お土産はヒレカツ
“「子どもの頃の最も幸せな瞬間はどんなときでしたか?」”
私が小学生の頃の父は、昼間はお寺の住職をしながら、夜は夜間高校の教員をしていた。
父が帰ってくるのは、私たちが布団に入る頃。そして時々、お土産を買ってきてくれた。
スーパーの白いトレイにもられたキャベツにヒレカツ。
今思えば、自分の晩酌のお供だったのかもしれない。閉店間際のスーパーに駆け込んで買ってきていた、と今なら想像できる。
私たち家族だけの二階の二間に、揚げ物のいい香りがした。
母はリューマチを患い、身体が不自由だった。
父は、そのヒレカツをベッドに腰掛ける母に食べさせてあげる。
そして、私と二つ下の弟もご相伴にあずかる。
夜のヒレカツ…
揚げてから時間が経ち少ししなっとしていて、敷いてあるキャベツに油がしみていて…
それでも、カツのいい香りがして…
冷めたヒレカツを一口食べては油のしみたキャベツを食べる。食べさせてもらっている幸せそうな笑顔の母と、口に運んであげている少し赤くなった顔の父、母の足元でヒレカツの順番を待つ私と弟…
お寺の夜の私たち家族だけの秘密の時間
父も母ももういないけれど、
あれが、幸せだったんだ…
