優秀な人が組織と噛み合わない時|現場で起きる事故を防ぐ方法
こんにちは、えめです。
“惜しい人”
組織で人を見ていると、
ときどき不思議な現象が起きます。
能力は高い。
やる気もある。
成果も出してきた。
それなのに、
その人が前に出るほど、
組織は困る。
これは、
組織・本人にとっても、
納得しづらい状況で、
「もったいない」状態だと思います。
今回は、
優秀なプレーヤーが、組織と噛み合ってない時に起こる事故を防ぐ方法
について、現場で見てきた“組織の構造”から、言語化していきたいと思います。
「できる人」が現場を困らせる「惜しい人」になる条件
“惜しい人” は、
・合理的な提案
・画期的な改善案
・センスの良い具体案
これらを本気で考えて出します。
そしてそれは実際、
筋は通っていることも多いです。
しかし、周囲は、
「すごい」「ありがとう」にはならず、
不安を感じる。
これは一体、なぜでしょう?
周囲(特に上司)の不安は、
言語化するとこのような内容だと思います。
「この人、頭はいい。仕事もできそう。
でも……
どこまで周りの意図を理解して動いてるのか分からない
どこまで責任を引き受ける気なのか分からない
事故ったとき、誰が後始末する前提なのか見えない
だから、前に出られると怖い。」
連携が必要な場面で、
ちゃんとチームとして動けるのか?
それが見えないまま、
“正論だけ”が前に出てくる。
だから、
「間違っている」とは言えないけど、
「前に出られると怖い」。
つまり評価軸は、
「能力評価」じゃなく「リスク評価」。
能力の問題じゃなくて、
「一緒に賭けられるかどうか」の問題。
ここが、確認できていない。
これが「惜しい人」になる原因です。
ここをさらに、構造を分解すると、
たいてい、
以下の2つの評価軸で、
“摩擦” と “疲労” が起こっていることがわかります。
✅本人が向いてる方向 vs 組織の方向
✅本人の現在地 vs 本人が認識している位置
ここからは、
「惜しい人」が発生する構造を、
組織と、本人の意識で、順番に解説していきます。
「方向性」のバラつきが起こす事故
✅本人が向いてる方向 vs 組織の方向
個人にアダルトチルドレンがあるように、
組織にも"アダルトチルドレン状態"があります。
これは、「組織」の中の、
人間同士の意見・方向性の対立で発生します。
シンプルに、
対立した意見があると、
物事が進まなくなります。
この話の注意としては、
対立した意見がある
ことが問題ではないということ。
問題は、
どこを向いているのか?
という話です。
ものすごくよくあるのがこの構図。
個人:この意見によって
→自分が評価される。
組織:この意見によって
→目標が達成される。
例えるなら、
バイクで並走して運転しているのに、
「みんなは自分のことどう思ってるかな?」と
横(周囲の人からの評価)をガン見していて、
本人、前(現場の目的)を見ていない。
すると、周囲は、
「この人、事故を起こしそう」と感じます。
そしてその状態は、
実際に高頻度で、事故を起こす原因になります。
本来は、
理念に沿って、
同じ方向を見て動くのが安全な運営です。
でも、
理念が共有されていないと、
「自分がどう評価されるか」
「数字が増えるか(本来と違う)」
など、
向くべき方向が散らかって衝突を起こしてしまいます。
向いている方向が同じ、
衝突の少ない人材運営ができているのが、
"アダルトチルドレン状態"になっていない、
安心できる組織。
=「惜しい人」が発生しない構造です。
方向性はまだ、なんとか、整えやすいです。
難しい問題なのは次。
目線が高い人の「現在地」のズレ
✅本人の現在地 vs 本人が認識している位置
・合理的な提案
・画期的な改善案
・センスの良い具体案
このような発案をするには、
意識の目線を高くして、全体を俯瞰して、
世界を観察する必要があります。
ですが、ここに落とし穴。
俯瞰ぐせの強い人は、
「自分を観察する」のを忘れがち。
自分の「現在地」が、
すっぽ抜けていることが多いんです。
だから上司からすると、
「うんうん。わかった。
そういう地図が描けてるのはわかった。
でも、現在地ここね。
案を簡単に言うけど、
だれが、どういうプロセスで、
どのコストを割いて、
責任は誰が預かってやるのかね?
あと、まず、持ち場の仕事ちゃんとやって、
信頼されるようになってから言おうね?」
こういう、現実的な感想になります。
ですが、本人は、
納得しません。
「あ、自分が言ってることを、理解してない。
めんどくさいからって、
ずるいこと言って躱してる。」
となります。
理解して検討して欲しいし、
認められたいんです。
ここはピュアなんです。
でも、これでは、
「現在地」が共有されなくて、
話が噛み合いません。
こういう時、どうすればいいのでしょうか?
私は、次の事例の、
広告大手、「博報堂」が行った対応が、
綺麗だと思いました。
是非、
「方向性」と「現在地」の観点から、
読みながら一緒に考えてみてください。
三浦崇宏氏の「干され」エピソード
次の事例は、
The Breakthrough Company GO 代表
三浦崇宏氏が、
20代に、博報堂で経験したエピソードです。
以下の動画では、
三浦崇宏氏の “黒歴史” を公開しており、
「認知の歪み」という言葉を連発しながら、
過去の体験を話してくださっています。
(以下、三浦さんと記載させていただきます)
「2回干されてて、俺。」
三浦さんは、インタビューの中でそう振り返っています。
博報堂に入社して早々、自信満々すぎる態度で1度干され、
その後、もう一度、はっきりとした形で干されたそうです。
2度目に干された直接のきっかけは、
インタビュー調査の準備をめぐる出来事でした。
準備時間に大幅に遅刻し、上司に問われて、
「いややってますよ!」と嘘をつく。
そこから詰められた末、
三浦さんは上司にこう言ってしまいます。
「あの、もうわかるんですよ。そうやって僕を強く指導したいのも、自分のプライド叩き潰してゼロからつくるとかいろいろお考えになってると思うんですけど、僕は褒められて伸びるタイプなんで、このコミュニケーションだと成長しないかもしれません。」
結果、半年間、
仕事は一切誘われない。
挨拶も返ってこない。
給料だけは出ている。
「干された」状態になったそうです。
三浦さんは尖っていた自分を
「認知の歪み」「ヤバいやつ」
と振り返っています。
これは、勝手に分析すると、
社会的「現在地」と「自己イメージ」のズレ
が原因だったのではないかと思います。
三浦さんは、
学生時代からイベントで稼いだり、
インターンで評価されたり、
“うまくいった経験”が積み重なっていました。
しかし、三浦さん自身、こう言語化しています。
「認知の歪みと、行動力と、ちょっとした運が組み合わさると、結果ってでちゃうんだよ。アブねぇよ。」
自分を上位補正する「認知の歪み」があるまま、
自己を疑うこともなく突き進み、
運良く成功体験を積み重ねると、結果が出てしまう。
自己イメージは上がります。
だが、社会的「現在地」は動いていない。
だから、ズレが修正されにくい。
「今の自分がどこにいるか」を測り直すのが、
どんどん難しくなります。
そのズレは、組織側から見ると、
こう見えていました。
「実績もない学生なのに、ものすごい自信満々に堂々と、『これが正しいこれが一番だ』みたいな感じにプレゼンしてて、企画の内容云々じゃなくて、その姿勢が無理」
しかし、
博報堂の対応がすごいのはここからです。
三浦さんが干されていた期間、
上司は、
「コイツはどっかで、
自分で反省して戻ってくると思うから、好きにやらせとこう」
と、三浦さんを、泳がせたそうです。
三浦さんは、半年干されていた間に、
外で一人でいろんな努力をしていました。
そして、その努力を、上司は把握してました。
上司は、距離を取って、
本人が「現在地」に戻ってくるかどうかを見ながら、
「戻ってくる確信」を持って、
待っていたのだと思います。
事実、三浦さんは、
スラムダンクの三井君のように、
「仕事をさせてください」と土下座して、
戻ってきました。
「わかったなら戻っておいで」
この後も紆余曲折ありながら、
博報堂と三浦さんの、優秀さが嚙み合い、
大きな結果を出していくことになります。
博報堂と三浦崇宏氏が「空白」の期間に行っていた“確認”
この「干されていた」期間は、
お互いに
・同じ方向を見て仕事ができるか
・組織はその熱量を、器に収められるか
・三浦さんは、熱量と現在地をこの器に置けるか
を確かめる時間でもあったと思います。
正直、
方向性がぶつかって破綻するケースもあれば、
熱量を上司が受け止められないケースもあれば、
本人が会社員という立場を諦めるケースもあります。
でも、博報堂と三浦さんは考えた末、
一緒にやっていく結論に至りました。
バケモン級の才能が、
扱いきれずにモンスター化してしまうことは、
組織では珍しくありません。
それを、
本人が心の根に持っていた
「ピュアに仕事が好きなところ」と、
博報堂が持っていた人間力で、
ほどいていった、良い事例と私は考えています。
「褒められて伸びるタイプ」の主張を突き放した、博報堂の判断
三浦さんは当時、
「褒められて伸びるタイプ」
だと主張しました。
でも今は、干されたことに納得し、
「感謝している」と語っています。
おそらく、あの時点で下手に褒めていたら、
関係性のズレは、さらに拡大していたはずです。
いいところとズレているところを、
淡々とフィードバックするのはアリです。
でも、関係が噛み合っていない状態で
「承認」だけを足すのは、むしろ危険。
コミュニケーションが成立しない場合、
「現在地」の現実が可視化されるような環境をつくり、
距離を取りながら、観察する。
博報堂は、これをやっていました。
そしてそれができた背景には、インタビューでも触れられていた通り、
精神性の高さがあったのだと思います。
「現在地」と「ゴール(理念)」の共有
ここまで、
「現在地」と「自己イメージ」のズレについて、
三浦さんの事例を交えて解説してきました。
一旦、現在地の定義について、
振り返っておこうと思います。
「現在地」とは、
・今いる場所の制約
・自分が引き受けられる責任の範囲
・実際に今環境下で出せる実力
そして、
「現実的にどんなプロセスで理想に近づけるか」という、
スタート地点の装備 と 精神的な成長段階のことです。
組織(=仲間)は、
才能 や 熱量 も見ています。
でも同時に、
本人がどこを向いているか、
そして、
精神的な発達状況
(現実とのズレがないか)
というスタートラインも見ています。
一方でゴールとは、
「何のために仕事をしているのか」という、
組織の理念です。
組織は、理念に沿って仕事をしています。
ただ、若い人ほど、そこを知らない。
だから本人のゴール設定は、
どうしても自由になりがちです。
ここは「組織の条件」として、
教育し、共有し続ける必要があります。
組織に収まらない人材は「独立」も含めた関係設計を
いい意味で、バケモンみたいな人材はいます。
仕事が好き。
熱量が高い。
目線が高い。
行動力の鬼。
こういうタイプは、
独立を視野に入れた成長設計をしておくと、
本人も組織も助かります。
実際、えめ自身も
「こんなところにいないで起業したら?」
と言われて、
ある意味で会社員に諦めがついた経験があります。
本人の自己イメージに合わせて、
独立を視野に入れて設計した上で、
本人が、
「今は、会社員を選ぶ」というなら、
「現場経験を学ばせてもらっている」
というマインドを持ってもらうよう、
促しやすくもなってきます。
最後に
理念とは、
「何をするか」を決めるものではありません。
どの器に入るか。
何を引き受け、何を引き受けないか。
その境界線を決めるものです。
現場で人を見るとき、ここを見てください。
• この人は、自分の熱量を自覚しているか
• この組織の器に入る判断を、自分でしているか
• それとも、「評価されたい」「居場所がほしい」だけで立っていないか
理念に照らして、
自分の立場と役割を修正できる人は、成長します。
できない人は、
どれだけ優秀でも、
組織をアダルトチルドレン状態に引き戻します。
理念を理解していない状態では、
優秀さは、武器にも毒にもなります。
だからこそ、
理念と線引きは曖昧にしない。
それが、
組織を守るということに繋がってくると思います。
才能を活かし合える世界になりますように。
最後までお読みいただきありがとうございました。
筆者:えめ 精神科看護師(人育ての専門家)
おまけ
三浦さんの言語化は本当に素晴らしくて、以下、人を動かす理念について語ってるのも参考になります。著書「言語化力」も内容濃くかなり勉強させていただきました。言葉に悩む方は是非。
※本記事で事例として引用させていただいたので、敬意とお礼を込めてご紹介します。
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