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創作大賞2026|ファイヤーエディット

これは、実話に基づくエッセイである。

7月8日(木)23:00

なぜ、こんなことになってしまったのか。体の深部が熱く、神経がたかぶっている。デスクの時計は、しれっと時を刻み続ける。あと59分。私は焦る。間に合わない。もはや諦めるしかないのだろうか。

3日前 7月5日(月)22:00

noteの投稿を始めて間もない頃、創作大賞の応募が始まった。その時点では、完結した小説はなかったので、エッセイの中から気に入っているものをいくつかピックアップし、軽い気持ちで応募した。

これで、締め切りを気にする必要はない。私は、夏休みの宿題を早々に終えた小学生のような誇らしい気分でいっぱいだった。

その後、TALESという物語専用のSNSの存在を知り、note・TALESに2作目となる「儚き人生の二重奏」という物語を同時投稿し始めた。

noteに投稿した私の初めての小説「ひとかけらの物語」は、全101話からなる連作短編である。

1話完結でありながら、登場人物たちがゆるやかにつながり、過去の主人公たちが別の物語にカメオ出演するという、高いハードルを自らに課した渾身の作品である。登場人物は私のファミリーのような存在にもなっていた。

書き始めた時は、終わりを想定していなかったのだが、100話という区切りのタイミングで完結することにした。最後の1話は、ファミリーたちが集うおまけのようなストーリーになっている。

この作品を忘れていたわけではないのだが、私は2作目を書くことに夢中になっていた。ふとnoteから届いたお知らせを見返していると【応募締切まであと2週間!】というだいぶ前の通知に気がついた。その時、どこからともなく私の愛すべきファミリーたちの声が聞こえたのである。

――完結したから、小説部門に応募できるんじゃない?――

「うん!できそうな気がする!」という謎の自信が湧いた瞬間であった。

2日前 7月6日(火)19:00

コーヒーをがぶ飲みし、デスクの前に立った(昇降デスクです)。

やる気はメガマックスである。スマホの音楽アプリを開き、映画『ワイルド・スピード』のサントラをタップ。ノートPCを開けた私は、後部に火のついた車で逆走するかのように、「ひとかけらの物語」を1話ずつ読み返しては修正していった。

noteの投稿を修正し、TALESに新規で投稿する。それだけのことだ。重低音のBGMに合わせ、すさまじい集中力を発揮し、一気に50話まで完成させた。

これなら、明日には終わるだろう。締切の一日前に応募できる。ベッドに潜り込んだ私は心地よい睡魔に包み込まれた。

この時の私は、自分が究極の根性なしであるということを完全に忘れていたのである。

1日前 7月7日(水)20:00

再びデスクの前。BGMはもちろんワイスピである。

想定以上の誤字脱字や文章の間違いの多さに私は嫌気がさしていた。意味不明の文章、矛盾した流れ。え、こんなこと書いてた?何度もチェックして投稿しているはずなのに、なぜ!

そして昨日のように集中できない。あと27話も残っているのに、私の動作と思考は減速した。もはやファミリーたちが、味方なのか敵なのかわからない。

しょんぼりとデスクの高さを座る時用の位置まで下げる。ウィーーン

エンジンがかからないまま、ぼんやりとワイスピのサントラを聞いていると、映画も見たくなってきた。がんばったご褒美!とジェイソン・ステイサムのアクションシーンだけを見ることにする(がんばってない)。

ワイスピの最新作『ファイヤーブースト』の中でお気に入りのシーンがある。ジェイソン・ステイサムの前に、かつての敵であるサン・カンが現れる。サンが上着のポケットに手を入れた瞬間、武器を出すのだと察知したジェイソンはサンをぶっとばす(武器ではなく柿の種だったのだが)。

そして二人は取っ組み合いを始めるのだが、その美しいまでに完成されたアクションを見ていると、ジェイソンはまもなく59歳という年齢にもかかわらず、この強靭な肉体を維持し続けているという事実に気がつく。

それは、天性の能力や運動神経だけではなく、毎日こなす地道なルーティンの成果に違いないのだ。

私は子どもの頃から、「がんばる」ことができないタイプだった。ドッジボールは痛い思いをしたくないから、わざとボールに当たりにいって外野に出ていた。短距離走は最下位ではない程度にしかスピードを出さなかった。勉強せずに読書にふけった。

人生のほとんどの場面で、本気を出すということから逃れ続けている。得意なことはなんですか?と問われたら「現実逃避です」と答えたい。

やらなきゃいけないことをやらずに、ワイスピを見てしまうのは、「努力した結果、失敗する」というリスクから逃げたいからなのだ気づく。

『お前はまた逃げるのか?』あのハスキーなイギリス訛りの英語で、ジェイソンが私に問いかけている気がした。

7月8日(木)23:30

ジェイソン・ステイサムのおかげなのか、やっとエンジンがかかったからなのか、再びやる気を取り戻した私は、がむしゃらにキーボードを叩いていた。後ろから迫り来る締切という炎に追い立てられ、右手のマウスを激しく動かす。

「残り時間がない!カフェイン注入!」

コーヒーを飲みながら、ふと思う。今この瞬間、私だけではなく、noteのクリエイターのみんなが、同じ気持ちで同じようにキーボードやスマホを叩きまくってるのではないか。追い込まれているのは、私だけじゃない。

私はひとりじゃないんだ。

そしてついに、101話をnote・TALESにぶち込んだ。いよいよ、応募の手続きだ。指先が火を噴くラストスパート、全神経を集中させ中指をエンターキーに叩き込んだ。

タアァァン!

BGMは、陽気でちょっぴり切ないメロディに変わる。私の脳内の屋上でファミリーたちがテーブルを囲んでいる。私たちは、コロナビールを片手に笑顔を交わす。それは実在する恩師や元上司たち、もう会えない人、旅で出会った人。大好きな友達、今も私のそばにいてくれる人たち、総勢100人である。

私はみんなの輪の中で少し照れながらこんなことを言う。

「みんなありがとう。あなたたちに出会えたからこの物語が生まれました」

そしてコロナビールを空高く持ち上げる。脳内ならビールを飲んでもいいだろう(禁酒してます)。

いつも白石エマのnoteを読んでくれる皆さま、本当にありがとうございます。そして創作大賞に応募された皆さま、お疲れさまでした。

伝えきれない感謝の気持ちを込めて♡


【毎朝7:00投稿】
月曜〜金曜:1分小説「儚き人生の二重奏」
土・日曜日:エッセイ、ちょっとした雑談


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