『正確な説明より、大切だったこと。』
今日も患者さんとお話しをした。
「見ない顔ですね、
eirinさんていうの?美人さんだね。」
どうやら、
若い=美人という公式が成り立つらしい。
「わたくしはね、
レントゲン検査を受けたことがあるんです。
こちらの検査の機械は何ですか?
どうやって検査をするのですか?」
と聞かれたので、
「心臓の検査ですよ。
手足に電極をつけて、
心臓の悪い部分があるかを調べるんです。」
と答えた。
すると
「わたくしにも検査をしてください」
と言われ、
「私の判断だけでは
検査はできないんです。すみません」
と伝えると、
患者Aさんは
「誰に言えばいいですか?」
と真剣な表情でした。
「先生に相談してみてください」
と答えると、
「わかりました……
わたくしはレントゲン検査を
受けたことがあるのです……」
と、また最初の会話が始まった。
同じように答えると、
「なるほど、
心臓の構造をみる検査なのですね。
わたくしは心臓は大丈夫です。
……わたくしは、娘の名前は……」
と語り始めた。
どうやら繰り返し話て、
自分の存在を確認したいようだ。
ナースステーションに戻ると、
カウンターに患者Bさんが
やってきて言った。
「見ない顔だね。
eirinさんていうの、ふーん。」
書類を眺めながら、
「これが私の手続きに
必要なんですか?
どうしたらいいですか?」と
シンさん(上司)に質問していた。
どうやら今、役所に来ていると
思っているようだ。
シンさんはすぐに笑顔で、
「ごめんなさいね、
書類のことはわからないの。
看護師さんに聞いてね」
と優しく受け流した。
その対応が、
とても自然で柔らかくて、
「さすがだな」と思った。
患者Bさんはしばらく立ったままで、
「もう足が限界でね。
椅子を持ってきて
座っていいですか?」と言われた。
私が「どうぞどうぞ。」と答えると、
少し笑顔を見せてくれた。
新人の私に興味をもってくれたことが、
なんだかとても嬉しかった。
私も患者Bさんのことをよく知り、
もっと寄り添いたいと思った。
別の日には、
完全右脚ブロックで
心電図検査を希望された患者さんがいた。
不安そうな表情で、
「最近、動悸がして……」と話していた。
トク先生(内科の先生)が、
以前の心電図と今回の結果を
並べて見せながら、
「同じだから大丈夫だよ!
学芸会を開こう!」と明るく言った。
私は“学芸会?”と
心の中でつぶやきながら
キョロキョロしていた。
するとトク先生が笑って
「なんかキョロキョロしてるね。
患者さんに安心を与えるのも
医療の一つなんだよ。」
その言葉に、はっとした。
検査の技術だけでなく、
“興味を持たれること”
“安心を与えること”が、
信頼関係の始まりなのだと思った。
【今日の学びポイント】
✔︎正確な説明よりも、
“安心してもらうこと”が医療の一部
→技術や知識の前に、
患者さんの不安を受け止めるまなざし。
✔︎柔らかな受け流しが、場の空気を整える
→相手の言葉を遮らず、
自然に受け入れる姿勢が、
医療現場の信頼を育てる。
※登場する人物や会話は、心の記録をもとにした創作です。
