第4節 「懐かしさ」の商品化
前節で見た通り、スーパー戦隊は1990年代以降、モチーフと造形を多様化させながら、シリーズ自身の「引用可能な素材のストック」を蓄積してきた。この蓄積を、周年や作品数という記念性を待たずに、より日常的なコンテンツとして直接収益化していく動きも並行して進んでいく。その典型が、通常放送シーズン中に組み込まれる、いわゆる「レジェンド回」である。2016年放送の第40作『動物戦隊ジュウオウジャー』第28・29話は、周年でも作品数の記念でもなく、シリーズの通算放送回数が2000回に達したことを記念して、『海賊戦隊ゴーカイジャー』の6人がゲスト出演するという構成が採られた[i]。放送開始からの周年、通算の作品数に続き、通算放送回数という
第三の物差しまでもが、歴代戦隊を呼び出す口実として機能するようになっていたことがうかがえる。
ジュウオウジャーは孤立した例ではない。2015年放送の第39作『手裏剣戦隊ニンニンジャー』は、シリーズの放送開始から40周年にあたる記念作品であり、劇中には歴代のヒーローたちが次々とゲスト出演した。第7話では、忍者モチーフの先輩にあたる『忍者戦隊カクレンジャー』のサスケ/ニンジャレッドと『忍風戦隊ハリケンジャー』の椎名鷹介/ハリケンレッドが、シリーズ第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』のアカレンジャーとともに登場した。第34話には、メタルヒーローシリーズ『世界忍者戦ジライヤ』の山地闘破/ジライヤが客演し、第38話には、忍者ヒーローという枠を超えて、『魔法戦隊マジレンジャー』の小津翼/マジイエローが、メンバーの一人の魔法の師匠という設定で登場した。さらに第43話では、『忍風戦隊ハリケンジャー』の追加戦士シュリケンジャーが「忍者の名誉を守る会」の会員として姿を見せている[ii]。忍者モチーフの先輩たちにとどまらず、メタルヒーロー、魔法戦隊、追加戦士という異なる系譜のヒーローまでもがゲストとして動員されたこの構成は、40周年という節目が、単なる同系統作品内の懐旧にとどまらない、ジャンル横断的な自己引用の機会として機能していたことを示している。
2017年放送の第41作『宇宙戦隊キュウレンジャー』第18話にも、『特捜戦隊デカレンジャー』の赤座伴番/デカレッド、江成仙一/デカグリーン、胡堂小梅/デカピンク、ドギー・クルーガーと、メタルヒーローシリーズ『宇宙刑事ギャバン』の系譜を継ぐ十文字撃/宇宙刑事ギャバンtypeGがゲスト出演し、レッド同士・シルバー同士の特別チームが組まれるとともに、司令官同士の共演も実現している[iii]。
2023年放送の第47作『王様戦隊キングオージャー』では、TVシリーズ第32・33話に、前作『獣電戦隊キョウリュウジャー』(2013年)のオリジナルキャストが集結するという、周年でも記念作でもない通常放送内でのゲスト回が組まれている[iv]。
2024年放送の第48作『爆上戦隊ブンブンジャー』も、同年5月19日放送のバクアゲ12「爆上エンジン」に『炎神戦隊ゴーオンジャー』(2008〜2009年)からゴーオンレッドを、同年10月6日放送のバクアゲ32「地獄の電車ごっこ」に『烈車戦隊トッキュウジャー』(2014〜2015年)からライト/トッキュウ1号と虹野明/トッキュウ6号を、翌2025年1月5日放送のバクアゲ43「豪快なハンドル」に『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011〜2012年)からジョー・ギブケン/ゴーカイブルーを、それぞれ招いており[v]、こうしたゲスト回は、もはや周年や記念という特別な理由づけを必要としない、ほぼ毎年当然のように組み込まれる定番の企画になっていたことがわかる。
さらに興味深いのは、2017年放送の第41作『宇宙戦隊キュウレンジャー』が、わずか8年後の2025年には、後継作『爆上戦隊ブンブンジャー』のスピンオフ配信作品『formation lap 始末屋 オブ ギャラクシー』に、キュウレンジャー側の鳳ツルギとショウ・ロンポーが「歴代追加戦士」の一員として客演するという形で、自らも「懐かしまれる側」に回っていたことである[vi]。歴代戦隊というストックを呼び出すサイクルは、もはや数十年単位の周年を待つものではなく、放送終了から一桁年という短いスパンで、次々と新しい作品自身をも巻き込みながら回転し続けるようになっていた。
もっとも、こうした懐かしさの商品化には、東映自身がその内側から限界を意識していたことをうかがわせる例もある。2012年4月6日から6月29日にかけてBS朝日およびTOKYO MXで放送された『非公認戦隊アキバレンジャー』は、東映自身が制作した、公式のスーパー戦隊シリーズに対する「非公認」を名乗るセルフパロディ作品だった[vii]。日曜朝の本編とは異なる深夜枠で放送された本作は、歴代シリーズのパロディやメタな展開を随所に盛り込み、大人のコアなファンに向けて制作されている。脚本を手がけたのは荒川稔久・香村純子であり[viii]、前節で見た通り、荒川はまさにこの時期、歴代戦隊を動員する自己言及的な作劇の実務を一貫して担ってきた当人である。
自己言及的な作劇を実務として支えてきた脚本家自身が、同じ時期に、その手法が陥りかねない自己模倣を笑い飛ばすパロディ作品にも関わっていたという事実は、示唆的である。歴代戦隊というストックを呼び出し続けるという発想そのものが、遅くとも2010年代初頭までには、真剣な物語装置であると同時に、いつでも自己戯画化の対象にもなり得る、使い古された「型」として自覚されていたことになる。
もっとも、この自覚が広く共有されていたとしても、それだけでシリーズの存続が保証されるわけではなかった。次節では、こうした懐かしさの蓄積と商品化の果てに、第49作『ゴジュウジャー』がスーパー戦隊シリーズの地上波放送休止という決断に至った経緯を、具体的に見ていく。
[i] 「スーパー戦隊シリーズ放送2000回記念だと! 9月の「ジュウオウジャー」に「ゴーカイジャー」登場決定」ねとらぼ(ITmedia)、2016年8月22日。海賊戦隊ゴーカイジャーの全メンバーが、9月4日放送の第28話「帰ってきた宇宙海賊」と9月11日放送の第29話「王者の中の王者」の2週にわたってゲスト出演したことを報じている。「スーパー戦隊シリーズ:2000回放送へ ジュウオウジャーとゴーカイジャーが競演」MANTANWEB、2016年8月22日。同記事は、エンディングテーマもゴーカイジャー主題歌「スーパー戦隊ヒーローゲッター」の最新版に差し替えられたことを伝えている。
[ii] 「手裏剣戦隊ニンニンジャー 忍びの7 春のニンジャ祭り!」東映オフィシャルサイト。ニンジャレッド/サスケ役の小川輝晃、ハリケンレッド/椎名鷹介役の塩谷瞬がゲスト出演したことを紹介。「手裏剣戦隊ニンニンジャー 忍びの8 時をかけるネコマタ」東映オフィシャルサイト。前話にアカレンジャーも登場したことを紹介。「手裏剣戦隊ニンニンジャー 忍びの34 伝説の世界忍者、ジライヤ参上!」東映オフィシャルサイト。山地闘破役の筒井巧がジライヤとして登場したことを紹介。「ニンニンジャー38話にマジイエローゲスト出演!ファンからは「10 YEARS AFTERフラグ?」」おたくま経済新聞、2015年11月16日。小津翼/マジイエロー役の松本寛也が第38話にゲスト出演したことを報じている。「手裏剣戦隊ニンニンジャー 忍びの43 伝説のニンジャ!妖怪かるた大作戦」東映オフィシャルサイト。シュリケンジャーが冬季講習の講師役として登場したことを紹介。
[iii] 「特捜戦隊デカレンジャー&宇宙刑事ギャバンが「キュウレンジャー」に本人出演!」シネマトゥデイ、2017年5月28日。第18話で、十文字撃/宇宙刑事ギャバンtypeGと赤座伴番ら宇宙刑事たちが登場し、キュウレンジャー司令官のショウ・ロンポーとデカレンジャーのボス、ドギー・クルーガーの共演や、シシレッドとデカレッドのレッドヒーロー同士、ヘビツカイシルバーとギャバンのシルバーヒーロー同士の特別チーム編成が描かれたことを紹介。「『キュウレンジャー』にギャバン&デカレッド、さらにドギーも参戦! 夢のコラボ続々」マイナビニュース、2017年5月28日。6月11日放送の第18話に十文字撃/ギャバンtypeGと赤座伴番/デカレッド、ドギー・クルーガーがゲスト出演することを報じ、デカグリーン/江成仙一役の伊藤陽佑、デカピンク/胡堂小梅役の菊地美香も同話にゲスト出演したことを伝えている。
[iv] 「第32話 遭遇!キョウリュウ!」東映株式会社公式サイト(王様戦隊キングオージャー エピソードガイド)。『獣電戦隊キョウリュウジャー』放送10周年を記念したコラボレーション企画であり、企画段階から始動していたことを紹介。「第33話 シューゴー!キングとキョウリュウ!」東映株式会社公式サイト。前話に続くキョウリュウジャーとのコラボレーション回であることを紹介。「『獣電戦隊キョウリュウジャー』登場記念!『王様戦隊キングオージャー』第32話・第33話オーディオコメンタリー(副音声)がTTFCにて配信決定!!」東映特撮ファンクラブ、2023年10月15日。10月8日放送の第32話で、キョウリュウジャーが守る地球にキングオージャーの面々が登場する展開になったことを報じている。「Vシネクスト2本立て『キングオージャーVSドンブラザーズ』『キングオージャーVSキョウリュウジャー』」電撃ホビーウェブ、2024年。VSキョウリュウジャーが、TVシリーズ32話・33話以来となるオリジナルキャストの集結だったことを伝えている。「Vシネクスト2本立て『キングオージャーVSドンブラザーズ』『キングオージャーVSキョウリュウジャー』」スーパーせんたいフレンズ、東映公式。同様に32話・33話以来の登場であることを紹介。
[v] 「マッハ全開のヒーロー・ゴーオンジャーが『爆上戦隊ブンブンジャー』に登場!」TELEMAGA.net、講談社、2024年。「『爆上戦隊ブンブンジャー』の2024年5月19日放送のバクアゲ12『爆上エンジン』に、2008年~2009年に放送されたスーパー戦隊シリーズ『炎神戦隊ゴーオンジャー』からゴーオンレッドが登場することが発表された」と記載。「『爆上戦隊ブンブンジャー』第32話に志尊淳がサプライズ出演」アニメイトタイムズ、2024年10月6日。トッキュウ1号/ライト役の志尊淳が第32話にサプライズ出演し、変身を解いてライトの姿でブンブンジャーと言葉を交わしたことを伝えている。「バクアゲるぜ!『ブンブンジャー』第31~40話イッキ読み!」TELEMAGA.net、講談社。同じ第32話にトッキュウ6号/虹野明(長濱慎)も登場したことを紹介。「『爆上戦隊ブンブンジャー』第43話に山田裕貴がゴーカイブルー役でサプライズ出演!」アニメイトタイムズ、2025年1月5日。ジョー・ギブケン/ゴーカイブルー役の山田裕貴が第43話にサプライズ出演し、レンジャーキーでブンブルーにゴーカイチェンジしたことを伝えている。「山田裕貴、『ブンブンジャー』にサプライズ出演」ORICON NEWS、2025年1月5日。第43話の内容について、レンジャーキーによるゴーカイチェンジを含めて詳述している。
[vi] 「スーパー戦隊シリーズ 歴代追加戦士が続々登場!『爆上戦隊ブンブンジャー formation lap 始末屋 オブ ギャラクシー』<歴代追加戦士 解禁第2弾!>【鳳ツルギ】&【ショウ・ロンポー】参戦!!」東映株式会社公式サイト。「2025年、東映特撮ファンクラブ(TTFC)オリジナル作品として配信する『爆上戦隊ブンブンジャー formation lap 始末屋 オブ ギャラクシー』の追加キャラクター解禁第2弾!『宇宙戦隊キュウレンジャー』の【鳳ツルギ】、【ショウ・ロンポー】の登場が発表」と記載。
[vii] 「『非公認戦隊アキバレンジャー』作品情報」V-STORAGE、バンダイナムコフィルムワークス公式。「『非公認戦隊アキバレンジャー』は2012年4月から6月にかけて放映された、東映制作の特撮テレビドラマです。『戦隊』ではありながら、『非公認』として『公認』のスーパー戦隊シリーズのセルフパロディや、スーパー戦隊のメタ要素を多く盛り込んだ大人とコアファン向けの戦隊作品です」と紹介。
[viii] 「『非公認戦隊アキバレンジャー』作品情報」V-STORAGE、バンダイナムコフィルムワークス公式。スタッフ欄に「プロデューサー:日笠淳・石川啓(東映)・矢田晃一(東映AG)/脚本:荒川稔久・香村純子/監督:田﨑竜太・鈴村展弘」と記載。
