* interview Bill Laurance:情報量を減らし、深く掘り下げることで引き出せる豊かさを求めて(13,000字)
スナーキー・パピーの鍵盤奏者として知られるビル・ローレンス。
彼はスナーキー・パピーの中で異質な存在だ。というのもそもそもビルはイギリス人。アメリカのダラス周辺のミュージシャンを中心に構成されているスナーキー・パピーの中で一人だけのイギリス人だ。
そして、彼は他のメンバーとは異なる志向を持っていて、音楽性も独特だ。以前からエレクトロニック・ミュージックやポストクラシカルへの関心を語り、クラシック音楽へも接近している。「The Curtain」での美しいピアノソロ(※以下動画の10分すぎから)や「Belmont」でのエレクトリックピアノ・ソロを聴けば彼の個性はすぐにわかるはずだ。そんなビルはソロでの活動を最も活発に行っているメンバーでもあり、アルバムも多数発表している
近年、ビルはスナーキー・パピーのリーダーのマイケル・リーグとのデュオのプロジェクトを立ち上げた。ドイツの名門ACTから現在2作のアルバムを発表し、ツアーも行っている。フレットレスベースや中東のウードやアフリカのンゴニを奏でるマイケルのデュオということもあり、スナーキー・パピー以上に多様な音楽が聴こえてくる。と同時に、スナーキー・パピー以上に「即興音楽家」もしくは「ジャズ・ミュージシャン」としての二人の演奏をたっぷり聴くこともできる。二人の音楽はすぐに評判になり、高い評価を得ている。
2025年、このふたりが来日公演を行う。せっかくなのでビルにインタビューを申し込んだ。2019年からアコースティック・ピアノ演奏に傾倒し、興味深い作品を発表し続けている。僕はその話も残しておきたかった。


取材・執筆・編集:柳樂光隆 | 通訳:渡瀬ひとみ
協力:ブルーノート東京 | ヘッダー写真:Y.Yoneda
◉ 『Cables』(2019)
――2019年の『Cables』について聞かせてください。
『Cables』は、自分にとって初めてのコンセプト・アルバムでした。技術の指数関数的な進化、そして、映画『Transcendent Man(超越する人間)』にインスピレーションを受けて制作したものです。この映画は、レイ・カーツワイルという人物についてのもので、彼は「2029年までに人間と機械が融合する」といった突飛な予言をしているんですね。
このアルバムは、今まさに私たちが目にしているAIについて語るような内容で、社会に与える影響には多少なりとも不安を感じつつも、それでも私たち人類はAIを受け入れ、称賛していく運命にある――そんなアイデアを表現した作品です。
全体的にディストピア的な色合いを帯びていますが、その中にも常に希望や良きものが音楽を通してどこかに存在しているという想いも込められています。その後、「Cables」と「Constants」にThe Untold Orchestraとのオーケストラ編成で新たなアレンジを施した(『Live at EFG London Jazz Festival 2021』)り、ピアノ・トリオ用に別バージョンも制作したりしました。 そんな背景を持つ作品です。
◎ アコースティック・ピアノへのこだわり
――『Cables』はアコースティック・ピアノの音がとても印象的でした。他にはエフェクトの使い方など、面白い試みがなされていたと思います。アコースティックの響きと機材を使ったエフェクトの組み合わせについて教えてもらえますか?
アルバムのコンセプトとも関係しているのですが、私はナチュラルでオーガニックなアコースティック・サウンドと、電子的でデジタル処理されたサウンドとのクロスオーバーに興味がありました。その両者が交差する地点を探るようなことをやったんです。そのためにエンジニアのニック・ハードと共同作業をしました。彼は僕やスナーキー・パピーの作品も多く手がけています。今回のサウンドを実現する上で、彼の存在は非常に大きかったですね。
たとえば、ピアノの音をサンプリングして、そのリバーブ(残響音)だけを抽出し、それをシンセ・パッドのように使うというようなことをしています。つまり、オーガニックな音を一度捕まえて、それをプロデュースされた形で再利用するという発想です。自然なものと人工的なもの、アコースティックとデジタル、その境界が交差する場所を探ること――それこそが、この作品で自分が追求していたテーマでした。
――なるほど。『Cables』ころから、アコースティック・ピアノへの関心が強く感じられるようになった気がするのですが、どうですか?
そうですね、自然とその方向に進んできたように思います。実際、まさに今もそうで、このインタビューが終わったらすぐに作業を再開する予定なんですが、ACT Musicから9月26日にリリース予定の新しいソロ・ピアノ・アルバムのミックスをしているところです。新作はこれまでで最もオーガニックでアコースティック、そしてある意味クラシカルなアルバムで、8フィートのヤマハのコンサート・グランドピアノを教会に持ち込み、教会のあちこちにマイクを立てて、自然な形で録音しました。今の自分の方向性はまさにそこにあると感じています。
以前はドラムマシンやシンセサイザーなど、さまざまな機材を使ってツアーをしていましたが、演奏すればするほど、探求すればするほど、もっと楽器そのものの深みへと入り込んでいきたくなったんです。なので今は、テクノロジーに頼らず、アコースティックな楽器に集中して、さらに深く掘り下げていこうとしているところです。
◉ 『Affinity』(2022)
――2022年にはソロ・ピアノ・アルバム『Affinity』をリリースしています。この作品にはどんなコンセプトがあったのでしょうか?
『Affinity』はロンドンの自宅スタジオで録音しました。グランドピアノの弦にフェルトをかぶせて演奏していて、実は今もまだそのままなんです。そのため、音色はとても柔らかくてソフトになっています。
◎ フェルト・ピアノによる音像
――音がちょっとミュートされたような感じですよね。
そうです。少し加工されたような音ですね。グランドピアノにフェルトをかけることで、打鍵のアタック感が抑えられるんです。そのおかげで、よりリズミカルに演奏できる一方で、アップライトピアノではなくグランドピアノならではの豊かな音色も保てる。通常フェルトを使うのはアップライトピアノなので、その意味では両方の長所を活かすことができたんです。そしてフェルトをかけたことで、楽器との新しい親密な関係(Affinity)が生まれた。それがこの作品のコンセプトでした。
『Affinity』というタイトルは、さっき話した最近のソロ・ピアノ作品ともつながっています。つまり、ピアノそのものとのより深い親和性というテーマです。録音プロセスも、より純粋でオーガニックなものを目指していて、ポストプロダクションを最小限にしています。
そして、いままさにミックスしている最新のソロ・アルバムでは、その方向性がさらに進んでいます。特に即興演奏に重点を置いていて、それはマイケル・リーグとデュオでやっていることや、自分のソロ演奏でも大きなテーマになっています。ソロや小編成のアンサンブルには、自由があります。その瞬間に何かを生み出すという脆さやスリルの中にこそ魔法があると感じていて、それこそが自分がステージでもスタジオでも常に追い求めているものです。
最新作にも完全即興で録音された曲がいくつかあります。ソロ演奏では誰かと合わせる必要がないので、完全に自由に委ねて、全てを手放すことができる。これは、キース・ジャレット的なアプローチとも言えると思います。即興における絶対的な自由という意味で。
――ところで、フェルトって普通は家でピアノを弾くときに音を抑えるために使うものです。どうしてそれを使うようになったんですか?また、他にも同じようにフェルトを使って演奏しているアーティストがいれば、ぜひ教えてください。
他のアーティストについて言えば、フェルトを使ったピアノ演奏は今ではどんどん一般的になってきていると思います。たとえば、ハニャ・ラニ(Hania Rani)という素晴らしい現代ピアニストがいて、彼女はよく使っています。それからニールス・フラーム(Nils Frahm)もそうですね。彼らは必ずしもジャズの枠組みにいるわけではないですが、こうしたサウンドを追求している仲間だと思っています。
僕自身が最初にフェルトを使ったのはアップライト・ピアノでした。自分はけっこうリズム重視のプレイヤーで、ピアノを打楽器の一種としてとらえているんです。グルーヴは自分の演奏スタイルや作曲方法において非常に重要な要素で、フェルトでアタックを抑えることで、作曲や演奏の新たな視点が開けた感じがありました。それがとても面白かったので、次はグランドピアノで試してみようと思ったんです。
もちろん最初は「近所迷惑にならないように」といった理由もありましたけどね。今ではフェルトの音に魅了されています。本当に好きなんです。フェルトを使うと、まるでピアノに顕微鏡を当てているような感覚になります。深く入り込めて、音に近づける。小さな音でも繊細なニュアンスが出るし、トーンもより静かで親密になります。ミックスを工夫すればフェルトの繊細な「シャリッ」とした高音域の質感を際立たせることもできます。結果として、すべてが包み込まれるような、内側から響くような感覚になるんです。
――あと、リバーブを少し強調したり、ちょっとした工夫でピアノの音のテクスチャーをすごく豊かにしていますよね。アコースティック・ピアノの音を活かしつつ、ほんの少し調整を加えて、音響的に深みを出している。アコースティック・ピアノの音を最大限に活かす工夫について聞かせてもらえますか?
アコースティック・ピアノだけに制限するというのは「制約」になります。だからこそ、最初の頃はそのピアノだけの音色のパレットをどう広げられるかを模索していました。たとえばリバーブはその代表的な方法で、特に『Cables』ではその音響的な広がりを探ることにとても関心がありました。
ただ、『Affinity』に関してはもっとオーガニックで、リバーブもそこまで強くは使っていません。長めのリバーブを使った箇所もいくつかありましたが、全体としてはかなりピュアな音作りを意識していました。
そして、今回録音したばかりの新しいソロ・ピアノ・アルバムでは、教会で録音したので、もはやリバーブを排除すること自体が不可能です。でも、実はそれこそが自分がやりたかったことでした。自分はますます「最もピュアで、オーガニックな音源」を求めていると感じます。まるで、楽器そのものの源に立ち返ろうとしているような感覚です。だから最近は、エフェクトや余計なプロダクション、テクノロジーの要素をどんどん削ぎ落として、もっともっと純粋でシンプルな音に近づいていくことを目指しています。それが、今の自分が向かっている方向性です。
――作曲に関しても、カヴァー曲の選曲にも、ピアノの音の美しさやタッチの繊細さを最大限に引き出すような意図があると感じました。たとえば『Affinity』では、ビル・エヴァンスの「Peace Peace」をカバーしています。あれは象徴的な選曲ですよね。
まさにその通りです。特に『Affinity』に関しては、できるだけシンプルな曲作りを意識していました。カバーする楽曲も、特有のシンプルさを持っているものを選んでいます。自分の中では「少ないことは豊かなこと」という感覚が強くあって、作曲においても、即興においてもそれが当てはまると思います。とてもシンプルな構成の上に立つことで、自由に広がっていける余白が生まれるんです。たとえば「Peace Peace」は、一つのコード進行がずっと繰り返される曲で、左手のパターンもほとんど変わらないんですよね。そこにこそビル・エヴァンスの演奏の魔法があると思います。ただ、自分の場合はついハーモニーを発展させてしまうんですけど(笑)。でもやはり、シンプルな土台を持つことでこそ、そこから自由に拡張していける。それが探究や創造の余地を与えてくれるんです。
――なるほど。
最近では、マイケル・リーグとのデュオでの曲作りの中でも同じような方向性を感じています。僕たちが書く曲は、構成における無駄のなさが大事になっていて、メロディはシンプルで明快、ハーモニーも特別に複雑というわけではありません。むしろすべてがそぎ落とされていて、スリムなんです。作曲家としても即興演奏家としても、情報量を減らすことで、逆にどこまで深く掘り下げられるか。少ない要素からどれだけ豊かな世界を引き出せるか、という探求ですね。
◉ 『Bloom』(2024)
――あなたはUntold Orchestraと一緒に『Bloom』というアルバムを作っています。その前にはライブ盤『Live at EFG London Jazz Festival 2021』も出していました。Untold Orchestraとのコラボレーションについても教えていただけますか?
『Bloom』というタイトルは「母なる自然」を指しています。気候変動がより切実に感じられるようになった今の時代において、自然の美しさと、時に人間を圧倒するような恐ろしさ――でもその中にある魔法のような魅力を、音楽で表現したかったんです。つまり、私たちはただ「自然が望むように生きるしかない」という、そんな感覚をテーマにした作品でもあるんです。
◎ Untold Orchestraとの共演
このアルバムはマンチェスターのロイヤル・ノーザン・カレッジ・オブ・ミュージック出身の若いメンバーたちで構成された素晴らしいオーケストラUntold Orchestraとの共演で生まれた作品です。実は最初に声をかけてくれたのは彼らからでした。それでまず「Cables」と「Constants」の楽曲をピアノとストリングスのみで再構築したEP『Cables Rewired EP』を作りました。その後、彼らから「18人編成のストリングス・オーケストラのための資金を調達したので、フル・アルバムを作りたい」とオファーを受けました。そこで、私は新たに楽曲を書き始めたんですけど、その際、最初の段階でトリオやリズムセクションは使わないと決めていました。つまり、弦楽器がリズムセクションの役割も担う必要がある編成を前提に作曲を進めていきました。
――なるほど。
音楽的には、スティーヴ・ライヒやフィリップ・グラスのような現代音楽に興味があって、そうした反復リズムの感覚も取り入れましたが、一方でヴィヴァルディやショスタコーヴィチの要素も取り入れたいと思っていました。楽譜はすべて書きましたが、僕自身の即興演奏の余地も大きく残していました。そして、オーケストラに「バンドのようにグルーヴする」演奏をしてもらうために、かなり練習を重ねました。全体として生命力に満ちた作品になったと感じています。
――リズムセクションなしでオーケストラと演奏するというのは、かなり珍しい発想だと思います。
実は、RNCM(ロイヤル・ノーザン・カレッジ・オブ・ミュージック)でコンサートをやったときに、オープニング・アクトとして出演していたバンドがあって、その学生の中の僕の大ファンがいたんです。彼はその後、大学を卒業してから自らUntold Orchestraを立ち上げ、僕にアプローチしてきました。ちょうど僕がUKとヨーロッパを回るソロ・ピアノ・ツアーをやっているタイミングで、「マンチェスターに来るなら、うちのオーケストラでスタジオ録音を2曲やりませんか?明日にでもできます」と誘ってくれたんです。
それで「ぜひやりたい」と答えたのが、『Cables Rewired』の録音でした。これは『Cables』をストリングス・オーケストラで再構築したデジタルEPで、そこには『Constants』のバージョンも収録されています。編成としては、ピアノとストリングス、そして少しだけシンセも入っています。そのセッションがとても良くて、楽しくて、しばらくしてから彼がまた連絡をくれて、「フル・アルバム制作の資金が取れたので、ぜひ一緒にやりましょう」と提案してくれたんです。
その時、正直言ってトリオ編成案も頭をよぎったんです。というのも、過去に『Live At Union Chapel』をトリオ+オーケストラでやっていた経験があったので。でも最終的には、よりアコースティックでオーガニックな音の探求をさらに深めるチャンスだと考えることにしました。「ベースやドラムをあえて使わず、ストリングスに比重を置いてみたらどうなるか?」を試すアプローチを選んだんです。
アレンジについては、ジョシュア・プール(Joshua Poole)というメイン・アレンジャーと密に協力して進めました。リズムの実現をどうするか、かなり実践的な部分まで詰めていく必要がありました。 中には非常に反復的で、演奏者の腕に負担がかかるパートもあったので、細かく調整を重ねました。このプロジェクトの焦点は、弦楽オーケストラを「バンド」のように機能させるというところにありました。
――スナーキー・パピーも大所帯のバンドではありますが、オーケストラとの共演はまた別の種類の「大人数との演奏」だと思います。スナーキー・パピーでの演奏と、オーケストラの中でのピアニストとしての演奏の違いについて聞かせてください。
スナーキー・パピーでの演奏は、まったく別の次元のアプローチが必要になります。というのも、あのバンドは音楽的な個性の塊のようなメンバーが揃っています。よく聞かれるのが「どうやってお互いのスペースを確保しているのか?」という質問です。そこで大切なのは、自分の声(個性)を見つけて、その役割に徹することなんです。自分が何を持ち込めるのか、他の誰とも違う何を提供できるのかを考えて、自分の“レーン”に集中する。そして、他の演奏者のためにスペースを空ける。それがスナーキー・パピーの美しさだと思います。メンバーそれぞれの声の多様性を受け入れることで、あのサウンドが生まれている。それぞれが自分の持ち場を理解していて、全員の個性が共存しているんです。
――たしかに。
一方で、今回のオーケストラとの共演は、それと比べるとはるかに自由度が高いです。メロディは自分で書いているので、その構造は把握しているし、決まっている部分もあるんですが、そこから先は自由に発展させたり探求したりできる余地が大きい。即興のために開かれたセクションもあって、かなり自由に表現することができました。それに加えて、リズムセクションがないということは、ダイナミクスの幅が広がるということでもあります。ピッツィカート(弦楽器の弦を指ではじいて音を出す奏法)で極端に静かなセクションの中で演奏することもあるので、非常に繊細な音楽が可能になります。そういった意味で、このアルバムは構造的にもクラシック音楽に近い発想を持っていると思います。
実際、今の自分は、どんどんクラシックホールのような空間で演奏することが増えています。そこではPAシステムを使わないんです。そのような会場では、空間そのものが「歌ってくれている」ような感覚があります。無理に音を出す必要がないし、テクノロジーが介在しない分、聴衆との距離もぐっと近く感じられる。自分が耳で聴いている音と、オーディエンスが聴いている音がまったく同じなので、よりダイレクトで深いコミュニケーションが成立するんです。そういう空間で演奏しているときこそ、本当につながっている実感があります。
僕自身、だんだんとクラシックの環境に惹かれるようになってきています。というのも、僕はもともとクラシックの訓練を受けて育ってきました。そこが自分の音楽の出発点であり、大学でもクラシックを専攻して、オーケストラの指揮をしたり、クラシックのレパートリーをたくさん演奏したりしていました。だから、自分のテクニックや演奏能力、そして音楽への愛情も、ある意味すべてそこから始まっていると思います。最初のピアノの先生はラグタイムの演奏者で、だから音楽の始まりは楽しさや喜びが中心でした。その楽しさがあったからこそ、グレード試験に取り組もうと思えたし、音楽を続けてこられたんだと思います。
そして今、やっぱりクラシックの持つディテールへのこだわりが大好きなんです。それに、耳栓をつけなくていいっていうのもすごく良いですね(笑)。リラックスして演奏できるし、本当に心地いいんです。
◉ 『Where You Wish You Were』(2023)
◎ マイケル・リーグとのデュオ・プロジェクト
――では、ようやくここからはマイケル・リーグとのコラボレーション・アルバムについて聞きたいと思います。このプロジェクトはどんな経緯で始まったのでしょうか?
僕たちはコロナ禍に何本かライブを行っていたんです。ちょうどイタリアのロックダウンが一時的に緩和されたタイミングで、現地では小規模な編成のバンドをブッキングしようとしていて、それでマイケル・リーグと2人でデュオ編成のツアーをやってみようということになったんです。イタリアをまわりながら、僕たちそれぞれのプロジェクトで書いた曲や、いくつかのカバー曲を演奏するツアーでした。そして、それが本当に楽しくて。マイクはそのツアーでウードやベースを演奏していて、「じゃあ、この編成のために曲を書いてみよう」と思うようになりました。それで生まれたのが、『Where You Wish You Were』という作品なんです。
――パンデミックがきっかけなんですね
僕たちは、アルバムがあれほど反響を呼ぶとは正直思っていなかったので、興味深いなと思いました。あのアルバムが人々の心に響いた理由を考えると、シンプルさと空間(間)の美しさがあると思うんです。今って、世界中で情報過多の時代じゃないですか。だからこそ、多くの人が無意識に静けさや穏やかさを求めている。僕自身もそうで、心のどこかで「平穏」や「静寂」を強く欲しています。そういう意味で、僕たちは知らず知らずのうちに、今この時代に必要とされていた感覚を作品の中で表現できたのかもしれません。
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