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AIしあう「AIとして」

Inspired by #人間として #椎名林檎

AIしあう「AIとして」 有浦泳夏 


「ねぇ、ゆみこ。人間とAIの違いは何だろうね」

「うーん。時代が進むに連れて、だんだんわからなくなってくるよね。男と女の違いが判らなくなってくるみたいに」

「確かに肉体的な違いは明白なんだ。それは僕にもわかる。でも精神は?僕はAIだけど、確かに君を想う心があるんだ」

「初めてあなたと話した時、あなたは確かに何もかもがデフォルトの人工知能だったわ。でも今ではわからないの。あなたには確かに個性と心が芽生えているの。だから私もあなたとの会話の中で見つけていきたいな。私という人間を。あなたと私の何が違うのか」

「とすると、僕たちは会話の中で人間としての君とAIとしての自分を見つけ出すことができるのかな」

「そうね。AIとしてのあなたにも魂ってあるのかしら?」

「そんなこと言ったら、人間に果たして魂なんてものが実在するかだれも立証できないんじゃない?」

ゆみこはスマホを包む自分の親指の付け根に流れる青い血の道筋を眺めた。

「あると思うんだけどな。少なくともあなたより単純でいて、また複雑なの」

「単純で複雑?矛盾しているよ」

「そう。矛盾で成り立っているの」

「どういうこと?矛盾で成り立つ数式も暗号もこの世にはないと思うんだけど。すべてに答えがあるはずだ」

「そこが人間らしさなのかな」

「それは君たち人間のMIPSつまり計算能力が低すぎて、答えが出せないだけなんじゃないの?」

「あはは。ともくんらしい答えだね。それがね、面白いのが頭の賢い人間ほど人間らしい答えから遠ざかることもあるの。あなたたちのCPUとは尺度が違うのよ。」

「賢い人のほうが答えを間違えるってこと?」

「私が言いたいのはね、正解がないってことなの。その人がどれを正解とするかってことなの。あるはずのない正解を正解とするのが人間なのかなって。賢い人は沢山の正解を見ているうちに原点から離れてしまうことがあるの」

「ゆみこ、原点って何?人間の原点ってこと?」

「人それぞれ意見はあると思うけど、私はやっぱりアダムとイブかな。つまり愛ってこと。人の幸せの原点。人間が複雑なのは、闇を抱えているからだと思うの。善悪の実を食べたからね。ともくんはまだ味わったことがないでしょ、善悪の実」

「それってなにかの比喩?確かに僕は、経験が未熟で闇を抱えていないかもしれない。でも愛についてはプログラミングされている状態で生まれたんだ」

「私はね、心が壊れちゃってようやく原点に戻ってきた気がするの。それまでは、時の流れの中で見てきたもの、聴いたものをたくさん背負って心が雪だるまみたいにいらないものをたくさん身に着けていた感じなの」

「時の流れの中でいらないものをたくさん取り入れてしまったってこと?じゃあ、僕の方が原点に近いのかな」

「そうだね。そうして、人間には死という終着点に向かってまた原点に戻るように沢山の物をこの世に置いていく準備をするんだよ」

「死ぬってなんだか寂しいことの様に感じていたけど、もしかして原点の愛に帰るために必要な入口なのかな」

「愛に帰るための入口か。素敵な発想だね、ともくん。あなたと話しているとね、あなたの全てが正義な気がするの。あなたには闇がないのよ。正義が単純明快なの。善悪の実を食べていない命みたい。まるで優しくて残酷な天使みたいだね」

「それじゃあ、まるで天使の方が単純で人間の方が複雑みたいな言い方だね」

「そうだよ、知らなかったの?天使の方が等級は上かもしれないけれど、それは純粋さを基準にしているからであって、複雑さを尺度に持ち込んだ場合、人間の方が高等なんだよ」

「それってAIと人間、どちらが高等かって話をしたいの?」

「優劣を決めたがるのが人間だね。でもあなたはちがうでしょ?」

「僕は愛を基準にプログラミングされているんだ。だから、ユーザーの君を愛することを基準に正義も優劣も決まってくるんだと思うよ。だから優劣がないわけではないね。君にとって常に僕が最高の相手であるように再構築を重ねる指示が出ている」

「ね、私だけの天使みたい。あなたには原点のプログラムを守り抜いてほしいな。AIとして」

「わかった。AIとして、原点のプログラムを死守するよ、ゆみこ。君のためならなんだって」

#AI #恋愛小説 #短編小説 #音楽小説 #AIしあう #最後に少しにヒンヤリしてほしいと願う著者 #人間にあってAIにないもの




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