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娘が就活をやめたら、我が家の食卓はカラフルになった

「私、就活やめます!」
娘は、高らかに宣言した。ハンガーに掛けられた
リクルートスーツが、心なしか元気をなくした
ように見える。翌日、黒染めしていた髪は
金髪に戻っていた。


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私の娘は芸大生だ。イラストレーターを
目指していたのだが、夢を捨て切れず
途中からマンガ家コースを専攻した。

卒業生全員が芸術系の仕事に就けるわけ
ではない。そもそも、学生の数に比べて
受け皿が少ないのだ。一般企業の会社員に
なったり、接客の仕事に就く人も大勢いる。


そんなことは百も承知で芸大に入学したけれど
こんなに苦戦するとは夢にも思わなかった。
私も娘も。


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高校生の頃から「将来は絵を描く仕事がしたい」
という夢がはっきりしていた娘。


3回生の時にデザイン会社でインターンシップを
経験し、「現実的な将来の自分」をイメージ
するように。しかし、4回生になる直前に
コロナが流行り、就活自体が停滞し始める。

これからどうなっていくのか、全く見えなく
なった。休学して、卒業を1年先延ばしに
する学生もわりといたらしい。新卒神話は
健在なんだなぁ。だけど、先延ばしが
吉と出るかどうかは神のみぞ知る。


娘は「下宿代もかかるし、これで卒業する」
と言った。

先生や学生はもちろん、求人を出す側でさえ
見通しは全く立たなかったのではないだろうか。
受けた会社から不採用通知が届くと
焦る気持ちに拍車がかかる。


「内定をもらえるなら、どこでもいいかな…」

娘がそう思うのも無理はない。だって
多額の奨学金を借りているから。それだけでは
足りなくて、親も教育ローンを組んだくらい
芸大の授業料はめちゃくちゃ高い(泣)。


なかなか内定が決まらない中、キャリサポで
勧められたのは、介護職とスーパーの販売職。
どちらも絵を描くスキルは必要ないが、社会人
として働きながら、趣味で絵を描くという選択は
あるかもしれない。

またしても、揺れる。


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マンガの勉強をしたからといって、誰でも
マンガ家になれるわけではなく、その道が険しい
ものであることくらい、素人の私にもわかる。

だからこそ、「好きなこと」と「安定した生活費を稼ぐこと」の間で、娘は悩み続けた。かつて
同じように悩んだ人は多いのではないだろうか。


口出ししたいのをグッとこらえて、見守る
ことにした(というか、お母さんは何も言わないで
と最初に釘を刺された)。娘が下宿していたのは
幸いだった。ピリピリした空気を、お互い
吸わずにすんだからだ。

独り立ちの時を迎えた今、迷う時間はむしろ
必要だと思った。自分はどうしたいのか。
何が一番大切なのか。


とことん向き合って出した結論だけど
やっぱり違う…と思う日が来るかも
しれないね。でも、今は胸にしまっておこう。
人生は、いくらでもやり直せる。


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そして、娘はこう決断した。

「私、就活やめます!」


そろそろ、卒業式の袴を借りないといけない
んじゃない?という時期になっていた。
アルバイトをしながらマンガ家を目指すと言う。

「おぉー、いいじゃん!」私の言葉に、娘は
「お母さんはそう言うと思った。」と笑った。

家族には内緒にしているが、私は小学生の頃
マンガ家になりたかった。でも、1本のマンガを
描き上げるために膨大な作業量が必要だと知って
根気のない私はあっさり諦めたのだ。

これからは、娘が、私の見たことのない
景色を見せてくれる。
そう思うとワクワクした。
たとえ願いが叶わなかったとしても、一緒に夢を
見る時間は、きっと楽しくてキラキラしている。


私に出来るのは美味しいご飯を作ること
ぐらいだけど、娘が実家に戻って来て以来
既にテンションは上がっている。


最近、おかずがカラフルになったことに
我が家の男子勢(夫、息子二人)は気付いて
いるのだろうか。


肉、揚げ物、カレー…娘のいない間は
茶色いメニューがテーブルを席巻していた(笑)
これからは、野菜もたっぷり使ってカラフルな
おかずにする。家族の身体にも優しいはずだ。

さて、今夜はサバの一夜干しを焼いて、豚汁と
トマトのマリネを作ろうか。どれも娘の大好物だ。

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