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第6節 パワーレンジャー撤退とDXロボ低迷という「二つの致命傷」

一つ目の要因は、シリーズの海外展開を担ってきた『パワーレンジャー』の関連玩具製造権売却である。アニメ・ゲームライターの多根清史の解説によれば、2018年、アメリカの大手玩具メーカーであるハズブロが、日本と一部アジアを除くパワーレンジャー関連玩具の製造権を買い取ったことで、バンダイナムコはその売上の大半を失うことになった。買収前の2017年決算資料では、パワーレンジャーを含むスーパー戦隊玩具の全世界売上は通期210億円(うち国内のみ88億円)であり、当時は仮面ライダーやウルトラマンと肩を並べる水準にあったという[i]。

この影響は、バンダイナムコホールディングスが親会社の四半期決算ごとに公表している「作品別売上高」にも明確に表れている。同社の開示によれば、スーパー戦隊の作品売上高(カッコ内は国内ホビー売上)は、2015年度の232億円(113億円)から、2020年度には68億円(60億円)へと、5年で7割近く落ち込んでいる。この間に生じた最大の変化がハズブロへの関連玩具製造権売却であることを踏まえれば、海外売上の大半が計上されなくなったことが、この急落の主因であったことは間違いない[ii]。

しかし、この数字はもう一つの事実も同時に示している。パワーレンジャー撤退の影響を受けないはずの国内ホビー売上そのものも、2020年度の60億円から、2021年度45億円、2022年度44億円へと、減少が続いているのである。その後2023年度は56億円、2024年度は54億円、2025年度は54億円とわずかに持ち直しているものの、2015年度の水準からすれば半分にも満たない[iii]。パワーレンジャーの撤退だけでは、この国内市場そのものの地盤沈下を説明することはできない。ここに、二つ目の要因――国内向けの主力商品である、巨大合体ロボそのものの不振――が関わってくる。

前節で見た通り、ガオレンジャー(2001年)以降のスーパー戦隊ロボは、パーツを入れ替えることで多様な形態を作り出すという設計を、シリーズを通じた体系的な原理へと発展させてきた。この設計思想は、その先で一つの構造的な問題を生むことになる。パーツを次々に追加していく方式は、必然的に、すべてのパーツを揃えた最終形態を高額化させるのである。2024年放送の『爆上戦隊ブンブンジャー』の合体ロボを例に取れば、単品のミニカーは1台1500円程度で購入できるものの、8台の車と大型トレーラーをすべて揃えて合体させる「DXブンブンジャーロボ 爆上4大ロボセット」は、1万6720円にもなる。合体ができなければ玩具としての魅力は半減してしまうため、最終的に子供や保護者が直面するのは、この高額な最終形態だということになる[iv]。

この問題は、玩具業界の内部でも認識されていた。玩具業界紙『月刊トイジャーナル』2020年2月号によれば、同年放送の『魔進戦隊キラメイジャー』では、従来の「1号ロボから順番に商品を購入していく」ことを前提とした「合体型MD」から、個々のロボット単体でも遊べるようにプレイバリューを高めた「単独型MD」へと、商品設計そのものを転換する試みがなされている[v]。これは裏を返せば、それまでの「揃えなければ完成しない」という設計こそが、購買のハードルを上げ、売上減少の一因になっているという認識が、開発側にすでに存在していたことを示している。

多根氏は、少子化や、スマートフォン・タブレットの普及によって玩具そのものへの子供たちの関心が薄れていることも、この長期低迷の背景にあると指摘している[vi]。パワーレンジャーという海外市場の喪失と、国内における合体ロボという主力商品の魅力低下――この二つの要因は、それぞれ独立した出来事でありながら、同じ時期に重なり合うことで、シリーズの経済的な基盤を静かに掘り崩していった。前節で見た「打ち切りではなく休止」という東映の説明も、こうした構造的な収益の劣化を踏まえれば、決して唐突な判断ではなかったことがわかる。

次節では、この休止と入れ替わる形で、東映が同じ時間帯に投入した新シリーズ「PROJECT R.E.D.」について、それが本当に歴史の反復と呼べるものなのかを検証する。



[i] 瑠璃光丸凪「50年続いた『スーパー戦隊シリーズ』終焉へ…仮面ライダー、ウルトラマンと明暗をわけた玩具の売上"一人負け"の真相」集英社オンライン、2025年11月30日。アニメ・ゲームライターの多根清史氏の解説として、「2018年にアメリカの大手玩具メーカーであるハズブロが、日本と一部アジアを除く玩具の製造権を買い取ることになり、バンダイナムコはパワーレンジャーズ関連玩具の売り上げを大幅に失うことになりました…ハズブロに権利を買収される前のバンダイナムコの2017年決算資料によると、パワーレンジャーズを含むスーパー戦隊玩具の全世界での売り上げは通期で210億円(国内のみの売り上げは88億円)となっており、いまの仮面ライダー、ウルトラマンの売り上げ水準と肩を並べていた」と紹介。
[ii] 「『スーパー戦隊』終了報道で"玩具売上推移"話題に 国内売上は10年で半減、50億円台を継続」オタク総研、2025年10月31日。バンダイナムコホールディングスが親会社の四半期決算ごとに公表している「作品別売上高」に基づき、「2015年度…232億円(113億円)/2020年度…68億円(60億円)」(カッコ内はうち国内ホビー売上)と紹介。「2015年ごろの200億円台から大きく減少しているが、これは2018年に『パワーレンジャー』の権利関係をハズブロ社が買収したため、海外売上の大半が計上されなくなったことが経緯にある」と分析。
[iii] 同上、オタク総研、2025年10月31日。バンダイナムコホールディングスの「作品別売上高」開示として、「2021年度…52億円(45億円)/2022年度…50億円(44億円)/2023年度…65億円(56億円)/2024年度…65億円(54億円)/2025年度…64億円(54億円)」(カッコ内はうち国内ホビー売上)と紹介。
[iv] 「スーパー戦隊と仮面ライダーで大差がついた『おもちゃの売り上げ』。"憧れの象徴"だった合体ロボが売れなくなったワケ」日刊SPA!、2025年12月11日。「『爆上戦隊ブンブンジャー』の合体ロボは、パトカーやショベルカー、スポーツカー、クラシックカーなど8台のクルマと、それを収める大型トレーラーを合体させてロボットにするというもの…クルマは1台1500円程度で購入できますが、ロボットに変形できる『DXブンブンジャーロボ 爆上4大ロボセット』ともなると1万6720円にもなるのです…それゆえに合体ができないと魅力は半減してしまいます。そのため、最終形態は高額になってしまうのです」と記載。
[v] kasumi「スーパー戦隊の売上げが4年前から75%減なのは時間変更のせいではないよ、というお話」プリキュアの数字ブログ、2021年5月13日。玩具業界紙『月刊トイジャーナル』(東京玩具人形協同組合)2020年2月号8頁の記述として、「『魔進戦隊キラメイジャー』においては、従来の1号ロボから順番にロボを集めていく『合体型MD』から、各ロボットのプレイバリューを上げ、単独で楽しめる『単独型MD』への変更を計った」と紹介。
[vi] 瑠璃光丸凪、前掲。多根清史氏の発言として、「なんといってもいちばんの理由はメインの視聴者である子どもの減少、すなわち少子化でしょう。それに加えて昨今では無料で遊べるスマホゲームが幼い世代にも普及するなど、競合する娯楽メディアが昭和・平成と比べると格段に増えてきています…近年はスマホやタブレットの普及によって、玩具に魅力を感じない子どもたちが増えてきているのだと考えられます」と記載。

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