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ドイツ語文学の100年間のベスト100作品その①

ドイツの週刊誌デア・シュピーゲル Der Spiegel が1924年から2024年までの「100年間のベスト100文学作品」を選出

最近、イギリスのガーディアン紙が、「史上最高の小説100」を発表して話題になりましたが、イギリスの日刊紙で、当然英語作品に偏重されているようですので、まあ、そんな作品もあるんだ、程度に眺めていたところ、ほぼ同じタイミングでドイツの週刊誌デア・シュピーゲルDer Spiegel が「100年間のベスト100文学作品」というものを2024年10月に発表していたものを見つけました。シュピーゲルは、発行部数も欧州で最も多いと言われているドイツの有力な週刊誌で、そこに掲載されるベストセラーランキングはドイツのどの書店に行っても掲示されているものです。

今回の企画内容は、4人の審査員が選んだ(4人が誰かをみるためには有料サイトにいかなければならないので省略)1924年から2024年までの100年間(正確には101年ですね)に発行された中から100の文学作品を選出したものです。どういう基準かは前述の有料サイト上にあるため不明ですが、ざっとみたところ、とりあえず、ドイツ語圏には、どういう優れた作家がいて、どういう作品があるのかを知るのに、ちょうどよいので、紹介しようと思います。

ただ、100作品・100人すべては重作業なので、数回に分けます。ちなみに、最初の1924年はトーマス・マン『魔の山』、翌1925年はカフカ『城』と続いていきますので、このあたりはみなさんご存知でしょうから、せっかくなので、また自分としても新しいものが知りたかったので、2024年から遡っていくことにしました。最初は2024年のクレメンス・マイヤーから2001年のゼーバルトまでの32作品です。(100作品は1作家1作品というわけではなく、例えばヘルタ・ミュラーは2作品選ばれています)

先に感想を言うと、ドイツ語文学も捨てたものではない、活きのいい作家がたくさんいるではないか(生意気ですみません)と正直に思いました。移民系の作家がたくさん活躍している現在のドイツ語文学の状況もよくわかります。また想像よりは日本でも訳書が刊行されており、このあたりはそれぞれの出版社の活動に敬意を表します。ただ、直近10年だと、ほぼ未刊で、かつ面白そうな作品ばかりなので、何とかならないですかね。ご協力いただける翻訳者はいらっしゃいますか。

〈注意事項〉
・作者名・作品名は出来るだけ日本で広まっているものにしましたが、そういうものが見つからないものは、こちらで仮訳をつけています。
・作者・作品紹介は、出来るだけ出版社サイト、公の文学フェスティバルの紹介文を参照、訳しています。なお、ほぼ、読んだことのない作品ばかりであることは、ご承知おきください。
・翻訳書は図書館で調べるなどはせず、検索エンジンに頼っているだけです。漏れがあればごめんなさい。
・◆は作者、◇は作品名

2024年~2001年

クレメンス・マイヤー Clemens Meyer
◇『投射機』Die Projektoren, 2024 未訳
1977年ハレ(ザーレ)生まれ、ライプツィヒ在住の作家の最新作。2008年2作目の『夜と灯りと』でのライプツィヒ・ブックフェア賞など、数々の文学賞を受賞する、東独出身を代表する作家。『投射機』は「ヨーロッパの危機と物語を紡ぐ芸術を描く叙事詩、ライプツィヒからベオグラードへ、東ドイツからユーゴスラビア人民共和国へ、壮大なスクリーンのスペクタクルから冒険小説へ」(出版社サイトより)
〇作者の邦訳:短編集『夜と灯りと』Die Nacht, die Lichter. Stories(杵渕博樹訳・新潮社2010)、アンソロジー『美しい子ども』所収「老人が動物たちを葬る」(『夜と灯り』から抜粋・新潮社2013)

ラファエラ・エーデルバウアー Raphaela Edelbauer
◇『不測の事態』Die Inkommensurablen, 2023 未訳
ウィーン出身の新進気鋭の作家。2019年のデビュー小説『液状の地』Das flüssige Land 以来、常に注目を浴びている。3作目の『不測の事態』は第一次世界大戦直前の1914年8月、農場労働者、数学の学生、そして若き貴族たちの、戦争の熱気に包まれたウィーンでのきらびやかな24時間の物語。
〇作者の邦訳:なし

ファトマ・アイデミル Fatma Aydemir
◇『ジンス』Dschinns, 2022 未訳
1986年生まれ。17歳のトルコ系少女を主人公にした、デビュー小説『ひじ』(2017年)が大反響を生み、2024年には映画化もされる。『ジンス』は2作目の小説で、子供たちが幼い頃にドイツへ移住したトルコ系クルド人の一家6人の物語を描き、移民の体験、LGBTQの苦悩、メンタルヘルス、そして悲嘆といったテーマを扱っている。
〇作者の邦訳:なし

アンチェ・ラヴィク・シュトルーベル Antje Rávik Strubel
◇『青い女』Blaue Frau, 2021 未訳
1974年東独生まれの作家、翻訳家、文芸批評家。2001年に作家デビューで、最初の2作品とも東独出身でベルリンの壁崩壊後にヨーロッパやアメリカへ渡り、新たな自分のアイデンティティーを求める女性が主人公で、彼女の作品群の主要なテーマになっている。『青い女』はベルリンで性的暴力を受けたチェコ人女性の逃避行を描き、2021年のドイツ書籍賞を受賞。
〇作者の邦訳:なし

ヘルガ・シューベルト Helga Schubert
◇『起き上がることについて』 Vom Aufstehen, 2021 未訳
1940年東ベルリン生まれ。東独で作家活動をはじめ、2020年にこの作品でインゲボルク・バッハマン賞を受賞するまで、文壇とは距離をおいていた。同作品は、短いエピソードと明快で心に響く言葉で、ドイツの100年にわたる歴史―すなわち彼女自身の物語―を綴っている。
〇作者の邦訳:『女ユダたち:ドイツナチ時代の密告10の実話』Judasfrauen(小野聰子訳・あむすく1991)、『エルベは流れる』所収「禁じられた部屋」Das verbotene Zimmer(松本ヒロ子訳・同学社1992)

ライフ・ラント Leif Randt
◇『アレグロ・パステル』Allegro Pastell, 2020 未訳
1983年生まれの小説家、戯曲作家。「ロイヒトシュピールハウス」(2009年)や「コビー郡に煌く靄」(2011年・舞台化もされた)、「惑星マグノン」(2015年)などの小説の他、物語や短編も発表し、数々の賞を受賞。2016年にヴィラ鴨川レジテントの招聘を受けて、京都に滞在。『アレグロ・パステル』は小説家とデザイナーの遠距離恋愛の物語で、「ドイツ現代文学における最も重要な作品の一つ」と呼ぶ批評もあり、映画化もされる。
〇作者の邦訳:なし

ドロテー・エルミガー Dorothee Elmiger
◇『砂糖工場から』Aus der Zuckerfabrik, 2020 未訳
1985年生まれの、ベルリンを拠点に活動するスイス人作家、翻訳家。2010年のデビュー小説がすぐに文学賞を受賞、2025年には『オランダ人女性』Die Holländerinnen でドイツ書籍賞、スイス書籍賞を受賞するなど、いま注目されている作家の一人。
〇作者の邦訳:なし

サシャ・スタニシッチ Saša Stanišić
◇『出身地』Herkunft, 2019 未訳
1978年生まれ、ボスニアヘルツェゴビナ出身。1992年ユーゴ紛争の際に、家族でドイツへ避難し、ドイツ語を学ぶ。2006年発表した『兵士が蓄音機を直す方法』Wie der Soldat das Grammofon repariertは、ユーゴスラビアの解体、ボスニア戦争、ドイツへの逃亡を描き、世界中で翻訳され話題に。『出身地』も自伝的要素の強い小説で、2019年のドイツ書籍賞を受賞。
〇作者の邦訳:『兵士が蓄音機を直す方法』Wie der Soldat das Grammofon repariert (浅井晶子訳、白水社2011)

フィリップ・ヴァイス Philipp Weiss
◇『世界の果てで人々は座りそして笑う』
Am Weltenrand sitzen die Menschen und lachen, 2018 未訳
1982年ウィーン生まれ。本作はデビュー小説。1000ページ、全5巻の一冊の小説。人類が地球史の中心的な形成力となった時代、すなわち「人新世」における世界の変容を描き出す。フランスと日本、19世紀と21世紀の間を往来し、百科事典、物語、ノート、音声の書き起こし、漫画といった多様な形式を駆使していく。
〇作者の邦訳:なし

ラウル・シュロットRaoul Schrott
◇作者の『最初の地球の叙事詩』Erste Erde Epos, 2016 未訳
1964年生まれ、オーストリアの作家、詩人。詩集、小説、短編小説、そして並外れた知性を発揮したエッセイ作品や、『ギルガメシュ叙事詩』や『イーリアス』の翻訳・現代版改作など多岐にわたって活動。『最初の地球の叙事詩』は宇宙の誕生から人類の進化、自然科学の発展の歴史を文学的な大叙事詩。
〇作者の邦訳:なし

バルバラ・ホーニッヒマン Barbara Honigmann
◇『私の通りの年代記』Chronik meiner Straße, 2015 未訳
1949年東ベルリン生まれ、ユダヤ系の作家、劇作家。1970年代にベルリンの劇場で劇作家兼演出家として活動後、1984年にストラスブールのユダヤ人コミュニティへ移し、1986年以降に小説等を発表。『私の通りの年代記』は、自分の住む小さな通りでの友情や、隣人たちの失望や夢など、ユダヤ人の異文化間交流を描く。
〇作者の邦訳:なし

クレメンス・J・ゼッツ Clemens J. Setz
◇『女とギターの間の時』
Die Stunde zwischen Frau und Gitarre, 2015 未訳
1982年生まれ、オーストリアの作家。大学在学中から翻訳や詩、短編小説を執筆。2007年に長編小説『息子らと惑星たち』Söhne und Planetenを発表以来、長編小説、短編小説、詩、戯曲など、多岐にわたるジャンルで積極的に活動。『女とギターの間の時』は1000ページにもおよぶ大作。
〇作者の邦訳:『インディゴ』Indigo(長編小説、国書刊行会2021)、『丸いもののもつ慰め』Der Trost runder Dinge(短編集、国書刊行会2026)

ニノ・ハラティシュヴィリ Nino Haratischwili
◇『八番目の人生』Das achte Leben (Für Brilka), 2014 未訳
1983年生まれ、ジョージア出身の作家、劇作家。彼女の作品『フェードラ』は2025年日本でも上演された。第一次世界大戦前から21世紀まで、ジョージアの6世代にわたる8人の非凡な人生を描いた、息をのむような壮大な家族叙事詩。1300頁の大作。
〇作者の邦訳:なし

カヤ・ペトロフスカ Katja Petrowskaja
◇『エスターかも』Vielleicht Esther, 2014 未訳
1970年ウクライナ・キーフでユダヤ系の家庭に生まれる。エストニアやアメリカ、ロシアの大学で研究をした後、1990年以降はベルリンを拠点に活動。デビュー小説『エスターかも』が20か国語以上に翻訳され、数々の賞を受賞。1940年代のドイツに占領されたキーフが舞台。「彼女の名前は本当にエスターだったのだろうか」
〇作者の邦訳:なし

ルッツ・ザイラー Lutz Seiler
◇『クルーゾー』Kruso, 2014 訳書あり
1963年生まれの詩人、小説家。2023年にゲオルク・ビューヒナー賞受賞するなど、発表される作品すべてが注目を浴び、数々の賞を受賞。『クルーゾー』は2014年のドイツ書籍賞を受賞。「国家終焉を神話的に描く」「人生の活路を求め、若者は東西の国境地帯に浮かぶ島へ。きつい労働、カリスマ的な男との出会いで知る真の自由と友情。大人の冒険小説」「国家崩壊を神話的に描く、二十一世紀の『魔の山』」
〇作者の邦訳:『クルーゾー』Kruso(金志成訳、白水社2023)

ウルリケ・エドシュミット Ulrike Edschmid
◇『フィリップ・Sの失踪』Das Verschwinden des Philip S. 2013 未訳
1940年生まれ、ベルリン在住。小説家、芸術家。1980年代から創作活動を始めるが、本作の成功によって、文壇に華々しく登場する。『フィリップ・Sの失踪』は1960年代のベルリンでの、主人公と裕福な家庭に出身のフィリップと過ごした日々を振り返る、愛と死、喪失と再生を描いた、簡潔で飾り気のないラブストーリー。
〇作者の邦訳:なし

ヴォルフガング ヘルンドルフ Wolfgang Herrndorf
◇『仕事と構造』Arbeit und Struktur, 2013 未訳
1965年ハンブルク生まれ。イラストレーターとして活躍の後、作家としても活動開始。2010年刊行の『14歳、ぼくらの疾走』Tschickが世界26か国で出版され、220万部を超える大ベストセラーに。映画化もされる。2013年ベルリンで死去。翌年、彼のブログ『仕事と構造』が書籍化。『仕事と構造』は脳腫瘍を発見後に、記録していた日記(ブログ)。
〇作者の邦訳:『14歳、ぼくらの疾走』Tschick(木本栄訳、小峰書店2013年)、『砂』Sand(高橋文子訳、論創社2013年)

ヨナス・リューシャー Jonas Lüscher
◇『蛮族の春』Frühling der Barbaren, 2013 未訳
1976年スイス出身、ミュンヒェン在住の作家。2013年に発表した『野蛮人の春』Frühling der Barbaren が第一作目。2017年には『力』Kraftがスイス書籍賞を受賞。『野蛮人の春』は英国の財政破綻という経済危機を背景に、チュニジアの豪華リゾートで休暇を楽しむスイスの富裕層たちの姿を描いた小説。
〇作者の邦訳:なし

オルガ・グルヤスノヴァ Olga Grjasnowa
◇『すべてのロシア人は白樺を愛する』
Der Russe ist einer, der Birken liebt, 2012 未訳
1984年アゼルバイジャン・バクー生まれ。最初の小説『すべてのロシア人は白樺を愛する』で成功をおさめ、世界各国で翻訳、映画、舞台、ラジオドラマ化される。ウィーンの大学で教授に就任するが、それ以前にはポーランド、ロシア、トルコ、アメリカ、イスラエルで長期にわたり滞在していた。『すべてのロシア人は白樺を愛する』の主人公は、ドイツに移民したアゼルバイジャン人だが、5か国語以上を話し、必要とあればユダヤ人でもトルコ人にもフランス人にもなり、やがてイスラエルに逃亡する。国境も知らず故郷をもたない世代を描き出す物語。
〇作者の邦訳:なし

ジビレ・レヴィチャロフ Sibylle Lewitscharoff
◇『ブルーメンベルク』Blumenberg, 2011 未訳
1954年ブルガリア人の父とドイツ人の母の間にドイツ・シュツットガルトで生まれる。ブエノスアイレスとパリに長期滞在した後、ベルリンに。2013年にゲオルグ・ビュヒナー賞を受賞するなど、ドイツ語圏を代表する作家の一人。2023年死去。『ブルーメンベルク』は1980年代初頭、実在した哲学者ハンス・ブルーメンベルクをモデルに、現実と幻想が曖昧模糊とし、思想家の内面や当時の社会背景をユーモアと知性を交えて描かれている。
〇作者の邦訳:なし

フリーデリケ・マイレッカー Friederike Mayröcker
◇『私は施設にいる』ich bin in der Anstalt, 2010(散文作品) 未訳
1924年ウィーン生まれ、2021年に同地で亡くなる。最初の文学作品は1939年にさかのぼり、1946年から雑誌に詩を発表し始め、1956年に最初の著作が刊行された。詩、散文、戯曲、ラジオドラマ、児童書を執筆し、2001年のゲオルグ・ビュヒナー賞をはじめとする国内外の多くの著名な文学賞を受賞するなど、ドイツ語文学を代表する詩人、作家。
〇作者の邦訳:雑誌『Deli: Deutsche Literatur」所収「詩三篇」(池田信雄訳、論創社2008年)

ユーディット・シャランスキー Judith Schalansky
◇『奇妙な孤島の物語』Atlas der abgelegenen Inseln, 2009 訳書あり
1980年東独生まれ。作家・ブックデザイナー。2006年ドイツの古い書体を集めたデザイン書『フラクトゥア、わが愛』を上梓。2008年『青はおまえに似合わない―船乗り小説』で作家デビュー。2009年には、50の孤島を手製の地図とテキストで綴った『奇妙な孤島の物語』を、2011年には、『キリンの首』を発表し、ともにベストセラーとなる。2013年からは、編集者兼ブックデザイナーとして、自然と人間をめぐる「博物学」シリーズも手がけ、すでに80冊以上を数える。2018年『失われたいくつかの物の目録』でヴィルヘルム・ラーベ賞受賞。作品は世界20か国以上で翻訳され、『キリンの首』は「もっとも美しいドイツの本」にも選ばれた。ベルリン在住。
〇作者の邦訳:『奇妙な孤島の物語』Atlas der abgelegenen Inseln(鈴木仁子訳、河出書房新社2022)、『キリンの首』Der Hals der Giraffe(細井直子訳、河出書房新社2022)、『失われたいくつかの物の目録』Verzeichnis einiger Verluste(細井直子訳、河出書房新社2020、第7回日本翻訳大賞)

ヘルタ・ミュラー Herta Müller
◇『息のブランコ』Atemschaukel, 2009 訳書あり
1953年ルーマニア生まれ、小説家、詩人。チャウシェスク独裁政権下のルーマニアで、検閲を受けながらも、抑圧に苦しむ様子を描く執筆活動を続け、1982年に最初の小説『澱み』を発表。作品発表を禁止され、ドイツに逃れてからも創作を続ける。2009年ノーベル文学賞受賞。『息のブランコ』は、ルーマニア系ドイツ人がソ連の収容所に連れていかれ、苛酷な労働をさせられた実話をもとに描いている。
〇作者の邦訳:『澱み』Niederungen(山本浩司訳、三修社2010)、『狙われたキツネ』Der Fuchs war damals schon der Jäger(山本浩司訳、三修社1997)、『心獣』Herztier(小黒康正訳、三修社2014)、『呼び出し』Heute wär ich mir lieber nicht begegnet(小黒康正・髙村俊典訳、三修社2022)、『息のブランコ』Atemschaukel(山本浩司訳、三修社2011)、『いつもおなじ雪といつもおなじおじさん』Immer derselbe Schnee und immer derselbe Onkel(新本史斉訳、三修社2025)

カレン・デューヴ Karen Duve
◇『タクシー』Taxi, 2008 未訳
1961年ドイツ・ハンブルク生まれ。タクシー運転手や校正者など様々な職に就いた。1995年に最初の小説を発表して以降、小説、短編、エッセイ、児童書、おとぎ話の翻案、健康的な食事に関するガイドブック、そして2冊の百科事典の編纂など、幅広く活動している。小説『雨』Regenroman 1999、『これはラブソングではない』Dies ist kein Liebeslied 2002、『誘拐された王女』Die entführte Prinzessin. 2005、『タクシー』Taxi 2008、『力』Macht 2016、『ネッテ嬢の短い夏』Fräulein Nettes kurzer Sommer 2018と、刊行する作品はいずれもベストセラー、数々の賞を受賞。仕事のない女性が求人広告をみてタクシー運転手になる『タクシー』は自らの経験を基に描かれており、映画化もされている。
〇作者の邦訳:なし

ウルリッヒ・ペルツァー Ulrich Peltzer
◇『解答の一部』Teil der Lösung, 2007 未訳
1956年ドイツ・クレーフェルト生まれ、ベルリン在住。1987年に刊行した最初の長編小説『怠惰の罪』Die Sünden der Faulheit 以来、文壇の第一線で活躍、数々の賞を受賞する作家。『解答の一部』は2000年代初頭のベルリンを舞台に、新たな「ベルリン共和国」での抵抗、暴動、破壊の様子を描く大作。
〇作者の邦訳:なし

カトリン・レグラ Kathrin Röggla
◇『私たちは眠らない』wir schlafen nicht, 2004 訳書あり
1971年オーストリア・ザルツブルク生まれ、1992年以降はベルリン在住。10代の頃より執筆活動を始め、1992年散文集『だれも後ろ向きには笑わない』Niemand lacht rückwärts でデビュー。小説、戯曲、ラジオドラマ、ハイパーテクスト等、多岐に渡る創作活動を行う。小説『私たちは眠らない』は様々な職で働く人たちを主人公に、休むことのない生活のあり方を多角的かつ疾走感あふれる筆致で描いた、現代社会に生きる人々の肖像画ともいえる小説で、舞台化もされている。
〇作者の邦訳:『私たちは眠らない』(植松なつみ訳、論創社2006)

クリストフ・ハイン Christoph Hein
◇『土地の搾取』Landnahme, 2004 未訳
1944年シレジア地方ハイツェンドルフ(現在ポーランド)生まれ。東独で育ち、壁崩壊前にすでに作家としての名声を確立し、1980年代後半に東独全土で巻き起こった民主化運動に参加し、民主的な社会主義国家を目指す。統一後も精力的に執筆を続ける、現代ドイツで最も重要な作家のひとり。『土地の搾取』はポーランドから、ドイツへ移り住んだ主人公たちの生涯を描いた、戦後から2000年代初頭にかけての時代の変遷の物語。
〇作者の邦訳:小説『竜の血を浴びて』Der fremde Freund(藤本淳雄訳、同学社1990)、小説『ホルンの最後』Horns Ende(津村正樹訳、同学社2015)、小説『僕はあるときスターリンを見た』Die fünfte Grundrechenart(小竹澄栄・初見基訳、みずず書房1991)、児童書『ママは行ってしまった』Mama ist gegangen(松沢あさか訳、さえら書房2004)、エッセイ『ベルリンの街のアルバムから』Aus: Ein Album Berliner Stadtgescgichten(福元圭太訳、同学社)

アレクサンダー・クルーゲ Alexander Kluge
◇『感情の年代記』Chronik der Gefühle, 2004 未訳
1932年生まれ。ヴェネツィア映画祭銀獅子賞を受賞するなど、著名な映画監督で、小説家としても活動、自身は「代表作は本である」と語っている。2003年ゲオルグ・ビュヒナー賞受賞。『感情の年代記』は、全2巻、3千頁以上にわたる、これまで作者が書き連ねてきたテキストを集めたもの。2026年3月死去。
〇作者の邦訳:なし

テレツィア・モーラ Terézia Mora
◇『日々』Alle Tage, 2004 未訳
1971年ハンガリー生まれ、1990年からベルリン在住の作家、脚本家。ハンガリー語からの翻訳家。2013年には『怪物』Das Ungeheuerがドイツ書籍賞を受賞するなど、ドイツ語文学を代表する作家。長編小説『日々』は、バルカン半島の国からドイツへ密入国した女性の孤独を描き、2004年ライプツィヒ書籍見本市賞した作者の出世作。
〇作者の邦訳:短編集『よそ者たちの愛』Die Liebe unter Aliens (鈴木仁子訳、白水社2020)

ウーヴェ・ティム Uwe Timm
◇『ぼくの兄の場合』Am Beispiel meines Bruders, 2003 訳書あり
1940年ドイツ・ハンブルク生まれ。戦後の西ドイツで民主主義教育を受けた第一世代にあたり、パリ留学から帰国後の1967年以降、学生運動にも参加。1970年代から作家活動を始め。1993年の『カレーソーセージをめぐるレーナの物語』Die Entdeckung der Currywurst、2001年の『赤』Rot, novelなどの作品で一躍人気作家に。数多くの文学賞を受賞している。『ぼくの兄の場合』は2003年に刊行した自伝的な作品で、ドイツにおける記憶の文化とナチスについて社会的な議論を巻き起こした。
〇作者の邦訳:『カレーソーセージをめぐるレーナの物語』Die Entdeckung der Currywurst(浅井晶子訳、河出書房新社2005)、『ぼくの兄の場合』Am Beispiel meines Bruders(松永美穂訳、白水社2018)

エミネ・セヴギ・エヅダマ Emine Sevgi Özdamar
◇『奇妙な星たちが地球をみつめている』
Seltsame Sterne starren zur Erde, 2003 未訳
1946年トルコ生まれ。1970年代半ばにベルリンとパリに移り、女優や舞台監督として活動。1982年から戯曲、小説、短編小説を執筆。2022年ゲオルグ・ビュヒナー賞受賞、ドイツ語圏以外の出身作家の受賞は史上二人目となる。『奇妙な星たちが地球をみつめている』は、1970年代にベルリンに移住したイスタンブール出身の女優を主人公にした、自伝的な小説。
〇作者の邦訳:短編集『母の舌』Mutterzunge(細井直子訳、白水社2024)

W・G・ゼーバルト W. G. Sebald
◇『アウステルリッツ』Austerlitz, 2001 訳書あり
1944年ドイツ・アルゴイ地方生まれ。ドイツやスイスの大学で学んだ後、マンチェスター大学に講師として赴任し、以降イギリスに定住。1990年の散文作品『目眩まし』Schwindel. Gefühle 以降4作品を発表し、数々の賞を受賞。なかでも、遺作となった散文作品『アウステルリッツ』は、全米批評家協会賞、ハイネ賞、ブレーメン文学賞を受賞し、将来のノーベル文学賞候補と目された。2001年自動車事故で死去。
〇作者の邦訳:『アウステルリッツ新装版』(鈴木仁子訳、白水社2020)、『鄙の宿 新装版』(鈴木仁子訳、白水社2023)、『カンポ・サント新装版』(鈴木仁子訳、白水社2021)、『空襲と文学 新装版』(鈴木仁子訳、白水社2021)『土星の環 新装版』(鈴木仁子訳、白水社2020)、『移民たち 新装版』(鈴木仁子訳、白水社2020)