お人好し「英語のそこのところ」第182回
【前書き】
今回、投稿するエッセイは7年前の2019年3月14日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
意外に気づかれてないことですが、我々Native Japanese SpeakerはNative English Speakerに寂しい思いをさせていると気があります。ご用心(著者)
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現在、私も生成AIを仕事で使っていますが、使っていて思うことは、
これは、文法力がないととんでもないことになる
ということです。
誰でもAIで英語が書ける時代ですが、AIの英文には結構な確率でミスがあります。
また、日本語をAIに食わせた際に、相手に失礼な英文が出てくることもしばしばです。
つまり、今からの生成AIの時代には
「その英文が正しいか見抜く目」が最重要
なのです。
文法を知らない人は、AIのミスに気づけず恥をかく。
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講師紹介
徳田孝一郎
日本語を英語にする手順を通して、英文法を理解、習得させる手腕は、受講生の間で「徳田マジック」と評され、「愉しい」「曖昧なところなく理解できる」との声が多数上がっている。TOEICのスコアが3ヶ月で300点伸びる受講生も数多い。
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英語の国の兵衛門(2008年上梓)
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【本文】
「徳田さんは、義理人情の人だな。立派な人だね」
これは妹から聞いた話なんですが、昔、妹は会社の上司から、こんなことを言われて誇らしく思ったそうです。とはいっても、まぁ、この場合の「徳田さん」ってのは私のことじゃなくて、父のことなんですけど。
妹は学校を卒業した後、父がらみの新宿の鉄鋼会社に就職したんで、そういう父の外からの評判も聞けていた。私はそんな父の力が及ばない会社に就職しようとしてたんで、妹が聞いたような他人からの父の話はとんと耳に入って来なくて、今となれば多少残念な気はしますが、それはともかく話を聞いた時、さもありなんと思いました。
「受けた恩はきちんと返せ」とか、「武士の誇りを忘れちゃいかん」とか、言われて育ちましたからねぇ。「御恩と奉公」という観念が染みついているというか、まぁ、昭和10年代生まれの人の多くはそうなんでしょうけど、そう言うことを関連会社の方から言っていただけるほど義理人情に篤かったということでしょうか。
で、なるほど、そう言われるだろうねぇ、と思った私の方の徳田なんですが、そんなシニカルな感想を持つぐらいだから、実は「受けた恩はきちんと返せ」というのが身についていない。まぁ、まさしく不肖の息子を地で行くというやつなんですが、昔からそう言われると、
「情けをかけたいやつは、かけたくてかけてるんだから、こっちが恩に着る必要はあるめぇ」
なんて、碌でなしの発想をしちゃうんですよねぇ。まぁ、犬以下の、猫並みと言ったところです。
かといっても、にゃあにゃあ鳴いてるだけじゃ、世間は渡っていけないんで、せめて情けを受けないようにふるまうんですが、なかなかそうもいかなくてどっかで恩を受けることになる。とかく人の世は住みにくい(笑)
でも、この日本って国はそのあたりがお人好しって言うか、気前がいいって言うか、この前のあの恩を返せ、なんて言われることがないんで大きなトラブルにはならず生きています。たぶん、どっかで「あの恩知らずな奴」って罵られているかもしれませんが。いや、必ず罵られてるだろうなぁ(笑)

そういう点で、Native English Speakerたちと付き合っていて私が思ったのは、彼らがかなりきっちりと受けた恩は返すし、また、かけた情けは取り立てるということです。ああ、ここにもNative English SpeakerとNative Japanese Speakerの違いがあるなと思った覚えがあります。
「ねぇ、Catherine、ちょっと相談なんだけど?」
「なに?」
Catherineがテキストから眸を上げてVera に微笑んだ。CatherineもVera も英会話スクールで講師をしている。Catherineは金髪碧眼の美少女で、Vera は栗色の髪のエキゾチックな美少女だ。
アメリカ人特有の意志の強い視線を受けてもポルトガル人のVeraは臆することなく言う。
「Catherine、悪いんだけど、今度の土曜日のレッスン代わってくれない?」
「え? どうしたの? 急に?」
「ちょっと大学のゼミで急な用事が入っちゃって」
VeraはCatherineの横の椅子に座ると、困ってるのよ という風に肩をすくめて、斜め上を見た。
徳田はそのやり取りを見ながら、日本人同士なら、あれはカチンとくるだろうなと思う。人にものを頼むときに、自分も被害者というふりをされると、こっちを巻き込むなよ、と思うものだ。Native English Speakerはどうするのかと、徳田は手を止めてふたりに向き直る。
「でも、あたしも予定入れるつもりだったんだけどなぁ」
Catherineは渋ってみせた。まぁ、必要以上働きたくないというのがNative English Speakerの心情というものだ。
「悪いけど、お願い。この前病気で代わってあげた分、ここで返してよ」
「あ、そうね。それがあったんだ。いいわよ。でも、これでイーヴンね」
「もちろん」
Veraが嬉しそうにサムアップすると、Catherineは徳田へ向き直った。
「徳さん、いいですか? 土曜日の田中さんのレッスン、あたしの代講で?」
「もちろんさ。ふたりで決めてもらえば、おれも助かるよ。田中さんにはおれから連絡しとく」
「お願いしまあ~す」
Catherineはふざけて日本語で言うと続けて徳田に言った。
「徳さん、また、面白そうにあたしたちのやり取り聞いてたでしょ? ネタをあげたんだから、ひとつ貸しですよ。あとできちんと取り立てますからね」
「ええ~、そんなぁ、世知辛いなぁ」
「ワールドスタンダードは厳しいのよ」
「へぇ~い」
徳田はそう言うとキーボードに戻った。
と、まぁ、我々Native Japanese Speakerとしては、言いにくい「ここで返して」とか「イーヴンね」という言い回しが出てくるわけですが、Native English Speakerとしてはごく普通にそれを言うんですね。恩返しを要求することを特に恥ずかしいことだと思っていないくて、さらりと言ってしまう。このあたりは、Native Japanese Speakerとは異なった感覚で、へぇっと思ったのをよく覚えています。
ところで、私みたいな猫並みな人間はともかくとして、みなさんは「受けた恩はきちんと返し」ておられると思うんですが、Native English Speakerと話しているときはいかがでしょう。きちんと返しておられますか?
え? なんのことと思われる方は、もしかしたら思わぬところでNative English Speakerに寂しい思いをさせたり、憤らせたりしてるかもしれません。
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