始まる新作もまた、斬新な設定によって高い評価を得ることになった[i]。1990年代に入り、メタルヒーローシリーズが「レスキューポリスシリーズ」と呼ばれる三部作――『特警ウインスペクター』(1990年2月〜1991年1月)、『特救指令ソルブレイン』(1991年1月〜1992年1月)、『特捜エクシードラフト』(1992年2月〜1993年1月)へと移っていくのは、この『ジバン』の延長線上にある[ii]。この3年間は、
日本経済のバブル景気が崩壊していく時期と、ほぼそのまま重なっている。銀河連邦警察やネロス帝国といった架空の組織を舞台にしてきたシリーズが、この時期を境に「警視庁」という実在の官庁の名を冠したヒーロー像へと軸足を移していったことは、単なる偶然と片付けるべきではないだろう。

『特警ウインスペクター』の最大の特徴は、それまでのシリーズに必ず存在した「怪人を率いる悪の組織」が姿を消したことである。敵は科学犯罪や
暴走したテクノロジー、災害そのものであり、物語の作劇も、SF的な設定を残しながら一般向けの刑事ドラマに近い路線へと転換した[iii]。宇宙という
壮大な舞台から、警視庁という実在の官庁が担う「日常の延長線上にある
事件」へ――宇宙刑事三部作が追求した加速する変身技術への楽天的な信頼は、ここでいったん後景に退く。

続く『特救指令ソルブレイン』は、前作の直接の続編として企画され、ウインスペクター本部長・正木俊介が続投し、主人公・香川竜馬も番組後半で
セミレギュラーとして再登場する。ここでテーマはさらに一歩踏み込み、「人の命を犯罪から救うだけでなく、犯罪者の心をも救う」という理念が
掲げられるようになった[iv]。加害者と被害者を単純に切り分けず、犯罪の
背後にある人間の弱さそのものに向き合おうとするこの姿勢は、バブル崩壊後の閉塞感のなかで、単純な勧善懲悪では割り切れない現実に、シリーズ
自体が向き合い始めた徴候と見ることもできるだろう。

もっとも、ここまで三部作を貫く一つの軌跡として語ってきたこの流れを、『エクシードラフト』についてもそのまま延長線上に置くことには、留保が必要である。本作における「レスキューポリスシリーズ」としての連続性は、終盤になって正木俊介が警視監として登場する場面において、初めて明確なかたちで示されている[v]。1990年から93年にかけての3年間を、警視庁的リアリズムへの一貫した軌跡として遡及的に語ること自体もまた、本稿が繰り返し警戒してきた「後年の物語化」の一例である可能性を、ここでも
意識しておきたい。

とはいえ、この留保を踏まえてもなお、シリーズ最後の『特捜エクシードラフト』では、インターポール・警視庁・消防庁など、複数の公的機関出身の専門家たちがチームを組む設定となった[vi]。

この変質を体現したのが、脚本の書き手の交代劇だった。ウインスペクターとソルブレインでメインライターを務めた杉村升は、翌年『恐竜戦隊ジュウレンジャー』でスーパー戦隊シリーズに移り、後任として宮下隼一が『特捜エクシードラフト』のメインライターを引き継いだ[vii]。

来るべき好景気への欲望を先取りしていた宇宙刑事三部作の美学は、こうして1990年代前半、実在の公的機関のリアリズムへと姿を変えていった。
だが、この地に足のついた路線もまた、長くは続かなかった。次節では、
メタルヒーローシリーズがどのようにその幕を下ろすことになったのかを
見ていく。



[i] 「特警ウインスペクター VOL.1」東映ビデオオフィシャルサイト。「斬新な設定で東映メタルヒーローシリーズの新たな地平を切り開いた……これまでにない斬新な設定が賞賛を浴びたメタルヒーローシリーズ第9作『特警ウインスペクター』」と紹介されている。
[ii] 「特警ウインスペクター〔1〕」「特救指令ソルブレイン〔1〕」「特捜エクシードラフト〔1〕」放送ライブラリー公式ページ(公益財団法人放送番組センター)。各作品の放送期間、全話数、およびレスキューポリスシリーズ内の順番・メタルヒーローシリーズ第9〜11作という位置づけについて記されている。
[iii] 「特警ウインスペクター VOL.1」東映ビデオオフィシャルサイト、前掲。「従来のように大規模かつ明確な敵組織が存在せず、民間の犯罪や災害等から人々を救うという、これまでにない斬新な設定」と紹介されており、悪の組織を率いる怪人が存在しないことが確認できる。一般向けの刑事ドラマに近い作風という評価については、別冊映画秘宝編集部編『別冊映画秘宝 平成大特撮1989-2019』洋泉社、2019年、75頁。
[iv] 「特救指令ソルブレイン VOL.1」「特救指令ソルブレイン VOL.3」東映ビデオオフィシャルサイト。「『特警ウインスペクター』に続く『レスキューポリスシリーズ』の第2弾『特救指令ソルブレイン』登場! 警視庁特別救急警察隊・ウインスペクターは国際化する犯罪に対応すべくICPOの指令でパリに拠点を置くことになり、新たな組織が設立されることとなった…正木本部長は、『人の命だけでなく、犯罪者の心も救いたい』との思いで、この『特装救急警察・ソルブレイン』を設立した」と紹介されており、前作からの続編としての企画経緯、正木俊介の続投、および「犯罪者の心も救う」という理念が確認できる。また同VOL.3の収録話リストに「#21 帰って来たWSP(PART-Ⅰ)」「#23 竜馬から大樹へ!(PART-Ⅲ)」とあり、香川竜馬の再登場が確認できる。 
[v] 「特捜エクシードラフト」Apple TV公式配信ページ、第47話エピソード情報。第47話のサブタイトルが「正木リターンズ!!」であることが確認でき、同話に正木俊介が登場することが公式のエピソード情報として示されている。
[vi] 「特捜エクシードラフト特集」東映ビデオオフィシャルサイト。「インターポール出身の隊長である叶隼人が『ドラフトレッダー』、警視庁特捜部出身の村岡耕作が『ドラフトブルース』、消防隊出身の大熊拳が『ドラフトキース』」と紹介されており、インターポール・警視庁・消防庁出身者によるチーム編成が確認できる。
[vii] 「特救指令ソルブレイン VOL.1」「特捜エクシードラフト VOL.1」東映ビデオオフィシャルサイト。ソルブレインの脚本クレジット筆頭が杉村升、エクシードラフトの脚本クレジット筆頭が宮下隼一であることが公式に確認できる。

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