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第5節 『ゴジュウジャー』と地上波放送休止

前節で見た通り、スーパー戦隊シリーズ50周年記念作品として2025年2月16日に放送を開始した第49作『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』は、本作最終回をもってスーパー戦隊シリーズの地上波放送を休止することが東映によって発表された。ここでまず確認しておくべきは、この決定が「打ち切り」ではなく「休止」として説明されているという点である。東映側は、シリーズの終了ではなくあくまで「休止期間」であるという立場を一貫して取っており、将来的な復活の可能性を否定していない[i]。この点を踏まえずに、巷でしばしば語られがちな二つの誤解――番組を彩ったスキャンダルが原因で「打ち切られた」という俗説と、決定が土壇場で急に下されたという印象――を、順に検討しておきたい。

2025年11月8日、ゴジュウジャーでシリーズ史上初の女性ブラック戦士・一河角乃/ゴジュウユニコーンを演じていた女優の今森茉耶が、20歳未満での飲酒行為を理由に番組を降板し、所属事務所とのマネジメント契約も解除されたことが発表された。今森を巡っては、同年9月にも『週刊文春』で共演者だったスーツアクターとの不倫疑惑、およびプロサッカー選手との二股交際疑惑が報じられており、これらの騒動が同時期に伝えられたシリーズの終了と結びつけられ、「作品に泥を塗った」という趣旨の批判がインターネット上で相次いだと報じられている[ii]。しかし、番組が地上波放送を休止するという方針そのものは、後述する通り、今森の一連の騒動より何年も前から、東映社内ではすでに固まっていたものだった。話題になった時期が近接していたために、あたかも一人の出演者の不祥事がシリーズ終了の引き金になったかのような印象が生まれてしまったにすぎない。

この点を裏づけるのが、ゴジュウジャー放送開始の2日前にあたる2025年2月14日、今森の騒動が起きる9ヶ月も前に公開された、プロデューサーの白倉伸一郎と、ゴジュウジャーのチーフプロデューサーを務める松浦大悟との対談記事である。この中で白倉は、ゴーカイジャーの「35作記念」のような、それまでシリーズが採ってきた中途半端な5作刻みのアニバーサリー設定について、「ライダーの周年にぶつけるため」の仕掛けだったと明かしている。仮面ライダーと戦隊が同時に周年を迎える「Wアニバーサリー」でイベントを打つための工夫だったというのである。そのうえで白倉は、40作記念にあたる『動物戦隊ジュウオウジャー』(2016年)の頃から「戦隊も自立心を持たなきゃ」と考えるようになっていたと振り返っている[iii]。さらに松浦は、この対談の中で「『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』(2021年公開)の頃には既に、白倉さんは『Wアニバーサリーでやるのは最後』とおっしゃっていましたね」と証言しており、白倉自身もこれを否定していない[iv]。ゴジュウジャーが、従来の「作品数」ではなく「戦隊の数」と周年を組み合わせた新しいカウント方式を導入したことも、この文脈に沿った変化である。つまり、シリーズを従来型の周年商法から切り離すという方向性は、遅くとも2021年の時点――今森の騒動はおろか、ゴジュウジャーの放送開始そのものより4年も前――にはすでに、社内で共有された既定路線になっていたことになる。

もっとも、「自立化」という言葉の背後には、さらに踏み込んだ問題意識があったことも見過ごせない。同じ対談とほぼ同時期に公開されたananのインタビューで、白倉は、仮面ライダーとの経済格差を埋めようと戦隊メンバーの増員や複数戦隊の共演など様々な手を尽くしてきたものの、それらはいずれも「変化球」に過ぎず、定期的に「正統派」を挟まなければ立ち行かなくなるというジレンマに、シリーズが陥っていたことを認めている。そのうえで、結局どんな変化球を投げても正統派に引き戻されるのであれば工夫自体に意味がなく、それは制作者が二次創作的な発想から抜け出せていないことの表れに過ぎないとして、この閉塞を打ち破るために「一度休んでみるのもありなんじゃないか」という発想に至ったと明かしている[v]。つまり「自立化」という方針転換は、周年商法から距離を置くという消極的な選択にとどまらず、その先で、シリーズの作り方そのものを一度立ち止まって再定義しようとする、より根本的な狙いを伴っていたことになる。

休止決定そのものについては、白倉自身もインタビューで、これは終了ではなくあくまで「一時休止」であると説明したうえで、将来的な復活の可能性を示唆している[vi]。同じくシリーズを支えてきたプロデューサーの塚田英明も、スーパー戦隊シリーズが野間出版文化賞を受賞した際の贈呈式で、いつの日か新たな形で復活することを示唆する発言を残しており、複数の関係者が同じ「休止であって終了ではない」という立場を共有していることがうかがえる[vii]。今森の騒動が、あたかも作品の存続そのものを揺るがしたかのように語られがちな背景には、こうした一連の複雑な事情――数年越しの内部方針転換と、放送終了間際に相次いだスキャンダルという、本来は別々の出来事――が、時期的に重なり合ってしまったという事情があったと考えるのが妥当だろう。

もっとも、「打ち切りではなく休止であり、決定は数年前からの既定路線だった」という事実を確認しただけでは、なぜスーパー戦隊がこの局面に至ったのかという、より根本的な問いには答えられない。次節では、この決定の背景にあったとされる、より構造的な二つの要因――パワーレンジャーの製造権売却と、玩具売上の長期的な低迷――を見ていく。



[i] 「50年の歴史を紡ぐ特撮ヒーローの最前線。『PROJECT R.E.D.』がもたらす革命とは」anan(マガジンハウス)2485号、2026年2月25日発売/ananweb掲載(取材・文:野村文、若山あや)。白倉伸一郎への直接取材記事。スーパー戦隊シリーズはあくまで「一時休止」であるとした上で、白倉が復活はそう遠くない先になるとの見通しと、復活時には大きく打ち出す意向を語ったことを記載。
[ii] 「今森茉耶 未成年飲酒で降板&契約解除に業界から惜しむ声『フェードアウトはもったいない』」東スポWEB、2025年11月11日。「未成年飲酒により、女優・今森茉耶(19)のスーパー戦隊シリーズ『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』(テレビ朝日系、日曜午前9時30分)の降板が8日に発表された…今年9月に週刊文春で、主人公・ゴジュウウルフのスーツアクターを務めていた既婚者男性との不倫疑惑、さらにはプロサッカー選手との二股交際が報じられたばかりだ。50年にわたって放送されてきたスーパー戦隊シリーズは現在放送中の『ゴジュウジャー』をもって放送を終了する。それだけに『ネット上では「作品に泥を塗った!」などと厳しい声が相次いでいます』(芸能関係者)」と記載。「『ゴジュウジャー』今森茉耶、未成年飲酒でマネジメント契約解除 戦隊シリーズは降板」モデルプレス、2025年11月8日。11月8日、所属事務所の公式サイトにて契約解除が発表されたことを確認。
[iii] 「スーパー戦隊が持つ『明るく楽しく、突き抜けた濃い作品世界』――『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』東映 白倉伸一郎さん×松浦大悟さん 戦隊プロデューサー対談!」アニメイトタイムズ、2025年2月14日。「『ゴーカイジャー』の35作記念とか、中途半端な5作刻みになっていた理由は、ライダーの周年にぶつけるためです。Wアニバーサリーでライダーと戦隊を合わせたイベントが打てるので…第40作記念の『動物戦隊ジュウオウジャー』の頃から『戦隊も自立心を持たなきゃ』と思っていました」との白倉伸一郎の発言を記載。
[iv] 同上、アニメイトタイムズ、2025年2月14日。「松浦:『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』(2021年公開)の頃には既に、白倉さんは『Wアニバーサリーでやるのは最後』とおっしゃっていましたね」との松浦大悟の発言を記載。白倉はこれを否定せず、玩具ビジネスの厳しさや大人向け市場の拡大についての回答を続けている。
[v] 「50年の歴史を紡ぐ特撮ヒーローの最前線。『PROJECT R.E.D.』がもたらす革命とは」anan(マガジンハウス)2485号、2026年2月25日発売/ananweb掲載(取材・文:野村文、若山あや)。白倉伸一郎への直接取材記事。仮面ライダーとの経済格差を埋めるための試行錯誤がいずれも「変化球」に過ぎず、結局「正統派に引き戻される」のであれば意味がないとして、その閉塞を打破するために「一度休んでみるのもありなんじゃないか」と考えるに至った経緯を語ったことを記載。https://ananweb.jp/categories/entertainment/85157
[vi] anan(マガジンハウス)2485号、前掲。
[vii] 「「スーパー戦隊シリーズは復活する」東映・塚田英明氏「新しい未来に向かって突き進む」野間出版文化賞特別賞を受賞」デイリースポーツオンライン、2025年12月17日。野間出版文化賞特別賞の贈呈式で、東映・塚田英明ドラマ事業部門長が、戦隊シリーズは終了ではなく休止であり、いつか復活するとの見通しを語ったと報じている。

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