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第6節 大森敬仁――令和ライダーの主題選定という賭け

大森敬仁は、1980年、愛媛県に生まれた。渡米してカリフォルニア州立大学ロングビーチ校で映画学を専攻し、帰国後の2003年に東映へ入社する。
もっとも、入社当時は東映が特撮ヒーロー番組を制作していることすら知らなかったという。2004年、『はぐれ刑事純情派』のプロデューサー補として現場に入り、翌2005年『仮面ライダー響鬼』で初めて特撮に携わる。入社後に『仮面ライダー555』を見て、「今東映で一番おもしろいことがやれる」部署だと感じたと、大森自身が振り返っている[i]

2008年『仮面ライダーキバ』でプロデューサーに昇格。スーパー戦隊シリーズにも一時期携わったのち、2013年『獣電戦隊キョウリュウジャー』で
チーフプロデューサーに昇格する。以後、2014年『仮面ライダードライブ』、2016年『仮面ライダーエグゼイド』、2017年『仮面ライダービルド』と、ライダーシリーズのチーフを4作連続で務め、2019年、令和最初の仮面ライダーとなる『仮面ライダーゼロワン』を主導した。2023年『王様
戦隊キングオージャー』を最後に、翌年3月末で東映を退社している[ii]

『ゼロワン』がAI社会をテーマに選んだ理由について、大森は次のように
説明している。平成の時代から数えて21作目となる仮面ライダーシリーズは、毎回、人間にとっての新しい「恐怖の対象」を模索し続けてきた。AIが人間を凌駕するというのは使い古されたSFの主題ではあるが、それが今、
現実味を伴った恐怖として立ち上がってきている感覚があり、即座に「いいね」と採用を決めたのだという[iii]

AIという主題そのものは、一見すると子供向け番組の枠を超えているようにも見える。だが、その受け止められ方は必ずしも「大人向けすぎる」というものではなかった。脚本家の高橋悠也や監修に加わった情報学研究者の佐藤一郎(国立情報学研究所)は、AIという主題を主要視聴層である4〜6歳児にも理解可能な物語に翻訳するため、擬人化ロボット「ヒューマギア」という設定を介在させる工夫を凝らしたと証言している[iv]。深刻な主題を選びながら、その実装においては間口を狭めない――大森の仕事の質を測るとすれば、この二重の判断のうちにこそ、その輪郭があるのかもしれない。

次節では、令和ライダーとはまったく異なる戦場――怪獣映画の興行――でプロデューサーという仕事を担ってきた者たちに目を向ける。富山省吾、
土川勉、そして市川南。彼らを並べて見えてくるのは、プロデューサーと
いう仕事を「商業的制約」の一言で片づけることの危うさである。



[i] 大森は入社時点では東映が特撮ヒーロー番組を製作していることを知らず、『仮面ライダー555』(2003年)視聴後に「仮面ライダーってこんなおもしろいことをやっているんだ」と驚き、翌2005年に『仮面ライダー響鬼』への配属を告げられた際には「今東映で一番おもしろいことがやれる」と思ったと証言している。公文哲「さあ、新しい『仮面ライダー』を始めようか-東映・大森Pが語るエグゼイドとビルドの"二か年計画"」マイナビニュース、2017年10月16日。
なお、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校での映画学専攻については、「映画会社でプロデューサーとして活躍中|interview archives」NCN米国大学機構「留学体験談」ページ。
[ii] 2008年『仮面ライダーキバ』でのプロデューサー昇格、スーパー戦隊シリーズへの携わり、2013年『獣電戦隊キョウリュウジャー』でのチーフプロデューサー昇格、2014年『仮面ライダードライブ』、2016年『仮面ライダーエグゼイド』、2017年『仮面ライダービルド』でのチーフプロデューサー歴、2019年『仮面ライダーゼロワン』でのチーフプロデューサー就任については、大森敬仁氏のプロフィールとして「『仮面ライダーゼロワン』大森Pが語る誕生秘話」(秋田英夫、マイナビニュース、2019年9月1日)に拠る。
2023年『王様戦隊キングオージャー』を最後に翌年3月末で東映を退社した経緯については、「大森敬仁プロデューサー、東映退社を発表」(オリコンニュース、2024年3月31日)に拠る。
[iii]令和初の仮面ライダー『ゼロワン』はなぜ"AI社会"を描くのか」エンジニアtype(転職type)。
[iv]親として子どもに伝えるべき人工知能のこと──『仮面ライダーゼロワン』から学ぶ、未来の子どもたちの仕事」(文:野口理恵、WIRED.jp、2019年12月29日)。プロデューサー大森敬仁・脚本家高橋悠也・コンピュータサイエンス研究者佐藤一郎(国立情報学研究所)による鼎談記事。高橋は、AIを学術的・専門的な切り口で描いても子どもには理解されないため、擬人化ロボット「ヒューマギア」を配することで物語に翻訳したと述べ、佐藤は台本における「学習」を軸としたAI描写について、大人向けSF映画以上に踏み込んだ内容だと評価している。

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